第2章 22話 『結果は…』
音をたてて崩れていく校舎、激しい爆発音が鳴り響く。ガラスが割れる音、そして生徒達は瓦礫の下敷きになったり、爆発に巻き込まれ身体がぐちゃぐちゃになっている…
はずだった…
「どうゆうことだ…」
真っ先に声をあげたのは月影雅義だった。
「何故…なぜ爆弾が起動しないのだ…」
それはこの場にいる全員がそう思っていた。
「あ…そうゆうことか…」
突然、吉野裕介が言葉を発した。
「どうゆうことですか?」
黒崎龍平は彼に聞いた。
「これはね…恐らく彼女の仕業だよ」
すると、放送が流れ始めた。
『龍平君、危なかったですねぇ~』
この独特な喋り方ですぐに誰だか分かってしまった。
『話は後で聞きますねぇ~、この校舎に仕掛けられてた爆弾は私が解除しておきましたからあとは、遠慮なく暴れちゃってくださいねぇ~』
そのまま放送は終わった。
「何故…なぜなぜなぜぇぇぇぇぇぇ…」
月影雅義は髪の毛を乱していた。
「そんなことどうでもいいんだよ…」
黒崎龍平は憎悪を募らせながら発した。
「月影雅義…お前は俺の大切なもんによくも傷つけてくれたな…」
月影雅義は生まれて初めて恐怖を感じた。
身体中から汗が滲み出ていた。
「まてまてまてまてまて…話をしようじゃないか黒崎龍平…お互いに何か勘違いがあるようだからな…」
月影雅義は命乞いを始めた。
「俺には勘違い何てねぇよ…」
「頼む…許してくれ…」
「ふざけるな…そうやって命乞いをしてきた奴等をお前達は何人殺した?
お前らに奪われた。夢や希望、そして未来…
あいつらに代わって俺がお前を裁いてやる…
懺悔は地獄でしてろ…」
黒崎龍平は月影雅義の四肢を斬った。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
「お前はあっさり殺さない…じわじわと苦しみを感じながら死ね…」
「私は…まだ死ぬわけにはいかない…」
『そうだよ…君はまだ死んじゃダメだよ…』
声のする方に目を向けると、そこには大鎌を持った、黒い法衣を着ている人物がいた。
もちろん、鬼のお面を着けている。
だが、黒崎龍平は別のところに驚いていた。
その人物が舞台にいるからだ。
「どうやって…その舞台に…」
『さぁ…さてと黒崎龍平君、月影雅義の四肢をくっつけてくれないか?、じゃないと今度は彼女達の四肢を斬らないといけなくなるからね…』
仕方なく、黒崎龍平は月影雅義の四肢をくっつけた。
「ありがとうございます…あなた様のお陰で…」
『別に…感謝するなら黒鬼様にしなよ…』
その人物はゆっくりと歩き始めた。
『あれ…さっきからやけに大人しいけど…
吉野裕介君…僕を殺さないのかい?』
「いや…無理でしょ…さっきと違って今はやる気あるみたいだし…それにお前はさっきのやつより恐らく上だろ?」
『正解だよ…、僕は黒鬼十師団の中でも二番目に強いからね』
二番…その言葉にみな、驚いていた。
河村櫻子は分かってはいなくてもその人物の気配は察していた。
『さてと…月影雅義君そろそろくっついたかい?』
すると月影雅義は腕を伸ばしながら答えた。
「ご覧の通り既にくっついています」
『そうかい…それじゃあ…殺ろうかな…』
「えぇ…殺りましょう…黒崎龍平を」
『違うよ…殺るのは黒崎龍平じゃなくて君だよ…月影雅義…』
「な…今なんとおっしゃ…」
だが、月影雅義は最後の言葉を発することは出来なかった。
振り回された大鎌の切れ味を彼の身体は味わった。
洗練された無駄のない動き、更になんとそれを片手で行っていた。
そのまま彼の身体は上半身と下半身とに別れてしまった。
「何故…このようなことを…」
必死に彼は声を振り絞っていた。
『黒鬼様の御命令だよ…』
「何故…わたくしは…あなた方のために日夜この身を捧げて参りましたのにこのような仕打ちをするのはなぜ…」
『君は…罪のない一般人を殺しすぎた…とても残念だよ…黒鬼様もとてもガッカリしていたよ』
「あなた達のために…」
その言葉を最後に月影雅義は息絶えた。
『さてと…そろそろ帰ろうかな』
大鎌を持った人物は出口に向かって歩いていた。
「まて!」
黒崎龍平は声をあげた。
『なんだい?』
「俺を殺さないのか?」
『黒鬼様の御命令に君を殺すことは含まれてないから今は殺さない…でも近々殺すことになるかもね…それまで…』
するとその人物は一瞬で黒崎龍平の耳元に近づき、
『それまで…誰にも殺されないでよね…』
その言葉を残し、この場を後にした。
その光景を見ていた二つの人影がある。
それぞれ黒の法衣を着ているが顔にお面を着けてはいなかった。
「全く…月影雅義には失望したよ…」
その声はとても低く、とても冷たかった。
長身で筋肉質の身体をしているその男は続けてこう言った。
「せっかく…黒崎龍平の場所を教えてやったのに…君もそう思うだろ?」
「はい…その通りです…」
もう片方の人物は、小柄な女だった。
「まぁいい…結局奴を殺したのは十師団だからな」
「そうですね、…様そろそろやつらが来ますよ」
すると、その集団は現れた。
『覗き見なんて趣味が悪いと思うけど』
大鎌を持った人物はそう言った。
「やれやれ…もうきたか」
『君たちだろ…お巡りさん達を殺したのは、それと爆弾も』
「その通りだよ…さてとそろそろ逃げるぞ」
次の瞬間、二人の身体は身動きがとれなくなった。
『すいませんが、あなた方はここで死んでください』
すると物陰に隠れていた人物は自身の影を伸ばし彼らの動きを封じていた。
「全く…面倒な人達だ。
<凍りつけ>」
すると動きを封じていた影が凍り始めた。
そのせいで動きを封じきれず彼らは動き始めた。
「さらばだ…」
そして彼らは姿を消した。
『はぁ…黒鬼様に怒られるよ。新人の君もね』
大鎌を持った人物は新人と呼んだ男の方を向いた。
「分かりました」
『これからよろしくね月影雅人、いや…十番』
また一人、新しい驚異が生まれた瞬間だった。




