第2章 18話 『狂気と痛み』
『黒崎龍平君、この放送が聞こえているなら。体育館に来てほしい』
突然始まった、月影雅義の放送。
校内に響き渡るその声からは憎しみが混じっていた。
『君が来ないと、大切な人が死ぬよ。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、憎い憎い黒鬼様の肉体に傷をつけた貴様が憎いぃぃぃぃぃぃ。絶対に殺してやる!』
放送はそこで終わった。
放送が終わるとクラスメイトが騒ぎだした。
「なぁ龍平、お前…行くのか?」
「今から行ってくる。絶対に櫻子を助ける…」
「でも…、またあいつらが来たら俺たち…」
彼らが騒いでいる理由はこれだったのだ。
彼らは全員、死の恐怖に苛まれていた。
すると、教室の扉にある男が立っていた。
「大丈夫だよ、彼らは僕が守るから君は早く行きなよ」
そこには、血で染まった刀を握っている色白の少年。雪村進一が立っていた。
「ありがとよ雪村、行ってくるよ」
そして彼は体育館に向かって走り出した。
大切な人を救うために…
体育館の扉の前に黒崎龍平は立っていた。
そして彼は扉を開いた。
「やぁ~初めまして。黒崎龍平…」
そこには月影雅義が立っていた。
長身で細長く、顔立ちも整っていた。
髪の長さは男の平均的な長さを上回り、腰にまで届く長さだった。
「初めましてだな…月影雅義…」
「そうだねぇ~憎い憎い憎い貴様がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。さっさと殺してやる!」
お互いの駆け引きも何もなく彼はこちらに走り出してきた。
「そっちの方が好都合だ…さっさと殺してやる…
<我が鬼よ、我が肉体に宿れ>」
そして彼の身に鬼が宿った。
月影雅義は刀を大きく振りかざした。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
それを刀で防ぐと、
「死ぬのはてめぇだよ」
すぐさま、彼の鳩尾に拳をぶちこんだ。
その衝撃で彼の体は数メートルほど宙を舞った。
黒崎龍平は少し困惑していた。
奴は弱くないか…そんな考えが頭を過っていた。
まず、刀の使い方が悪い。そのあと身のこなしもダメダメなのだ。
そんなことを考えていると、それは突然襲いかかってきた。
「…な!」
突然、自分の腹部に強い衝撃をくらい黒崎の体は宙を舞った。
何故?、彼はかなり驚いていた。
「いやぁ~危ない危ない。危うく貴様に殺されるところだったよ黒崎龍平」
そこには月影雅義が立っていた。
「な…何故?」
「私の能力だからだよ。今から貴様を料理してやるよ。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ殺す殺す殺す!」
そのあとはただひたすら殴られていた。
右、左、右、左
それらを何回も繰り返されていた。
すると、彼の口から血が出てきた。
鬼の力を使っているのに、傷が治らない。
そしてプロローグに向かっていく。
「どうゆう能力だ…」
「私の能力…そんなこと貴様に言うわけないだろう!」
そして月影雅義は本当の実力を見せてきた。
先ほどまでの動きをはるかに凌駕していた。
黒崎龍平が立ち上がったところを狙い、
手に持っていた刀を使い、多数の切り傷をつけてきた。
「お前は…簡単に殺さない。苦しめてやる…」
肩、耳、足、手、他にも色々なところを斬られた。
鬼の力で何とか再生はしているが…
「血の量がヤバイ…」
彼の体からは先ほどとは比べ物にならない血の量が流れていた。
「反撃してやる…」
そして彼は狂人に向かって走り出した。
刀を鞘から抜き、その勢いを使い月影雅義を斬り裂こうとしたが、それは防がれてしまった。
すかさず、黒崎龍平は顔に拳を入れようとしたがそれすらも防がれてしまった。
「弱いな…」
そして黒崎龍平は腹部に刀を突き刺されてしまった。みるみるうちに体内に存在する血の量が減少していき、彼は遂に倒れてしまった。
もうダメだ…
諦めにも似た感情とは、裏腹に別の感情が込み上げてきた。
殺してやる…
強い殺意が込み上げてきた。
何だこれ…
自分とは違う別の何かからそれは流れ込んでくる
黒くて不気味な人影が自分に向かって笑いかけてきた。




