第2章 13話 『初めての共闘』
十人ほどの集団を殺したあと、彼らは少し歩いていた。
「ねぇ…人を殺しちゃったね」
確認をとるみたいに水本早苗は言い放った。
自分も人を殺すのは初めてのことだった。
だが、不思議と何も感じない…
悪いこととは分かっていても罪悪感は全く出てこないのだ。
「そうだな…でも、別に悪いことだとは思わないな。あいつらは大勢の人を殺したんだ殺されたって文句は言えない…」
まるで自分に言い聞かせているみたいだったが、人殺しを正当化する理由としては最適だった。
彼らは大勢の人を殺したのだ。
夢や希望といった今の自分には無いものを持っていた彼らの全てを奪ったのだ。
赦されることではない…
そんなことを思いながら歩いていると、それは突然自分達に襲いかかってきた。
「避けろ!」
次の瞬間、壁に何かが激突したような音がした。
壁には風穴が空けられ、今にも倒壊しそうだった。壁を貫いているものはとても長く、薄い剣みたいだった。その剣の出所の方に向くと1人の男が立っていた。
「いやぁ~恐ろしい恐ろしい。最近の若い子達は恐ろしいね私の剣を避けるなんてすごいなぁ~」
その男は燕尾服を着ていた少し大柄な老人だった。髪の色は銀色にしており後ろの方に髪を倒していた。その風貌からはとても老人には見えないほどに。
「何者だあんたは?」
そう黒崎龍平が聞くと、
「私は始末屋です…名前なんて物はございませんそうですねぇ~私のことは志村とお呼びください」
志村と名乗った男は手に何かを持っていた。
それは…
「何でお前がそんなもん持ってんだよ!」
黒崎龍平が指さしたのは、先程闘った鎖男の生首だった。恐らく水本と一緒に闘っていたときに事は起きていたのだろう。
「私は始末屋ですから、使えないゴミは処分しないといけませんからね」
「貴方は…腐ってる…」
怒りの表情を見せ、水本早苗は志村を睨み付けていた。
「それは心外ですね、貴女方つい先程私の仲間をたくさん殺したのではありませんか?それなのに腐ってるとは中々ユニークなことを言いますね」
彼は笑いながらそう語った。
「そうだな…、だがお前と違って俺たちは仲間を殺さない…お前だろ?廊下の死体の山を築いた張本人は」
すると志村は驚いた顔をした。
「正解ですよ。私があの方達を殺しました。あの方達は貴方を殺す前に大勢の罪のない人を殺しましたから私が制裁を施したのです」
この男は恐らく今まで闘ってきたなかで一番強い男だ。
黒崎龍平はそう直感した。
「さて、長々話すのはあまり好きではないのでとりあえず貴方を殺します。
<我が剣よ、我が意志の思うがままに動き出せ>」
すると志村の剣は突然、蛇のようにしなりだした。そしてとてつもない速さで自分の喉元めがけてやって来た。恐らく先程の鎖より速い。生身のままでは避けられないので、能力を使うことにした。
「<我が鬼よ、我が肉体に宿れ>」
鬼の目、鬼の身体能力を使い剣を避けた。
だが、その剣はまるで狙っていたかのように水本早苗へと突っ込んで行った。
「<我が鬼よ、我が神経に大いなる力を与えよ>」
鬼の力で強化された神経を使い辛うじて避けることに成功した。
避けられた剣は床に激突する前に急旋回をし、当たるのを回避した。
「おやおや、これを避けるとはやりますね。久しく血が騒ぎますよ」
その時、二人はこの男の戦闘能力を知った。
恐らく1人では勝てない。
1人では…
「なぁ水本、お前は嫌がるかもだけど一ついいか?」
「もしかして私が言おうとしてたことかな?」
「俺と手を組んであいつを殺そう、それしか方法ねぇからよ」
「分かったは、その提案乗ってあげる」
そして彼らの共闘が始まろうとしていた。




