第2章 10話 『初陣』
学校中から悲鳴が聞こえる。
「やめてやめてやめて、殺さないで…」
命乞いをしている女子高生を彼らは
「お前はブスだから助けねぇよ!」
そしてまた1人死んだ。
体育祭の準備をしていた上級生達の所に月影雅義の集団が現れ、大勢の人が死んでいく。
彼らの目的など分かりきっている。
「俺を探している…」
ここは素直に自分から彼らの元へ行けば被害は最小限になるのだが
「俺はまだ死ねない…」
復讐のため、彼女のため、色々な理由が頭を埋めていた。
そんなことを考えているうちに月影達は校舎内へと侵入してきた。
「貴様ら、警察はもう呼んである。大人しくお縄につけ」
そう言いながら、大人の男性数名が駆け寄っていた。
「本当に警察が来ると思っているんですか?、残念な大人達だ、私の黒鬼様への想いを届けるための礎となれ」
そして手に持っていたナイフを彼らに向け走りだした。
「校長、奴が来ますよ」
1人の若い男がそう言った。
「大丈夫ですよ、私はこう見えて柔道で黒帯を持っているので彼の動きは既に見切りました」
校長が構え、そして月影雅義の腕に触れた瞬間、
全てが終わっていた。
校長の腕がスライスされており、もはや腕としての機能を果たせることはない、さらに大量の出血清潔感漂う廊下がみるみるうちに血で汚されていく。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。頼む命だけは助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
その顔からは先ほどまでの頼もしい面影はなく、ただ生きることに必死になっている情けない顔となっていた。
「醜い老人だ…醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
そういい放ちながら顔を細かくしていった…
そこにはもう人の形を留めきれていない肉の残骸が残った。
その場に居合わせた大人数名を殺すと彼の携帯に電話がかかってきた。
「私だ、そっちは終わったのか?」
『はい…月影様、この近場にある警察署は全て潰しておきました。これから向かいます』
その言葉を最後に電話を切った。
黒崎龍平の教室は荒れていた。
上級生の死に様を目の当たりにし、平常心を失うものや諦めるものが出ていた。
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…」
「助けてママぁぁぁぁぁぁぁ!」
「もうだめだ…、俺達は死ぬんだ」
そんな最中、河村櫻子だけは折れていなかった。
「みんな闘おう!、こんなところで蹲っててもどうせ死ぬのは一緒。だったら闘おうよ!」
だが、その思いは皆に伝わらなかった。
「ふざけんな!、俺たちに死ねってか?俺は闘わねぇよ」
その言葉を合図にクラスの崩壊が始まりだした。
自分の意見がいかに正当なものかや、何とかして逃げ道を模索するもの。色々な人間が生まれた。
そんな状況に嫌気が差したのか、俺は刀を入れた袋を携え教室から出ようとしていた。
「どこにいくの?龍平!」
やはりきづかれてしまった。
「あいつらから皆を守る…だから俺達は闘いに行く!」
この時、櫻子の顔を見ることは出来なかった。
もし見てしまったらきっと自分は闘いに行けないからだ。
今から行こうとしたとき教室のドアのバリケードが壊された。
すると、黒い法衣を来た小柄な男が立っていた。
「ひっひっひっひっひっ、一杯可愛い子がいる。ひっひっひっひっひっ、おいらのおかずにしてやるよ」
そして手に持っていた鎖を振り回しだした。
「<我が鬼よ、彼の物たちを束縛しろ>」
そういい放つと手に持っていた鎖がクラスの女子数名をめがけてとびだした。
その鎖の動きはひどく速く、人の眼では追い付けない速さで動き回った。
そして何人かの女子を縛り上げた。
「イヤァァァァァァァ、離して!」
そんな悲鳴にお構い無く、男は捕まえた女子の頬に手を回した。
「やっぱり気持ちいいいい!、最高!最高!最高!最高!最高!最高!、君たち最高だよ!今晩の僕のおかずは君たちだ。そして君たちのはじめても僕が頂くよ!」
その男は顔を手で押さえながら笑い堪えていた。
なぜなら、捕まった女子達の何人かの顔が青ざめていた。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。やめてください離して!」
「僕の鎖を断ちきれるのなら逃げていいよ。まぁ無理だろうね!」
そして高笑いを続ける。
「ひっひっひっひっひっ…」
すると、
「おい!、オッサン女子達を離せよ。さもねぇとボコにボコにすんぞ!」
クラスの男子の1人が声を荒げた。
「そうだ!そうだ!、女子達を離せ!」
何人かが続いてそう言い出した。
「黙れよ糞ガキ、僕は男が大嫌いなんだよ!」
そして鎖が男子生徒の首もとに巻き付かれた。
「ひっひっひっひっひっ、さてこれからこの糞ガキの処刑を始めるよ。助けたきゃなぁ!女ども全員服を脱いで全裸でこの僕に膝まずけ」
その言葉にクラスの女子達は。
「ふざけんなよオッサン!、何で私たちがそいつのために脱がなきゃいけねぇんだよ!」
「気の強い女の子は嫌いなんだよ!」
そして鎖がその女子の心臓をめがけて放たれた。
クラス中の誰もがそして本人でさえも思った。
死ぬ…
奇跡でも起きない限り彼女は数秒後に死ぬ。
そしてクラスの誰もが目をそらした時、その奇跡は起こった。
心臓にめがけて放たれた鎖を手に持っていた刀で受け止め、そして…
「<我が鬼よ、我が肉体に宿れ>」
次の瞬間…
黒崎龍平の体の中に黒い何かが流れ込んでいった。その黒い物には不快感がなくただただ流れ込み、自分の中の大切な何かを汚しているようだった。
だが、そんなことはどうでもいい。
放たれた鎖を受け止め、刀で切断した。
それに驚いた男はつかさず6本の鎖を放った。
目にも止まらぬ速さだと言える。
先ほどまでの自分にとって…
「全部壊してやるよ…」
刀を一振り。それだけで鎖は跡形もなく粉々になった。
その光景に全員が驚いていた。
「そんな、ばぁぁぁぁぁかぁぁぁぁなぁぁぁぁぁ!あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない。鬼鉱石で出来ているのに…ありえない…」
そのまま彼は男の首筋に刀を向けた。
「能力を解除しろ…さもねぇとてめぇを殺す」
その凄まじい殺気はクラス全体に広がり、ガラスにヒビを入れた。
「わ…分かった…頼む…助けてくれ…」
それと同時に男は能力を解除した。
女子達を縛っていた鎖は消え、彼女達は自由になった。
「これでいいだろ?…」
「そうだな…」
だが、彼の目は許しておらず不適な笑みを浮かべていた。




