第1章 1話 『鬼』
彼がその言葉を知ったのは、彼が中学生になってからの理科の授業でのことだった。
始業式の挨拶も終わり、それぞれのクラスに戻った彼らを待っていたのはめんどくさい理科の授業だった。理科担当の山村明雄が教室のドアを開いた。
「よーし!、授業を始めるぞ」
そして彼は授業を始めた。といっても今回の授業はテストに出さないし、知っていたところで大したことはないもののことだった。
「お前ら、教科書の3ページを開け」
言われた通り、教科書を開くとそこには『鬼』と呼ばれるものについて載っていた。
「見ての通りだが、今日は『鬼』について勉強するぞ!」
そう言って彼は授業を始めた。
「いいか、『鬼』の存在が証明されたのはお前らが2歳の頃、つまり10年前のことなんだ。
それまでは超能力って言われていたことも『鬼』によるものだとされたんだ。
そもそも、『鬼』とは一体なんなのか?、よし!
これをだなぁ~、坂本葵答えてくれ」
名指しで指名された坂本葵と呼ばれる女の子はすぐにイスから腰を上げ、先生の問いに答えた。
「『鬼』とは、人の心の中にいるとされていて、いまだに謎が多く、生き物なのかも分からない、
それが『鬼』です。しかし、『鬼』は私たちにとてつもない力をもたらしてくれるとされています。例えば物体を操ったり、何もないところから火を発生させたり、普通の人の何倍もの筋力をもたらしたり、といったいわゆる超能力のようなことが『鬼』のおかげであるとされています」
そして彼女の説明を受け彼は。
「素晴らしいですね、皆さん坂本さんに拍手」
パチパチパチパチ、その音が鳴り止むと、彼はそれについての補足説明を行った。
「とはいえ、『鬼』の力は誰にでも使える物ではないらしい。私もよくは知らないが、『鬼』の力を使うにはある一定の条件を満たしていないと駄目らしい」
そのあとも、彼は『鬼』についての授業をしていた。俺は眠たかったから寝ていた。
「黒崎龍平、起きろ!」と何回か言われたけど全部無視した。
だが、俺はこの日のことを3年後に後悔する。
全く関わることはないと思っていた『鬼』と俺は深く関わることになる。
そして3年後…
俺たちは卒業式を迎えた。