第2章 8話 『他の赤鬼』
二日後、学校が終わると黒崎龍平は急いで基地に向かった。
階段を降り、扉を開いた。
「こんにちはぁ~龍平君、元気にしてましたかぁ~」
と清水博士から挨拶をもらった。
「こんにちは清水博士、俺は元気でしたよ」
「それは良かったですねぇ~、それでは君の武器を取りに行きますよぉ~」
そして研究室に向かった。
研究室に入ると、机の上に日本刀が置かれていた。
「これが龍平君の武器ですよぉ~」
そして彼はその刀を手に持った。
重い…まず彼はそう感じた。こういったものが重いのは何となくは知っていたがまさか持つことになることは思っていなかった。
「少し重いですけど、手に馴染むこの感じはいいと思います」
「それは良かったですねぇ~、でもまだその刀は完成品ではありません」
「どうゆうことですか?」
「刀の刃の部分を握って自分の血を染み込ませてください、すると鬼の力と鬼鉱石がシンクロするんですよぉ~、そしたら鬼の力を100%使えますよ」
「分かりました」
そして刃の部分を握った。
当然だが、自分の手から大量の血が出てきた。
そして刀に染み込んでいく、染み込んでいくと同時に自分の中の憎悪が増幅していく。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
すると、銀色だった刀の色が赤色に変色していった。
「おめでとうございまぁ~す、これで100%の力を使えますよぉ~、そういえば鬼の力は扱えるようになりましたかぁ~?」
「まだ使えません」
この二日間、何度も何度も練習はしたが上手くはいかなかった。
「それは多分、具体的なイメージがないからだよ」
その声が聞こえた方を振り向くと、赤城隼人が立っていた。
「おはよう龍平君」
「おはようございます赤城さん、さっきのはどういうことですか?」
「それはね、君の鬼が何をしたらいいのか分かってないからだよ」
余計にこんがらがってきた。
イメージとは何かを聞いてみた。
「これは口で言うより実際に見せた方がいいよね?、それじゃ行くよ」
「<我が鬼よ、我が刀に力を与えよ>」
すると赤城隼人の刀に鬼の波動が集まっていくのが見えた。みるみるうちに力が高まっていった。
だが、そこで
「解除せよ」と赤城隼人が呟くと鬼の力は消えていった。
「何となくは分かってくれた?、つまりああゆうことなんだよ、具体的なイメージを言葉にしてみないと鬼の力は使いにくいんだよ」
いつもの赤城隼人に戻っていた。先程までとはまるで別人だった。
「分かりました赤城さん、因みに赤城さんの能力はどんな物ですか?」
「僕の能力は刀の斬れ味を強化するだけの能力だよ、まぁ僕に斬れないものはないかな」
そのあと、色々な鬼の能力を聞きその場を後にした。
刀を携え、廊下を歩いていた。
これからは刀を袋に入れて持ち歩かないと、警察に捕まりそうだな…
そんなことを考えていると、突然目の前に人が現れた。
身長は160㎝程の女の子だった。髪の長さは腰に届くか届かないかぐらいの長い髪の毛だった。
さらにその髪は青みがかっており、日本人とは思えない程だった。肌の色も白く美肌だった。
目の色は黒く、顔立ちを見るからには恐らく日本人だと思った。
「貴方が黒崎龍平?」
綺麗な声だったが、その声には少し憎悪が入っているようにも思えた。
「俺が黒崎龍平だけど、君は何者?」
「私の名前は水本早苗、鬼の色は赤鬼。君とは同期になるのかな?、まぁ残念だけど今から私が君を殺すけどね…」
衝撃的なことを言われてしまった。
黒崎龍平の十五年間の人生において、会って間もない美少女にいきなり殺しますよ宣言をされたことなどなかったからだ。
「何で?、え?、何でいきなり?」
かなり混乱していると、
「貴方ってバカなの?、ライバルは一人でも消したいと思うでしょ?」
それだけで彼女の目的が分かってしまった。
「水本も、黒鬼討伐隊志願者なんだよな?」
「そうよ、そうゆう訳で貴方を殺す。やっかいなやつは先に潰しとかないと」
そして彼女は刀を抜き、間を詰めてきた。
その動きには無駄がなかった。
「まぁ、俺の敵ではないけど…」
そして彼も刀を抜き、彼女の刀とのうちあいを始めた。
恐ろしいほど速く、無駄な動きのない彼女との闘いで鬼の力を使わずに闘うのは無謀にも思えるが黒崎龍平は鬼の力を使わずに闘っていた。
「どうして鬼の力を使わないの?」
どうやら気づかれていたらしい。
「使ってるに決まってるだろ」
「嘘をつくなぁぁぁぁぁ!」
彼女の刀の重みが強くなった。
腕が痺れてきた。
「どうして闘わない?、私は私は…」
彼女の瞳から涙が流れ出てきた。きっと彼女にも何かがあったのだろう。
「俺は単純な剣での闘いしか水本とはしたくない」
だが、その言葉は届かず彼女の動きは更に速くなった。
「もういい…、少し本気を出すか…」
彼が呟いた次の瞬間、目にも止まらぬ速さで水本早苗の刀を弾き、首もとに刀を向けた。
「まさかここまで強いとはな…、殺そうとしたんだし報いは受けるよ」
「何にもしないよ」
本当なら殺してやりたいが、彼女の美しさに免じて殺さないことにした。
「水本の過去にも色々あったんだろうけど、俺も譲れないから…」
「分かった…、でもさ、さっきの一撃は凄く速かったけど何で?、そうゆう能力?」
「俺の過去の負の遺産…」
それだけを言い残し帰ろうとしたが、自分達を見ていた奴の視線がまだあったので帰るのはやめにした。
「いい加減、出てきたら。もうとっくに気づいてるよ」
と壁の柱に身を寄せていた奴に向かってそう言った。
「いやぁ~、ごめんごめん盗み見しちゃった」
そう言いながらその男は出てきた。




