第2章 5話 『様々な目的』
入隊試験が終わり、研究室に行くと清水遥が立っていた。その隣には赤城隼人がいた。
この二人は多分はモニターしていたのだろう。
「お疲れ様でぇ~す、さてとさっそく龍平君の能力について話しますね」
さっきまでとは違い真剣な感じだった。
「教えてください」
そして博士は話しだした。
「龍平君、君は鬼の力を使っているときに鬼がどこにいるか分かりながら使っていた?」
意味が分からない質問だった。
「どういうことですか?」
その疑問には赤城隼人が答えてくれた。
「龍平君、僕らは鬼の力を使っているときに普通自分の内側に鬼の存在を感じるんだ。そこから力が供給されているんだ。君はそれを感じた?」
真剣な眼差しだった。
「感じませんでした…」
むしろ自分は鬼と…
「一体化していた?、ですか?龍平君」
それを言われて驚いた。
「そんな感じがしていました」
この事を言うと、二人の表情は深刻な表情をしていた。
「龍平君にはまだ話していませんでしたが、鬼の力は二種類あるんですよ。自分の肉体や物質を強くしてくれる『強化型』。火を操ったり、物体を浮かしたりする超能力的なことが出来るのが、
『特殊型』。この二種類なんですよ」
それを聞いてみると、自分は『強化型』何だと思った。
「じゃあ、俺は『強化型』何ですか?」
「それは違うんですよ龍平君、君に渡した日本刀は試作品で普通なら壁に傷を与えることは出来ないんですよ。それに君は斬撃のようなものも発していたのでどちらか分からないんですよ」
「それと龍平君、君は五感の内どれが強化されていた?」
赤城隼人が突然話しに入ってきた。彼もやはり深刻な表情のままだった。
「多分、全部強化されていたと思います」
この事を言うと、清水博士は黙ってしまった。
長い間沈黙が続き、ついに清水博士が口を開いた。
「龍平君、君の能力はありえないかもしれないけど現実的にみて多分これだと思います」
そして深呼吸をし、そのことを言った。
「龍平君、君の能力は鬼をその身に宿すことができる。『鬼宿し』です」
「博士、『鬼宿し』ってどうゆうことですか?」
思いきって聞いてみる。
「龍平君、君が能力を使うとき、君の周りにあった黒い靄みたいなものが君の体の中に入ってそこから君が強くなったんだ。それと君は気づいていないと思うけど鬼の力を使っているときの君の口調は荒かったよ。それと少し歯がとがっていた」
「それで、何で俺の能力が『鬼宿し』になるんですか?」
「鬼はね、人間の十倍目がいい、耳も十倍いい。
肉体能力も人間の十倍ある。それと再生力がとてつもなくある。とされているんだ、君は骨が折れてからわずか数秒で治っていたけど普通だとありえないんだよ。だからだ」
つまりは人間離れしているらしい。
困ったことに『強化型』なのか『特殊型』なのかも分からないらしい。始めてのことで戸惑っている。
そして、俺の能力は正式に『鬼宿し』となった。
「いやぁ~、でも凄いっすねぇ~、鬼をその身に宿すなんてねぇ~」
いつもの博士に戻った。こっちのほうが落ち着く。
「君の力は黒鬼を殺すときに役に立つね」
と赤城隼人は嬉しそうだった。
俺も嬉しかった。他の人間にはない能力。
この力なら奴を殺せる!
「さぁ~てと、そろそろぉ~研究があるのでぇ~
今日はもう帰っていいっすよぉ~」
と言われたので赤城隼人と龍平はその場を後にした。
研究室を出て、廊下を二人で歩いていた。
「赤城さん、博士って結構差が激しいですよね?」
博士の性格について聞いてみた。
「まぁ確かにね、何せ彼女二重人格だからね」
さらりととんでもないことを言った。
「そうなんですか!」
「そうだよ、彼女も色々あるからね」
とても穏やかだった。
前々から聞いてみたかったことを聞いてみた。
「あのぉ~、赤城さんって何でこの組織?に入ったんですか?」
すると赤城隼人の答えは驚きの内容だった。
「僕がここに入った理由はね、妹を殺すためだよ」
信じられない内容だった。
「彼女は僕の家族を皆殺しにしたんだ。そして今も多くの不幸を生み出している。兄として彼女を殺さないと…」
始めて彼の本性が見えた気がした。
そのまま二人は施設を出て、帰路についた。
二人が研究室から出た後、彼女はパソコンにあるデータに記録をとっていた。
黒崎龍平…能力『鬼宿し』
分類不能
詳細も不明
いまだに謎が多く解明しなければ
ならないことが多い
データをとり終わると、彼女はもうひとつあることを始めた。
そこには『鬼殺し計画』と書かれていた。
「鬼は皆殺しですよぉ~、私から全てを奪ったくそ鬼は殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺してやりますよぉ~」
そして黒崎龍平と赤城隼人のデータを見て、
「黒崎龍平、赤城隼人、君たちも鬼化してるから私の抹殺対象ですねぇ~。悪く思わないでくださいよぉ~。鬼は全員…」
「皆殺しですよぉ~」
誰もいない研究室で一人、笑いながら彼女はその計画を進めていた。




