第2章 4話 『能力』
自分の鬼の力とは?
ずっとその事が疑問だった。今日、この疑問が解決される。
研究室の隣にある部屋に龍平は一人で入った。
その部屋はとても分厚い鉄のようなもので出来ており、龍平の鬼の力で殴っても壊れないほど頑丈らしい。
『ではぁ~、龍平君、鬼の力を発動させてくださぁ~い』
と言われ、龍平は鬼の力を使うことにした。
数分後…
「ダメです…、何度やっても鬼の力が使えません」
何で?何で?何で?、そんなことを思っていると、
『龍平君、目をつぶってみて。もしかしたら思い出すかもしれないよ』
そう言われたので目をつぶった。
目をつぶるとそこには、夢で見ていたあの日の光景が映っていた。
「やめろぉぉぉぉ…!」
自分の力の無さを呪い、彼女を殺した黒鬼を憎んだ。そのときの感情と憎悪が込み上げてきた。
そして世界は真っ白になった。
一面、真っ白な世界だった。 すると、その真っ白な世界を汚すかのように黒い靄のようなものが現れた。
『よぉ…、久しぶりだな。俺様の力がいるのか?』
その靄は問いかけてくる。
「お前の力が何なのか知るために使うんだ。さっさと寄越せ」
口調が荒れていることに自分でも分からなかった。
『あぁ…、いいだろう。俺様の力を人間どもに見せてやるよ』
そのまま、黒い靄は黒崎龍平の中に入っていった。
目を開けると、自分の体の中から力が込み上げてきた。あの日と同じ感覚があった。
「使えるようになった…」
壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい
そんな感情が流れてくる。きっとこれが鬼の感情なんだろうと思った。
『おめでとうこざいまぁ~す、それじゃ~、さっそく鬼の力を使ってみてくださぁ~い』
そう言われた。といっても何をすればいいのか分からないので聞いてみると。
『何でもしていいですよぉ~、壁を殴るもよし、床を粉々にするのでも構いませんよぉ~』
聞いてもよく分からないので、とりあえず壁を殴ることにした。
壁との距離が左右ともに20メートル程ある。
歩くのが面倒だと思い、足に力を入れると、
足を蹴りあげた瞬間…龍平は壁のまえに飛んでいた。そのままだと壁にぶつかるので壁を殴ることにした。
「壊れろ…」
殴った瞬間、とてつもない大きな音がその部屋に響き渡った。壁が壊れたのかと思うとそうではなかった。壁はとても固いのか、少しひびが入っただけだった。殴った左手を見ると、親指と小指の骨が折れていた。だが、一瞬で治った。
鬼の再生力は凄いなと感心していると、
『龍平君、凄いっすねぇ~、ここまでぇ~の力は見たことがないですよぉ~。もしかしたらあれが使えるかもしれませんねぇ~』
すると、部屋の中に何かが運び込まれた。
「何ですか?これ?」
『それはですねぇ~、鬼の武器てずよぉ~、地球上で一番固く、一番強い鉱石『鬼鉱石』で出来た日本刀ですよ』
その日本刀を手に取ると、不思議と憎悪が込み上げてきた。それと鬼の力が増幅していくようにも感じた。
「何…ですか?、この変な感じは?」
『鬼鉱石は鬼の力を増幅する不思議な力があるんですよぉ~、私たちの組織にいる人間は自分の鬼の力に合った武器で闘うんですよぉ~。
それじゃ~、今から入隊試験を始めまぁ~す。
今から龍平君を鬼鉱石で出来た銃弾で狙い撃ちにしまぁ~す。因みに鬼鉱石で出来たもので攻撃されると『鬼化』した人にとってかなり辛いんですよぉ~。治るものも中々治らなくなりますから注意してくださぁ~い。それではスタート』
その言葉がきっかけとなり、壁から銃口が出てきた。銃口とともにタイマーが出てきた時間は10分つまり、
「10分間、弾を避けろってことかよ…」
そして弾が放たれた。
連射される物ではなく一発一発放たれるので避けるのは少し楽だったのだが。天井からも射たれるので逃げ場がなかった。
地面から天井までも20メートルあるので目測しづらかった。
そして始まって40秒程経った…
既に右足の太ももが被弾していた。
「はぁー、はぁー、まずいな…」
このままでは死んでしまうなと直感的に感じてしまった。人生で二番目の死の予感だ。
「このまま死ねるかよ!」
目の前に放たれた銃弾を手に持っていた日本刀で切り裂いた。そして頭上から来るであろう弾に備えて右に移動した。
すると、弾は移動した5秒後にその場所に放たれた。なぜ自分は弾が射たれると分かったのかと疑問に思うと、自分の体のある変化に気づいた。
自分の視力と聴力、そして反射神経が高まっていたことに気づいた。
天井に設置された銃の位置が分かる。
銃の弾の装填されているときの音が聞こえる。
弾が目の前にきても避けることが出来る。
普通の人間ならありえないことだった。
「嘘だろ…」
そう思ってしまった。だが、現実に起こっているのだ。後ろに来た銃弾から身を守るために、身体を捻りその勢いで銃弾を切り裂いた。そこから身体を浮かして回転させ、横から来る銃弾を避けた。
これが自分の鬼の力…
黒崎龍平は驚いていた。そして同時に悔やんだ。
この力があれば救えたはずなのに…
『どうですかぁ~、龍平君、自分の鬼の力を感じているのでは?、そろそろ連射するので頑張って生き残ってくださいねぇ~、壁を壊しても構いませんよぉ~』
そして連射が始まった。
最初は避けられても、だんだん逃げ場が無くなってくる。
「くそ…、こうなったら天井の銃を壊してやるよ…」
だが、簡単なことではなかった。
20メートルもの高さを跳ぶのと、縦に動いてる五ヶ所の銃を一度に壊すのは中々骨が折れる。
その光景を見ている、二人の人間がいる。
清水遥と赤城隼人はこの状況を見ていた。
「さぁ~てと、龍平君はどうするんですかねぇ~?」
「多分、天井の銃を壊すんじゃないかな…」
「無理ですよぉ~、だって動いているし、銃も壁も鬼鉱石で出来ていますからねぇ~」
そして意地の悪い博士はニヤリと笑った。
残り時間は5分を切っていた。
「あと、5分はキツいな…」
今の自分の体の状態ではもう無理だ。
太ももだけではなく色々なところを被弾している。それに、
「傷が治らねぇな…、くそが!」
こうなったら天井を壊すしかない、そう思い天井を見上げた。天井には六ヶ所銃が設置されており常に上下に動いているのだ。
「狙うならあそこだな…」
この六ヶ所の銃の場所が同じ平行に揃うときがある。彼はそこを狙うことにした。
「今だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そのまま助走をつけ、天井に向かいはね上がった。驚くことに天井まで何とか届こうとしていた。だが、天井にある銃が一斉に射ってきた。
それを間一髪で避け、平行に揃うと、
「ここだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
左手に持っていた日本刀で切りつけた。
その日本刀は滑らかに滑り、六つの銃全てにその日本刀の切れ味を味あわせた。
斬られた銃は爆発音をたて、この世から消え去った。そして天井に大きな斬れあとを残した。
その光景を見ていた一人の少女は驚いていた。
「ありえないっすよ!、鬼鉱石を斬るなんて…」
その少女の隣に立っていた少年は笑っていた。
天井を斬ると、そこに日本刀を突き立てぶらさがっていた。そして時間が経ち入隊試験が終わった。
そのまま持っていた日本刀の手を離し、着地した。
終わると研究室に案内された。そこで彼は自分の能力を知ることになる。




