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復讐鬼  作者: 中村淳
第4章 『黒鬼討伐』
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第4章 44話 『動きだす悪女』

「お、重い…」


そう呟きながら、その女は両手で鞄を持っていた。

その前を、何も持たずに優雅に歩いている一人の男がいた。


「こんなことでへこたれるなんて、みーちゃんも情けないな」


「そう言うなら、この荷物…吉野君が持って下さいよ!元々、これは私のじゃなくて吉野君の物だし!」


みーちゃんと呼ばれた女は、吉野裕介にそう抗議した。

彼女は、櫻子とほぼ同じ身長をしており、小柄だった。

そんな彼女が、荷物を持っている理由は簡単だった。


「いや、だってさ、俺たちが襲われた時にさ俺が荷物持ってたら動きにくいしさ、殺られちゃうかもしれないからね」


「そんなの私だって、そうじゃないですか!」


「いやいや、俺が動けてたらみーちゃんだって護れるからさ、やっぱみーちゃんが荷物持っとくべきだよ」


「く、悔しいですけど、そうなりますね」


こうして荷物持ち問題は渋々解決したが、まだ解決していない大きな問題が山ほどあった。

その一つが彼らの現状だった。


「さて吉野君、私たちがエリアEに来てからかれこれ何時間経ったと思いますか?」


「う~ん、分かんないや。答えは?」


「私の時計が現在、午後9時12分を示してるので、かれこれ約一時間ほど迷子ですよ」


そうこれが彼らが解決しなければならない大きな問題の一つだった。

エリアEに入ってから、約一時間ほど彼らはこの中をさ迷っていた。


「でも、しょうがないよね。こんな造りじゃ迷うのも無理ないしね」


エリアEは元々、災害時の緊急避難先として国が造ったもので、約十万人は収容出来る程の広さだった。

だが、広さにこだわり過ぎたせいである問題が出来ていた。


「しかも、地図もないし、食料もない…私たち一種の遭難をしてるんですよ」


その問題がこれだった。

広さにこだわり過ぎたせいで、製作者達でさえ時に迷子になったりしていた。

更に、十万人分の食糧を貯蓄するところを作らなかったのだ。

なぜ、作られていないのかは不明だ。


「せめて周りの光景がな、どこかで変わればいいのにね」



辺り一面コンクリートで塗装されており、更に上の港を支えるために数千本の巨大な柱が聳え立ったいた。

最初は、柱に傷を付けようと思っていたが、柱はかなりの数があるので意味がないと思いやめにしていた。


「つまり、八方塞がりか…みーちゃんの能力を使いながら移動するとかは?」


「嫌ですよ、疲れちゃいますし。それより一つ聞いていいですか?」


「ん?、どうしたの?」


「さっきから吉野君、私のことみーちゃんって呼びますよね?」


「うん、そうだけど」


「その呼び方するの、今日が初ですよね?」


「やっと触れてくれたか、みーちゃんの本名って確か、三原飛鳥だよね?」


「そうですけど…まさか、そこからですか?」


「うん!、だっていちいち名前呼ぶのめんどくさいからさ」


そう言われて、三原飛鳥は少し落胆した。

彼女は、黒髪のセミロングをしており、顔には眼鏡をかけていた。

顔立ちは整っており、小顔で明るい雰囲気があった。


「もういいですけど、それより黒鬼をどうやって見つけるかですよね」


「それも大事だけど、まず敵に見つからないようにしないとね」


そう言いながら彼らは更に歩き始めた。





吉野裕介達がエリアEに入る数分前…

ある一人の女が、エリアEに足を踏み入れていた。

彼女は、以前よりも鬼の色が濃くなっており、波動もかなり強くなっていた。

彼女が、歩き始めて数分が経った後、二人の男と彼女は出会った。


「貴様、上野瀬菜だな?、そこを動くな」


「私たちは、貴様を捕らえに来たのだ」


すると、男達はご丁寧にガスマスクを装着していた。


「はぁ…めんどくさいな…一回しか言わないから…そこを退いて」


彼女は、男達を無視して進もうとしていたが、彼らは彼女の道に立ち塞がった。


「悪いが、御断りだ。貴様を捕らえる若しくは殺せば十鬼に入れるんだよ」


その事を聞くと、彼女は少し笑った。

彼らに憐れみの眼を向けながら笑った。


「なるほどね、つまり十鬼はあなた達みたいなゴミしか使えないほど弱ってるんだ」


その言葉が男達の逆鱗に触れ、彼らはそのまま走り出した。


「その言葉が最後の言葉ってことだな?」


「地獄で後悔しろ!」


男達は無駄のない動きで彼女に迫っていた。

だが、彼女はそれでも余裕の笑みを浮かべていた。


「珍しく、私が敵に優しくしてあげたのにな。

まぁ、いいけど」


男達は、先程彼女が言った時に、道を譲れば死ぬことはなかったが、既に遅い。


「悪いけど、私はあなた達と違ってあなた達の最後の言葉とか聞かないから。聞くとしたら…」


だが、言い切る前に男達は彼女に飛びかかってきた。


「死ね!」


男達が飛びかかってきた瞬間、彼女は指を鳴らした。


「<貫け>」


すると、地面から二本の紫色の刃が彼らをめがけて解き放たれた。

男達は、成す術なくその刃に貫かれた。


「な、なに…」


「おれ…たちが…」


静かにゆっくりと、上野瀬菜は彼らに近付き、先程言えなかった言葉の続きを彼らの耳元で囁いた。


「聞くとしたら…あなた達の断末魔かな」


上野瀬菜は、懐から一本の注射器を出した。


「今、あなた達が何で生きてるか教えてあげる。私がわざと急所を外したおかげだから。まぁ、あなた達にとっては急所を刺してもらった方がよかったかもね」


上野瀬菜は、注射器を彼らに向けると、こう言ったのだ。

その内容は、あまりにも残酷な物だった。


「人がさ、生きながら自分の身体を溶かされる感覚ってどんなものだと思う?」


男達は、冷や汗をかき始めた。

自分達がこれからどうなるのかが分かったからだ。


「や、やめてくれ…」


「い、命だけは…」


そんな命乞いを嘲笑うかのように、彼女は、注射器を男達に突き刺した。


「ねぇ、何で刃に貫かれてるのに、痛みを感じないか教えてあげる…慈悲深い私からのあなた達への最後の優しさだからだよ」


注射器の中に入ってる、液体を全て身体の中に流し込んでから、彼女は歩き始めた。


「だから、あのとき退いてくれればよかったのに」


彼らの境遇を憐れみながら、歩いて行った。

上野瀬菜に薬物を流し込まれ数分が経ったが、男達の身体に変化はない。


「おい…俺たち生きてるぞ」


「あの女、薬を間違えたんだな」


そんな彼らの淡い期待を潰すかのように地獄が襲いかかってきた。


「お、俺の足が…と、溶け始めてる」


「お、俺の腕が…」


ぽたぽたぽたぽたと音をたてながら、彼らの身体が溶け始めていった。

蝋燭のように彼らの身体は溶けていった。


「やめろやめろやめろ、やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…」


そのまま彼らの身体は溶けきってしまった。


「言った筈でしょ、私が聞くのは断末魔だけだって」


不敵な笑みを浮かべ、彼女は歩き出した。

そして数時間後、彼女に対峙する人影があった。


「まさか、最初にあなたが来るとはね。はぁ…本当にめんどくさいな。さっきのチンピラ崩れのゴミの方がましだったな」


上野瀬菜は、ナイフを手に持ち構えた。

目の前の敵を排除するために。

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