第4章 41話 『死神の家族』
龍平や清水博士が闘っている頃…
龍平達の遥か上空にある集団が乗っているヘリが飛んでいた。
その中の一人が口を開いた。
「まさか、この任務に私たちが駆り出されるとはね」
「本当にそうですよ。今日は、久々の休日を満喫しようと思っていましたのに」
「ですが、しょうがないですよ。六人と連絡がとれないんですから」
「確か、上野瀬菜に二人、黒鬼に四人でしたっけ?」
「その通りです。ですが、六人とも生体反応がなく、連絡が取れないので、殺されたのでしょう。
なので、私たちが追加で派遣されるんですよ」
ヘリの中に四人が座っていた。
一人は眠っており、三人だけで会話をしていた。
「と言っても、私たちは何もしなくてもいいも思いますよ」
「何故ですか?」
「私たちより先に、工藤さんと例の新入りがいるので、彼らなら無事に任務を果たしてくれますよ。私たちは、そのサポートです」
「たった二人の人間のために、私たちが駆り出されるとはね」
「違いますよ。二人ではなく三人、場合によっては、四人ですよ」
「そうでしたね。さて、そろそろいきますか」
ヘリにいた四人は、ヘリの扉を開き、飛び降りた。
鬼達の戦場へ、彼らは今、降り立った。
「ガキが、大人の邪魔をするな」
「そっちこそ、僕らの邪魔をしてるでしょ?」
雪村は、自分に放たれている鎖を捌きながら、そう言った。
早苗が、力負けした鎖を合計四本。
その全てを、彼は最小限の動きと力で捌いていた。
「やっぱり、その身体だと辛いよな」
「いいハンデでしょ?」
十師団との闘いで負ってしまった深手を完治しきれていない状態で彼は闘っていた。
傷口が開いたら、致命傷になってしまう。
雪村は、そのこともあり、攻めるに攻められなかった。
「さてと、あんまりチンタラしてたら、龍平君に怒られるし、そろそろ終わらせるよ」
「安心しろ、お前はここで死ぬから。怒られる心配なんかする必要はない」
工藤は、先程よりも速く鎖を放った。
バイクよりも、その鎖は速く、力強かった。
「残念だけど、僕は貴方より強いから。
<大地よ、壁となり、我が身を護れ>」
雪村の足下から、大きな壁が形成され、向かってくる鎖を防ごうとしていた。
だが、ある一人の男の出現により、それは無駄なことになってしまった。
「もう、しっかり仕事してくださいよ工藤さん」
その男の声の後、雪村が築いた壁は、粉々になった。
そのせいで、防げる筈だった、鎖が防ぎれず一本だけ、鎖を受けてしまった。
「そ、その声は…」
「久しぶりだね、進一…」
「蓮兄さん…」
その男の正体は、雪村進一の兄、雪村蓮だった。
雪村蓮は、雪村より背が少し高く、髪も少し長かった。
だが、似ている部分もあった。
目元と醸し出している雰囲気が似ていた。
そして、共通していたのが、白い髪だった。
「久しぶりだね、進一、元気にしてたかい?」
「まぁまぁかな、そんな事より、何で兄さんがそっち側にいるの?」
雪村の質問は、彼を含めてあゆな達が訊きたかったことでもある。
「それは、内緒かな。でも、驚いたよ。進一がちゃんと死神としての仕事を全うしていたことをさ」
「そりゃ、どうも」
「てっきり、もう父さんに返してるのかと思ってたよ」
その一言が、雪村の怒りを買った。
「父さんは関係ない!」
「吠えるなよ。吠えた所でお前は何も護れないよ。さて、進一も早く彼女に会いたいだろ?、会わせてあげるよ」
いつの間にか、蓮は雪村の懐に潜り込んでいた。
そのまま、雪村の心臓に刀を突き刺そうとしたが。
「甘いよ」
真横に避け、兄の刀を地面に叩きつけた。
「今、彼女の所に行っても顔向け出来ないから。
せめて、貴方を殺してから行くよ」
「僕の気紛れで、死神になれたことを忘れたの?、進一が僕に勝ったことはないよね」
「今回は勝つよ」
そして、早苗達の方に振り返ると。
「早苗ちゃん達、申し訳ないけど、暫く二人で工藤さんの相手をしてほしい。僕は、兄に手一杯だから」
彼女達の答えは簡単だった。
「早く終わらせないと怒るからね」
「雪村!、死んだら氷付けだから」
雪村は何時も通りの軽口で返した。
「それは、怖いよ」
そして、雪村は兄に、早苗とあゆなは工藤に。
「絶対負けないから…」
雪村は、そう呟き兄に刀を向けた。
「愚かな弟だな…」
蓮もまた、それに応戦するべく、殺意を放った。
二人の死神の闘いが今、始まった。




