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第八十話 王命の書簡

第八十話です。

よろしくお願いします!

「協力してというより、それってほぼすべて私がやることになるわよね?」

「まあ、そうなるな」


 俺がサヤに説明した方法は、簡単に言ってしまえばターゲットを物陰におびき寄せて、サヤの精神干渉系の魔法で眠らせるというものだ。そして、眠っている間に青いスカーフを拝借して『深淵の魔剣』のギルド内を探るという感じで行こうと考えている。


「でも、なんで私が強力な催眠誘発の魔法を使えるって知っているわけ?」

「前に路地裏でおまえが数人の男相手に使っているのを見た」

「あのときあんたもその中にいたの?」

「その中にはいない。離れたところで眺めていただけだ」

「……あんた、女の子が男に囲まれている状況で助けにも行かずに黙ってみていたの?」

「いや、一応は助けようとしたんだぞ。……全く必要なかったみたいだったけどな」


 むしろ助けに入っていたら俺もやられていた可能性すらある。いや、サヤのことだ、あの状況なら確実に俺にも魔法を使っていたはずだ。


「まあ、べつにいいけど。助けてもらうまでもなかったし」

「だろうな。さて、早く適当な奴を見つけて青いスカーフを手に入れたほうがいいんじゃないか?」

「そうね。……あの二人なんてどうかしら?」


 サヤが視線を向けた先にはへらへらと話しをしながらこちらに向かって歩いてくる二人組の男がいた。武器は二人とも曲刀を背負って割と細身な感じだった。特に強そうに思えないし、目立つような容貌でもないので、いなくなってもあまり騒ぎにはならなそうだな。


「いいんじゃないか」

「で、私がやるのよね?」

「頼む。何かあったらおまえのことは俺が守るから」

「……わかったわ」


 サヤは頷くと、二人の下へと向かっていった。

 そういえば前に似たようなことをしたなと思い出す。あのときは俺とハイマンが認識阻害をするためにメルカがフラドとオイタスを人気の無いところに誘い込んだんだっけ。でもメルカはそういったことには不慣れで、しかも二回とも相手が悪くて危険な目に遭ったんだったか。

 サヤはどうだろうかと見ていると、思いの外自然な感じで近寄っていき、すんなりとテントの陰に誘い込むことに成功していた。そこから大きな音が聞こえてくるようなこともなく、争うような声すら聞こえてこなかった。

 少ししてから様子を見に行くとサヤが二人から青いスカーフを奪い取っているところだった。


「ちょっと、遅いわよ。早くこいつらを物陰に隠すの手伝ってよ」

「あ、ああ。わかった」


 なんというか、サヤは拍子抜けするほど順調に二人を昏倒させて、青いスカーフを手に入れていた。


「しかし、見事な手際の良さだったな」

「まあね」

「もしかして、こういうことに慣れて――ごふっ」

「そんなわけないでしょ!」


 サヤの拳が冗談抜きに俺の腹にめり込んだ。胃が押しつぶされるような感覚に思わず咳き込む。

 く……せっかく順調だったのに余計なこと言った……。


「……これでも、少し怖かったんだからね」

「え……?」

「な、何でも無いわよ!」


 サヤは怒った様子でそっぽを向いてしまった。

 うーむ。さすがに慣れてるはひどい言いぐさだったか。


「悪かったな」

「……べつに、もういいわよ。それより早く探りに行くわよ」


 急かされるようにして、俺は『深淵の魔剣』の駐屯地を歩き始める。『深淵の魔剣』のギルドメンバーに視線を向けられることはあるが、昏倒させた二人がしていたように右腕に巻いておいた青いスカーフを見ると納得したのか、それ以上凝視されるようなことはなかった。

 

「意外となんとかなるものなんだな」

「これだけメンバーが多いのだから、いちいち顔なんて覚えてないのよ」


 たしか『深淵の魔剣』は人数がうちよりも多くて総勢千を超える大所帯らしいので、確かにメンバー同士が全員の顔を覚えているとは思えない。ここには合流したものも併せて二百近い人数がいるので、紛れ込んでも特に見咎められる様な心配はいらないようだった。


「で、アイザックの幕舎に行くのか?」

「当然。そこに行けば何かわかるかも知れないからね」


 魔物の不自然な動きに対して、何かしらの情報があるとすれば間違いなくそこだ。俺とサヤは駐屯地の最奥を目指し、そこでひときわ大きな幕舎を見つけた。おそらくこれが『深淵の魔剣』のリーダー、アイザックの幕舎だろう。


 周りに見られていないことを確認して、そーっと中をのぞき込む。

 やはり、アイザックはまだ作戦会議に行っているようで、人の気配はない。


「今のうちにさっさと調べちゃうわよ」

「わかった」


 知的で洗練された印象通りに、きれいに整頓された幕舎内で探索を始める。するとすぐにサヤがなにやら気になる内容が書かれた書簡を見つけた。


「これ、王命が記された書簡よ」

「王命……ってのは王様からの命令ってことだよな? サイロン公国からのか?」

「いいえ。ランス王国からよ。内容は……」


 封印が割られているのをいいことにサヤは躊躇無く書簡を広げて中身を確認していた。


「……対象物をアクナ城に設置することって書かれているわね」

「なんか怪しいな。で、その対象物って言うのは?」

「わからないわ。ここには対象物についての記載は無いから……」


 サヤは他にも何か情報が無いかアイザックの机やその周辺を手当たり次第に探し始める。

 しかし、いくら探しても王命の書簡以上の手がかりを見つけることは出来なかった。


「どうする? まだ探すか?」

「……いいえ。もうこれ以上探してもここには何もなさそうよ」

「そうだな。じゃあ、次はどうする?」

「そうね……この対象物がなんなのか知りたいわね。資材の保管庫とかを見に行ってみれば何か見つかるかしら」

「まあ、対象物って言うくらいだからなんかしらの物だとは思うが……王命で指定されたような物をただの資材の保管庫に入れているとは思えないけどな」

「それもそうね。……じゃあひとまず戻ることにするわ」


 一度駐屯地に戻って、次にするべきことを考えることにした俺たちは幕舎から外に出た。


 しかし、幕舎から出た俺たちが『鮮血の五芒星』の駐屯地に帰ることはなかった。いや、正確には出来なかったと言うべきか。


 何故か幕舎は『深淵の魔剣』のギルドメンバーたちによって完全に包囲されていたのである。


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