第七十九話 アクナ城
第七十九話です。
土曜日は更新できなかったので、本日二話目の投稿です。
よろしくお願いします!
アクナ城はサイロン公国の首都サイロニアスを守る最後の防衛線でもある。そのためかなり堅牢な城塞都市となっており、防衛戦に特化した作りになっていた。その特徴的なものは二重の城壁とそれを囲むように張り巡らされた深い壕である。
「見るからに難攻不落の城って感じだな」
「そうね。これほどの城はランス王国にもそうはないわ」
サヤはアクナ城を見て感嘆の表情を浮かべていた。
サイロン王国とは比べものにならないほど大きいランス王国にさえ、これほどの城はほとんどないらしいというのだから、本当にすごいのだろう。
ただ、あくまで人が攻めてくることを想定して作られているわけだから、魔物相手にも通用するのかはわからない。
ギルドによって構成された二百人規模の軍団が、アクナ城へと入場した。アクナ城にはすでにサイロン公国軍が三千ほど詰めており、到着早々、ダイナスと『深淵の魔剣』のリーダーであるアイザックはサイロン公国の将軍と作戦会議に入った。その間、俺たちギルドのメンバーたちは待機を命じられる。
「もったいないわね」
サヤがアクナ城を見渡しながら残念そうな顔をする。
「何がもったいないんだ?」
「この城、万単位の軍で防衛することを主眼に作られているわ。だから、たった三千ではこの城の防衛機能を十分に活かせないと思うわ」
確かに言われてみれば、城の大きさの割には兵力の少なさを感じる。三千も決して少ないわけではないけれど、城の規模感からだいぶ見劣りしてしまっていた。
「でもサイロン公国って小国なんだろ? 各城に万単位も兵を駐屯させておけるだけの国力なんてあるのか?」
「ないわね」
「ならなんでこんなでかい城を作ったんだよ」
「作ったのはランス王国だったからでしょ」
「え……? どういうことだ?」
俺が問いかけると、サヤは俺がそのことを知らないと言う事実に驚いていた。
どうやら、このサイロン公国というのは以前にランス王国から離脱した一貴族によって作られた国であるらしかった。そのため、築城当初この辺りはランス王国の支配地域であり、アクナ城は対南部諸国を想定した大部隊を駐屯させる目的で作られていた。しかし、独立建国したサイロン公国が接収し、自国の城としてそのまま活用したため、現在のような城の規模の割に駐屯兵が足りないという状況に陥っているのだそうだ。
「なるほど、サイロン公国はランス王国から独立した勢力なのか。だからランス王国と仲が悪くて援軍要請が出来なかったのか」
「そういうこと。それにランス王国はいずれサイロン王国を再度併呑するつもりなのよ。そのことはサイロン公国も知っているし、実際に警戒しているのだからなおさらね」
こういう国同士の関係などは、記憶が無い所為で全くわからない状態にある。常識を疑われない程度には、少しは調べておいた方がいいのかもしれないな。
アクナ城の一角に幕舎を立ててギルドメンバ-の拠点を作り、俺らはそこでしばしの休息を取る運びとなった。しかし、当然のことながらサヤがじっとしているなんていうこともなく……。
「さあ、行くわよ」
「行くって、どこに?」
「そんなのまだ決めてないけど、とりあえず『深淵の魔剣』を探ってみれば何かしら有意義な情報が得られるかも知れないわ」
確かに『深淵の魔剣』は今回の魔物討伐に際して何かあるような気はしていた。それに何かを探るというなら本格的な戦いが始ってしまう前に探るしかないので、タイミングとしては今が一番なのかも知れない。
「わかった。じゃあ、まずは『深淵の魔剣』の駐留地にでも行ってみるか?」
「そうね。出来れば会議で留守にしているアイザックのテントに潜り込みたいわね」
「それはさすがにまずい気がするが……」
なにやら拳を握りしめ決意を新たにしているサヤを見るに、何を言っても絶対に忍び込むつもりなんだろうなと、俺は諦め混じりにため息を吐く。
『深淵の魔剣』の駐留地は俺たちのギルドが借地している場所からさらに市街の奥に進んだ場所に設けられていた。ちなみにそこは武器の貯蔵庫の傍でもあり、その位置関係は今回の魔物との戦争に際して『深淵の魔剣』が武器の調達を担当しているので、すぐに搬入できるようにとの配慮のようだった。
なので俺たちは新しい武器を取りに来たという体で『深淵の魔剣』のギルドの傍まで何食わぬ顔でやってきた。
「とはいっても、武器庫と『深淵の魔剣』の駐屯地は離れているからな。ここから先はどう侵入するか」
「あんた、認識阻害とか使えたりしないわけ?」
「使えないな」
「全く、指名手配されてる精霊契約者のくせに使えないわね」
「そういう系統は専門外なんだよ」
そもそも俺は魔法を使えない。今空間魔法を使えているのはイスカリオルと契約しているからに他ならない。だから、イスカリオルが得意とする空間魔法以外はからっきしなのだ。どんなに簡単な魔法であっても空間魔法以外は使えない。
「何か別の方法を考えるしかないわね」
「認識阻害は無理だが、それに近いことなら出来るかも知れないぞ」
「へえ。いい案があるなら聞かせてよ」
サヤが興味を示してきたので、俺は思いつきをそのまま口にした。
「よく見ると『深淵の魔剣』のメンバーは身体のどこかに剣の刺繍が入った青いスカーフを身につけているよな。だったらそれを拝借してしまえば、ギルド内に紛れ込んでも不審がられたりはしないんじゃないのか?」
「なるほど、それはいい考えね。じゃあ、よろしく」
「え……?」
「え、じゃないわよ。早く二人分の青いスカーフを調達してきなさいよ」
サヤはさも当然といわんばかりに青いスカーフの調達の役割を俺に押しつけてきた。
「いやいや、今回ばかりはおまえにも協力してもらった方が効率的なんだが……」
「効率的……? よくわからないんだけど、どういうこと?」
サヤが首をかしげながら問いかけてくるので、俺は青いスカーフをどうやって手に入れるつもりなのかをサヤに話した。
まだ仕事が多忙なため、更新は不定期のままとなります。




