第七十五話 サイロン公国からの援軍依頼
第七十五話です!
よろしくお願いします^^
宿屋に戻るとサヤがそわそわしながら俺のことを待ち構えていた。
「遅かったわね」
「そうか……?」
結構早かったほうだと思うが。
「それで、あんたの連れの人っていうのは……?」
サヤがしきりの俺の後ろを気にしている。しかし、そんなに気にしていたところで俺の連れが後ろから現れることはない。何せ今は俺に同化しているからな。とはいえ、そんなことを言うわけにも行かないので適当にごまかす。
「おまえとの契約があるからってことで、事情を説明して外で別れてきた」
「え……そんなことしてよかったの?」
「ああ。今はおまえとの契約を果たす方が重要だからな」
「そ、そう……」
何故かサヤが戸惑ったような表情を浮かべた。
「どうかしたか?」
「な、何でも無いわ!」
今度は慌てた様子で首を振る。
そして、何かを振り払うようにサヤは言葉を続けた。
「それより、ギルド会館に行くわよ!」
「え、今からか?」
「そう、今から!」
怪我の方が少し心配だが、サヤはどうやら行く気みたいだし、一度言い出したら何を言っても聞かないことはすでにわかっているので、俺は仕方なしに頷いた。
「次の依頼を受けに行くのか?」
「それもあるわ。でも、そろそろ本来の目的の方にも取り掛かりたいというか」
サヤの言う本来の目的とは、魔物が不自然にサイロン公国の城ばかりに移動している件の事だろう。その原因を探りにサヤはこのアルティリスにやってきたと言っていたからな。
実際、魔物がその性質に従って本来なら進むであろう進路を取らず、ひたすらサイロン公国の城を攻め滅ぼしているという状況は明らかにおかしい。そこには何らかの人為的な作為があるのかも知れないと考えられる。それがいったいどのようなものかはわからないが……。
「なら受ける依頼はサイロン公国へと出向くものが望ましいのか?」
「そうね。現地がどうなっているのか見ておきたいわ。加えて言うなら、大人数が共同で取り組むものがいいわね。そこにギルドのトップクラスのメンバーが加わっていればさらにいいわね」
「……それはいくら何でも注文が多すぎないか」
「そ、そんなことはわかっているわよ! ただ、これだけ条件がそろっていたらいいなって話しなだけで……」
確かにただサイロン公国に行くだけでは意味がない。サヤが睨んでいる通り、魔物狩りのギルドが何らかの形でかかわっているというのなら、このギルドの上位に位置するメンバーの傍で探りを掛ける必要がある。
俺たちがギルド会館に行くと、何やら人が集まり慌ただしくなっていた。いったい何事かと俺とサヤは顔を見合わせる。
「何かあったのかしら……」
「わからない。とにかく行ってみるか」
会館内部に入ってみると『鮮血の五芒星』リーダーのダイナスともう一人、何やら知的なメガネの男が言い合っていた。
「あのメガネの男は王国二大ギルドの一つ『深淵の魔剣』のリーダー、アイザック・ターナーよ」
「頭は良さそうだが、あんまり強そうには見えないな」
「でもうちのリーダーと互角の腕で、昔は一緒に組んで魔物狩りをしていたと聞いているわ」
あの知的メガネはダイナス並みの強さなのか。それでいて知力は絶対にあっちの方が高いよな。うちのギルド、トップの性能で負けてないか?
それからしばらく二者は言い合いをしたのち、アイザックの方はため息を吐くと、『鮮血の五芒星』のギルド会館から出ていった。それを見届けたダイナスは、会館内に集まっていたギルドメンバー全員に聞こえる大きな声で宣言した。
「オレたち『鮮血の五芒星』もサイロン公国で起こっている魔物戦争に援軍として介入することが決まった! 喜べ野郎ども! またひと稼ぎできるぞ!!」
周囲にいたギルドメンバー達が一斉に雄叫びを上げ、歓喜する。
ダイナスが行っていたのはつまり、依頼でサイロン公国へ行って魔物を狩るってことになるのか。しかも俺たちってことは、大人数で行くってことだよな。
「なあ、もしかしてこれっておまえが望ましいと思っていた条件すべてそろってるんじゃないか?」
「ツイているわ。これなら一気に真相に近づけるかも……」
サヤは拳を握りしめる。やる気に満ちた瞳が爛々と輝いていた。
ダイナスは今依頼を受けていないメンバーは強制参加だと告げ、明日の朝一でサイロン公国に向けて出発すると言った。そのあと、幹部メンバーに目配せすると、彼らを伴って奥の間へと入っていった。
「どうやら俺たちも強制参加らしいな」
「みたいね。望むところよ」
「それで、今日はもう明日に備えて依頼は受けないでおくか?」
「……言っておくけど、お金もう無いわよ」
サヤがジト目で見つめてくる。
「……そういえばそうだったな」
「簡単なものを受けるしか無いわね。でもその前に……」
サヤはダイナスたちが入っていった通路へと視線を向ける。
「ダイナスが幹部連中をみんな連れて行ったのはなんか怪しくない?」
「明日は大人数で遠征になるから、その相談でもしてるんじゃないか?」
「それもあるかも知れないけど、もしかしたら、魔物の移動についても何か情報が聞けるかも……」
「……おまえ、まさか盗み聞きしに行く気か?」
「そうだけど、何か?」
サヤがにやりと口元に小悪魔のような笑みを浮かべる。これは何を言っても行く気だろう。
「……俺も行かなきゃ駄目か」
「当然でしょ。あんたは私の家来なんだから」
当然のことながら俺には拒否権はないんだよな。まあ、こいつ一人でなんて危なっかしくて行かせられないから別にいいけど。もしヤバいことを話していて、その場で聞き耳を立てているのがバレたら、おそらくただでは済まないだろう。
せめてバレないように祈るしかないが……どうしてだろう、サヤと一緒となるとうっかりバレてしまう未来しか見えない。




