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第六十四話 二次試験③

第六十四話です!

よろしくお願いします^^

 ダイナスの攻撃は一切容赦のないもので、たいした魔法を使えない俺は、まさにぎりぎりの綱渡りを余儀なくされた。

 躱した大斧が間近を通り過ぎる度に、背筋が冷える思いをした。


「ったく。小僧おまえ、躱すだけか?」


 ダイナスがつまらなそうにぼやく。

 どうやら俺が躱すだけに徹していることが気に入らないようだ。このまま躱すだけでもギリギリ時間内を逃げ切ることは可能なので、こちらから攻撃をするつもりは無い。


「つまんねえから、おまえこのまま攻撃してこないなら失格にするぞ」

「な……俺は合格じゃなかったのか?」

「やっぱり止めた。つまんねーやつはうちにはいらねー」


 なんて勝手な。しかし、こいつはこの『鮮血の五芒星』のリーダーだ。こいつが失格と言えば俺はどうあがいてもこのギルドに入ることはできないだろう。

 やるしかないのか。

 たいした魔法は使えないため、純粋な剣技だけでこいつを倒さなければならない。しかし、俺は剣技だけでは以前に闘技場でヴァルナクを倒せたくらいだ。ヴァルナクはミスリクの将軍だったとはいっても、高齢だったうえ、個としての強さを誇る敵では無かった。個の強さと言えば、圧倒的な個の強さを持つウィレムと戦ったときは全く歯が立たなかった。

 目の前にいるダイナスはウィレムほどではないにしろ、それに迫るくらいに個の力を持っているかもしれない。そんなやつ相手に俺の剣術が通用するのだろうか。


 だが、心配していても仕方がない。やらなければ失格にするというのなら、やるしかない。


 俺は手にしていた剣を逆手に構え直すとダイナスを見据える。


「ほう。構えを変えたか。なんかやりそうな感じがするじゃねーか」

「この試験、別にあんたを倒しても失格にされたりしないよな?」

「そんなせこいことはしねーよ。やれるもんならやってみな」


 ダイナスが笑みを浮かべる。そして、大斧を握りしめると向かってきた。


 勝っても構わないらしいが、どうしたものか。

 ダイナスは身につけている鎧は露出が多く、急所以外の防御性能は低そうだが、代わりに分厚い筋肉の鎧があるため、今俺が手にしている細剣ではたいしたダメージは与えられそうにない。となれば――。


 俺はダイナスの攻撃を剣で受け流しつつ躱し、流れるような動作で、ダイナスの露出した皮膚に裂傷を与える。一応俺の剣技でもダイナスの攻撃を躱し、カウンターを打ち込むくらいはできるようだ。ただ、与えられた傷自体はかすり傷程度だった。


「痛くもかゆくもねーな。スピードと回避力はたいしたもんだが、おまえは圧倒的に攻撃力が足りないな」

「かもしれないな」


 何せ存在の力が薄い俺には、達人たちが使うような闘気とかいうエネルギーはほとんど出せないのだ。それを補うためにイスカリオルの特訓で身につけた空間魔法もいくつかあるが、俺単体では行使することができない。


 ダイナスの猛攻が続く中、俺は攻撃を何度も躱し、何度も横なぎの一撃を打ち込みダイナスを切りつける。


「そんなザコい攻撃じゃ、いくら喰らわせてもオレは倒れねーぞ」

「悪いがこれが、今の俺には精一杯なんでな」

「けどまあ、オレも攻撃を当てられる気がしねーな。……仕方ねえ」


 ダイナスは手にしていた大斧を放った。その先にいた金髪少女がいきなりのことに驚き小さく悲鳴を上げる。とはいえさすがに飛んできた大斧自体はなんとか躱したようだ。


「な、何するのよ!」

「暇そうにしてっから、ちょっとした刺激を与えてやっただけだ」


 金髪少女はダイナスを睨みつけるが、ダイナスは全く気に止めることなく俺に向き直る。


「残り時間はこいつで相手してやろう」


 ダイナスは背に担いでいた剣を抜き放つ。その剣は大斧よりはだいぶ小さいがそれでも俺の身長くらいはある大剣だった。


「魔物相手ではあんまり使わないが、俺はこっちの方が得意でな」

「なるほど、それはやっかいそうだ」


 大斧よりも小回りが利く大剣は、対人戦においては大斧などよりよっぽど使い勝手がいいだろう。先ほどよりもやっかいになることは間違いない。だが……。


 再びダイナスの猛攻が始まる。俺は躱しつつ、先ほどと同じように躱してはかすり傷程度のダメージを与えるという戦術を繰り返した。


「ちっ、ほんとすばしっこいなてめぇ。こいつでも攻撃があたらねーとは」


 確かに俺は躱すことにかけては自分でも最強クラスだと思っている。だが、今ダイナスの大剣による攻撃を躱し続けていられるのは、何も俺の回避力のみのおかげというわけではない。


「あんた、だいぶ動きが鈍くなってきたな」

「なに? オレはこの程度では全く疲れねーぞ」

「疲れじゃない。もっと根本的な身体を動かすためのものが不足してきたんじゃないか?」

「根本的な……?」


 ダイナスは俺の言葉を受けてようやく自身の状態に思い至った。


「これは……」

「見た目だけなら重傷だと見間違えられるんじゃないか?」


 ダイナスは体中が血まみれで、足下にも大量の血がまき散らされていた。


「どういうことだ。この出血量は、さすがにおかしいだろう」

「まあ、できるだけ血管を断つように刃を走らせたからな」


 俺は執拗に横なぎの攻撃を放った。そのすべては、一撃でより多くの血管を断ち、出血を強いるためだ。人体は縦に血管が伸びているから、横に斬ってやればより多くの出血を望める。

 これはいつかの闘技場で攻撃が通りづらい相手に対してハイマンが使っていた戦法だ。今回はそれをありがたく使わせてもらうことにした。


「なるほど、やられたぜ。魔物はそんな姑息な攻め方をしないもんだから油断した」


 ダイナスはやれやれと言った表情で大剣をしまった。


「これ以上続けてもおまえを殺れる気はしねーし、もう時間だ。おまえの入団を認めてやるよ」


 ダイナスがついに俺のことを認めた。 

 こうして俺は晴れて『鮮血の五芒星』への入団が決まった。

 

 やれやれ、これでようやく魔物退治で金を稼ぐことができるな。

 


次話は明日投稿予定です。

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