第六十二話 二次試験①
第六十二話です!
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『鮮血の五芒星』の入団試験の二次試験は現在在籍しているギルドメンバーと手合わせして、認められることができれば合格という基準が曖昧な試験内容だった。
しかも二人一組で挑まなければならない。俺は余り物同士で組まされた相方の方に視線を向ける。当の金髪少女は生意気そうな面構えで、腕を組みながら偉そうに立っていた。一応これから一緒に試験に挑まなくてはいけないので最低限の意思疎通は必要だと思い、こちらから何度か話しかけてみたのだが、ことごとく無視されていた。
こいつと組んで戦うとか大丈夫なのだろうか。もし、二人の連携を見るような評価項目だったら絶望的だぞ。
そんなことを考えていると、ついに俺たちの試験の番がやってきた。別に順番制というわけではないのだが、俺たちは余り物だったため、到着が遅れている試験官の担当にさせられたのだった。周りではすでに試験を始めている中、ようやく俺たちの前にも試験官が現れた。
俺たちの前にやってきたのは大男だった。二メートル越えの筋骨隆々な体躯に大斧を担いだその姿は、圧倒的な威圧感を放っている。そして、野獣のような目つきで俺たちのことを値踏みするような視線を向けてきた。
「おまえたちが入団希望者か?」
「ああ、そうだが……」
「オレは『鮮血の五芒星』の頭張ってるダイナスだ」
俺たちの試験官ってこのギルドのトップかよ。というか、トップが何で試験官やってんだよ。
「ふーん、あんたがここのトップなの。なるほど、野蛮な集団のトップらしい風貌ね」
「ほう。今から入ろうとしてるギルドのトップにずいぶんな口利くじゃねーか。……潰すぞ?」
「う……ッ」
一瞬、ダイナスがすさまじい威圧感を俺たちにぶつけてきた。それに対して金髪少女は肩をびくつかせる。それでもすぐに生意気そうな顔つきでダイナスをにらみ返していた。ただ、目が若干涙目になっているし、心なしか少し震えているように見える。これは内心結構びびってるな。
「な、何よ。こ、このギルドでは、トップに従順な者しか、いらないってわけ?」
「いいや。強ければ問題ねーな。……そうだな。じゃあオレが適当におまえらのこと殺そうとするから、十分間生き残れたら入団を認めてやるよ」
「え……?」
「そっちの小僧もそれでいいな?」
ダイナスが俺の方に確認してくる。
十分間生き残れれば入団を認めるか。これ、完全に金髪少女のとばっちりだよな。そんな命がけで戦うような試験じゃなかったはずなのに、むやみにギルドのトップを怒らせやがって……。
とはいえ、ここで拒否なんてしようもないし、受け入れるしかないだろうな。今の俺はたいした魔法は使えないんだが、剣技だけでダイナスの攻撃を防ぎきれるだろうか。見た感じ相当強そうだが……。
「じゃあ、行くぞ」
ダイナスが大斧を振り下ろしてきた。だがその一撃は俺でも金髪少女でもなく、ちょうど二人の間辺りに振り下ろされた。
直撃した大斧の衝撃で地面が派手に砕け散り、石の礫が俺たちを襲う。俺は距離を取りつつ空間魔法を使った。迫り来る礫と俺の間に幾重にも薄い空間の層を構築して威力を緩和する。そして、同時に自身の身体に到達する礫の順番を把握し、近いものから順にたたき落とした。似たようなことをイスカリオルとの魔法の修行の際にやっていたので、とっさに身体が動いて、このように俺はなんとか回避することができた。
「きゃ――ッ!?」
しかし、金髪少女の方はその攻撃を予想していなかった上、とっさに反応ができなかったようだ。防ごうとはしていたものの、石の礫がいくつも身体に直撃していた。
「ひ、卑怯よ! そんな飛び道具を使うなんて……」
ところどころに傷を負った金髪少女が抗議する。
でも、今のは別に飛び道具って言うほどのものではないよな。単なる攻撃の副産物でしかないし。
当然のことながら、ダイナスもそんな抗議の声など聞く耳持たずといった様子で言い返した。
「あのなぁ。オレたちが相手にするのは魔物なんだぜ。亜人種のやつなんて太い腕を地面にたたきつけて今みたいな攻撃だって普通にしてくるしよ。それに、魔物との殺し合いに飛び道具禁止なんてルールはないんだぜ」
「でも、これは入団試験だから……」
「実戦で役に立たないやつはいらねーんだよ。だからこの程度でピーチク喚くようならさっさとお家に帰りな」
ダイナスの言うとおりだな。実際魔物たちは手段問わず、とにかく人間を殺しに来る。だからどんな状況だろうととっさに対応できる必要がある。こいつみたいなやつは魔物との戦いでは真っ先に殺されるだろう。
言い負かされた金髪少女は悔しそうに唇を噛んでいた。
「暇そうにしてるなよ、小僧」
「おっと」
ダイナスと金髪少女のやりとりを適当に眺めていたら、ダイナスがいきなり俺に向けて大斧で攻撃してきた。だが、不意打ちとはいえ、やはり大きな獲物故の鈍重さがあって、俺は難なく躱す。
あっさり躱されたのが気にくわなかったのか、ダイナスはさらに連続して俺に攻撃を仕掛けてくる。大斧が通り過ぎるたびに聞こえる風切り音は、まるで空間自体を切り裂いているかのような激しさがある。だが、やはり魔物との先頭を想定して威力重視感が否めないダイナスの攻撃は、俺にとってはさして脅威にはならない。躱すだけでいいのなら、十分間凌ぎきることも難しくはない。
「ほお、おまえなかなかやるな。もういいや。おまえ合格な」
「は……まだ十分経ってないが」
「大斧じゃあ十分やっても結果は同じだろう。だからもういい。時間がもったいねえ」
ダイナスはだいぶさっぱりとした性格らしい。これ以上攻めても俺に攻撃を当てることはできないと見抜いたダイナスは、早々に俺の入団を認めた。
だが、そうなると残り時間は……。
「さて、まだ半分近く時間は残っているが……さて、生意気なお嬢ちゃんの方は、あの小僧の様にオレの攻撃を躱しきることができるかな」
一対一になってしまったことを理解すると、金髪少女は苦々しい表情を浮かべ、剣を構えた。
次話の投稿予定は水曜日です。




