第六十一話 一次試験
第六十一話です!
よろしくお願いします^^
ギルド入団のための一次試験で俺は四人を相手に戦うことになるようだった。もっともバトルロワイヤル形式なので、律儀に四人全員を倒す必要などなく、他が勝手につぶし合ってくれれば、俺は最終的に残ったやつを相手にすればいいのだが……残念ながらそんなに楽して勝ち残ることはできないらしい。
俺含め五人の中で外見的には俺がどう見ても弱そうに見える。他の四人はレザーの鎧を身につけていてがっしりとした体つきをしてたり、槍や盾などの装備を整えたりしているのに対して、俺は薄い私服に片手剣を腰から下げているだけの優男である。当然真っ先に狙われるのは俺な訳で、他の奴らは事前に打ち合わせでもしていたのではなかろうかというぐらい、息もぴったりに俺を攻撃してきた。
これは何というかバトルロワイヤルと言うよりも、多対一のハンデマッチの様である。
俺は迫り来る四通りの、剣による斬撃や槍による突きを次々に躱していく。四人同時で息を吐く間もない連続攻撃が襲いかかってくるが……正直、まるで相手にならなかった。今はイスカリオルがいないため強力な魔法は一切使えないが、そんなのは問題にならないくらいに力の差は歴然だった。
初めのうちは舐めてかかってきていた他の受験者たちも次第に本気の顔つきになり、それでも攻撃がかすりもしないことに、次第に表情がこわばっていく。
「嘘だろ……何で、あたんねえんだよ!」
「こいつ、背中に目でも付いてやがるのか!?」
さすがに背中に目は付いていないけど、簡単な空間魔法を常時発動することで、周囲の状況に対する感知能力を極限まで上げているので、似たようなものかもしれない。
ついには四人とも疲れ果てて、俺への攻撃がやんだ。
全員肩で息をするほどに体力を消耗している。これはもう勝負はついたな。
今まで全く攻撃していなかったためか、俺が反撃することに対する意識が甘くなっていた様なので、四人に対して、速攻で距離を詰めて行き、次々に武器をはじいていく。最後の一人は他のやつを相手にしている間に、再度攻撃を仕掛けてきたが、今度は紙一重で避けてカウンターを武器にお見舞いしてやった。
「これで、終わりだな」
全員が武器を取り落とし降参を宣言すると、俺の一次試験はあっさりと終わりを告げた。
なんだ、こんなもんか。案外楽に入団できそうだな。
すぐ隣のグループでは例の金髪少女が戦っていた。すでに二人が気を失って地面に転がっているため残りは三人。これは金髪少女が路地裏で見せた魔法で残りの二人を瞬殺かと思いきや、なぜか苦戦している様子だった。少女は魔法を使うことなく剣を手に二人を相手取って切り結んでいる。
何で魔法を使わないんだ?
強力な魔法を使えるならその方があっさり勝てるのに、何か使えない理由でもあるのか。
金髪少女の剣技は正直言ってたいしたことがなかった。そりゃ、そこら辺の素人よりは使えるのかもしれないが、強さ的には『塔』で相手した精霊騎士よりは多少ましという程度だ。
剣の腕がその程度なら、どう考えても魔法を使うべきだが……これはやはり使うことができないよっぽどの事情があるのだろうか。
「く……。この……っ!」
金髪少女が苦悶に満ちた悪態を吐く。
二対一という状況も相まってかなり押されていた。これは先に潰されるだろうなと思っていると、金髪少女の指の辺りが一瞬光る。
すると、今までぎりぎりで相手の攻撃を防いでいた金髪少女が、その瞬間だけ相手の剣をまるで玄人のごとく紙一重で躱し、カウンターを決めていた。
そして、またしても何かが光る。今度ははっきりと見ることができた。金髪少女の指にはめている指輪が輝き、その一瞬だけ何故か金髪少女は完全に相手の動きを読み切ってカウンターを決めていた。
その一撃が決まったところで、立っているのは金髪少女だけとなり、そのグループでも監督官が頷き、一次試験が終了した。
結果、苦戦しながらも、隣のグループでは例の金髪少女が二次試験に駒を進めた。
しかし、あれは何だったんだろうか。間違いなく魔法だが、どういう魔法なのか全くわからなかった。
試合を終えた金髪少女が出口に向かって歩いて行く。その途中に立っていた俺は、金髪少女が横切るときに、話しかけてみた。
「今のって、魔法だよな?」
すると金髪少女は足を止めてこちらに視線を向けてくる。頭のてっぺんから足の先まで俺のことを値踏みするように見た後、その視線が俺の首元に注がれる。
「あんた、元奴隷?」
「ああ、そうだが」
「下賤の輩が私に話しかけないでくれる?」
「な……」
完全に見下した目で俺を見た後、金髪少女はすかした顔をして試験会場を後にした。
何なんだあいつ。……いやなやつだな。
そして、一次試験が終わると、通過者を集めて二次試験に移る。
一次試験の通過者は俺とあの金髪少女を含めて十人程度だった。
「これから二次試験を始める。当初の予定では一人一人受験してもらう予定だったが、時間短縮のため、今回は二人一組で試験を受けてもらうことになった」
試験を統括している『鮮血の五芒星』のメンバーがそんなことを言った。
二人組で試験か。さて、誰と組むかな。
俺が適当に他のやつに話しかけようとすると――。
「悪いな。あんたはあんまり頼りにならなそうだし、他のやつと組むわ」
――拒否をされてしまった。
マジかよ。俺、たぶんここにいる奴らの中ではダントツで強いと思うんだが……やっぱり見た目が問題なのか。
二人組となれば、やはり誰もが頼りになりそうなパートナーを選びたいと思うのは当然のことで、強さについては誰もが未知数な段階なため、とりあえず見た目が強そうなやつが大人気だった。
そして俺のような優男はものの見事に需要がなかった。
いや、俺以外にも一人、需要がなさそうなのがいた。
例の金髪少女も誰からも相手にされず、一人突っ立っていた。というかあいつ、何故か自分から誰かに話しかけている様子がない。じっと腕組みをしてただ立ち尽くしていた。
もしかして誰かから声を掛けられるのを待っているとか?
だが、さすがに声を掛けてくるようなやつは一人もおらず、金髪少女も俺と同様売れ残りとなった。
「おまえたち、相手がいないなら二人で組め」
試験官に促されて、俺と金髪少女は余り者同士でペアを組むことになった。
「一応、よろしく頼む」
「ふん……」
俺が差し出した手には一瞥もくれず、金髪少女は顔を背けた。
おいおい、これ、大丈夫なのか。
まあ、いざとなったら俺一人で戦えば済む話だけど……。
俺はパートナーに多大な不安を感じながら、二次試験へと駒を進めた。
次話は明日投稿予定です!




