第六十話 路地裏の金髪少女
第六十話です!
よろしくお願いします^^
誰かの話し声が聞こえてきて、俺はゆっくりと目を開ける。寝心地は最悪だったが、どうやら一晩明かすことはできたらしい。
そして俺は目覚まし代わりに聞こえてきた声の方へと視線を向けた。
少し離れたところで、金髪の少女が数人の男たちに囲まれていた。
ここが路地裏であることを考えると、あの少女は男たちに連れ込まれたのだろうか。だとすればこれから酷いことをされてしまうのかもしれない。見て見ぬ振りもなんだから、一応助けた方がいいよな。おそらく三、四人程度なら訳もなく倒せるだろうし。
「まあ、仕方がないか……って、あれ」
少女が怖い目に遭う前に助けてやろうと立ち上がったのだが、その瞬間、あちら側では、男たちが次々と倒れていった。
「どうなってるんだ……?」
何らかの手段で金髪の少女が男たちを倒したのか。それにしては攻撃を加えたようには見えなかったし、何より金髪の少女は一歩たりとも動いていない。
「となると……魔法か」
もし男数人の意識を一瞬で刈り取るような魔法を使えるのなら、今出ていくのは逆に危険な気がする。勘違いされて俺にまでその魔法を使われたら厄介だ。ここは関わらないでおくのが賢明か。
俺は物陰に身を隠し、金髪少女がここから立ち去るのを待った。しかし、金髪少女はすぐに立ち去ろうとはせず、地面に横たわる男たちを見下しながら呟いた。
「本当にこの街は治安が悪いわね。おまけに身の程も弁えない馬鹿な人間たちが溢れてる。あんたらみたいな下賤な人間が高貴な存在である私に手を出そうとするなんて、ちょっと調子に乗りすぎよ」
高圧的な態度がにじみ出ている金髪少女は不機嫌そうにそれだけ言って、路地裏から出ていった。金色の揺れる後姿に、ふと既視感のようなものがあった。そして何となく寂寥感のようなものを感じる。もしかして俺はどこかであの少女に会ったことでもあったのだろうか。……いや、そんな記憶はないな。きっと勘違いだろう。
「それにしても、いったい何だったんだ……?」
俺は金髪少女が路地裏から出ていったのを確認すると、地面に横たわる男たちの様子を見てみる。外傷の類は見当たらず、どうやら眠ってしまっているだけのようだった。
「催眠系の魔法でもかけたのか」
金髪少女がどんな魔法を使ったのかは不明だが、おそらく睡眠を誘発する類の魔法なんだろう。でも相手に悟られずにしかも複数を相手に行使できるという事はそれなりの使い手であることは確かだった。傍にイスカリオルがいればもう少し詳しいことが分かったかもしれないが、いないものは仕方がない。今頃は皿洗いでもさせられているのだろうか。
「まあ、別にかかわることもないだろうし、いいか」
俺は気を取り直して、路地裏から通りに歩き出した。
今日はとりあえず魔物狩りギルド『鮮血の五芒星』への入団試験に参加して、メンバーに加えてもらう。
それからサクッと依頼をこなして金を稼ぎ、イスカリオルを迎えに行く。
で、今度こそ記憶を取り戻すための旅を始めるのだ。
昨日は相手にされなかった『鮮血の五芒星』のギルド本部へと再び足を踏み入れる。入ってすぐ、窓口のところに入団試験申し込み受付の文字が書かれた看板があるのを見つけた。さっそくそこで入団試験参加の申し込みをすると、数字を書いた紙を渡される。
「これは?」
「おまえの一次試験のグループ。詳細はあっちの看板に書いてあるから」
そう言って受付の男は少し離れたところにある看板を指さした。どうやらそこに試験の詳細が書かれているらしい。
「どれどれ……」
俺は看板に書き記されている試験概要に目を通した。
『鮮血の五芒星』の入団試験は一次試験と二次試験があるらしい。一次試験では受験者同士が五~十人のグループに分かれてバトルロワイヤル形式で戦う。ここでは武器を弾くか、相手を降参、あるいは戦闘不能にさせれば勝ちになるようだ。闘技場でのバトルロワイヤルのように必ずしも相手を殺す必要はないらしい。そして勝ちに残った一人だけが二次試験に進める。二次試験では現役の団員と戦ってその力が認められれば、試験は合格。入団が認められるらしい。ちなみに二次試験は勝てなくても実力が認められれば問題ないようだ。だが、この条件はなんというか……。
「温いわね。王国の二大ギルドの一つにしては……それほど、人手不足ってことなのかしら」
隣から、なんかちょっと前に聞いたような声が聞こえてきたなと思って視線を向けると、先ほど路地裏で見かけた金髪少女が腕組みしながら、つまらなそうに看板を見ていた。
間近で見た金髪少女は意外と可愛らしい顔立ちをしており、透き通るような白い肌と、やや赤みがかった瞳がやけに美しかった。そして、今日初めて会ったはずなのに何故かその面影に懐かしさを感じる。それだけではない。理由はわからないが胸の内にわずかな苦しみを感じた。それは別に嫌な感じではなくむしろ……。
「……なにジロジロ見てるのよ」
「え、あ、いや……」
「ったく、ほんと嫌な街だわ」
金髪少女は悪態をつくと踵を返して、隅の方へと向かって歩きだした。しかし、人目を引く容姿をしているからか、すぐに他の男に絡まれていた。そのすべてを無視して金髪少女は歩いていく。さすがにギルド本部の建物で問題を起こそうとする奴はいないらしくて、無視されてまで絡んでいく者はいなかったようだが……無視された奴らは恨みがましい視線を向けていた。金髪少女の態度は確実にここの奴らの反感を買っていた。
「まあ、俺には関係ない事だが……」
それにしても、あいつを見たときに一瞬よぎったものは何だったんだ? 今の自分に記憶がないという事は記憶を失う前に出会っていたのだろうか。でもそれにしては相手の反応が冷たすぎるよな……って、そんなことは今はどうでもいいか。
金髪少女のことは少し気になるが、今は入団試験に集中しないとな。
そして、ギルド本部一階のロビーに集まっていた俺を含めた五十人近い受験者は、『鮮血の五芒星』のギルドメンバーらしき男に呼ばれて、試験会場へと案内されていった。
次話は明日投稿予定です。




