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第五十二話 枢機卿フェンネ

第五十二話です^^

よろしくお願いします!

「あなたは……誰ですか?」

「わたくしは、精霊教で枢機卿を務めておりますフェンネと申します。わたくしの部下がお世話になったようで」


 枢機卿といえば精霊教において教皇に次ぐ地位である。そんな人が何故こんなところに……?

 ビスカは警戒心をあらわにしながら、フェンネに視線を向ける。それに対してフェンネはにこにこと人のよさそうな笑みを浮かべながらビスカのことを見つめ返した。


「その姿、セシルの目を通して見た時はまさかと思いましたが、やはりあなたはタスニタ人のようですね。しかも純血の」

「確かにわたしの両親はともにタスニタ人でしたが……それがどうかしましたか?」

「純血でないとその姿にはなれないんですよ。知りませんでしたか?」


 フェンネの問いかけにビスカは首を振る。そもそもこの姿についてもついさっき知ったばかりだ。そんなことは知るはずもない。


「エール連合国の彼女よりも先にあなたを見つけることができて幸いでした」

「え……?」

「あなた、わたくしの配下に加わりなさい」

「はい?」


 ビスカはフェンネのいきなりの勧誘に首をかしげる。

 いきなり現れて、このおばさんはいったい何を言っているのだろうか。精霊教の枢機卿であるフェンネの配下という事は精霊教に加われという事なのか。そんなこと考えるまでもなく、お断りである。


「そんなことよりわたしは早く決着をつけて、先輩の手当てをしないといけないんですけど」

「……ああ、そこに転がってる男の事? だったら、あきらめた方がいいですよ? 何に手を出したのかは知らないですけれど、身体の内側がズタズタになっていて、もうすぐ死んでしまうでしょうから。それに、もし助かっても先は長くなさそうですよ」

「え……そ、そんな嘘、わたしは信じませんよ!」

「嘘ではありません。……その男に触れてみなさい」


 ビスカは言われた通り、地面に倒れ伏すクロンに触れてみる。そして、驚き目を見開いた。


「なんて、冷たいんですか……」


 クロンの身体は完全に冷え切り、微かに聞こえる呼吸音も途切れがちで、いつ止まってもおかしくない。


「そんな、嘘、ですよね。このまま死んじゃったりなんて、しないですよね?」


 ビスカはクロンに縋りつく。しかし、当然ながらクロンが目を覚ます気配はない。


「……今度はわたしが守る番だって、そう思っていたんですよ。いつも裏切られ、見捨てられて生きてきたわたしを、初めて命がけで守ってくれた人だから……わたしは、今度はわたしが、この命を懸けてでも先輩のことを守りたいって、そう、思っていたのに……」


 タスニタ人ではないクロンは、当然ながらビスカのような圧倒的な回復力など持ち合わせていない。だから重傷を負えば、助からないことだって十分にあり得る。どれだけビスカが敵を蹴散らしても、回復を願っても、助からない可能性はある。自力での回復が望めないのであれば、いくらビスカが頑張っても、クロンの死は避けられない。


「……そうだ、回復魔法なら」


 ビスカはクロンを救う唯一の方法を思いつき、立ち上がる。


「すみませんが、セシルさんを渡してもらえませんか?」

「お断りします。この子はわたくしの大切な部下ですから」

「……もう、命は取らないと約束しますから、先輩に回復魔法をかけさせてください。おねがいします」

「いくらお願いされても渡さないし、この子の回復魔法では、その男を救うだけの力はありません。というよりも並みの回復魔法では無理でしょう」

「そ、そんなの、やってみないとわからないじゃないですか!」

「とにかく無理です。あきらめなさい」


 フェンネはセシルを抱きしめて、断固として、渡さないという意思表示をする。


「……なら、仕方ないですね。力ずくで、セシルさんを渡してもらいます」


 何としてもクロンを助けるという、その強い意志に呼応するかのように、ビスカが身に纏っている紅の闘気が一層輝きを増す。


「それは、困りましたね」


 フェンネは表情を曇らせ、床に大事そうにセシルを横たえると、ビスカに向き直る。


「それで、あなたはこれから何をなさるおつもりなのかしら?」

「当然、あなたを動けなくしてから、セシルさんを起こして、先輩に回復魔法をかけてもらいます。……どんな手を使ってでも」

「そうですか。……という事は、もしかしてあなた、わたくしに勝てるつもりでいるのですか?」

「ええ、もちろん」

「その足で?」

「え……?」


 フェンネが指摘した瞬間、ビスカの両足の腿がまるで刃物で切り裂かれたように割れて血が噴き出した。


「ぐ……。いったい何が……?」


 目の前のフェンネに攻撃を行ったような動作はなかった。しかし、この場でビスカに攻撃ができる者は、先ほどからずっと傍観を決め込んでいる精霊を除けばフェンネしかいない。もしかして、魔法で攻撃されたのかと思ったが、それにしては、詠唱が全くなかったのは不自然である。


 全く理解の及ばない未知の攻撃に対して、ビスカはこれまでにないくらい動揺した。

次話の掲載予定は水曜日です。

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