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第五十一話 武断覚醒

第五十一話です!

よろしくお願いします^^


※2/11:22時53分に少し修正を加えました。

 身体が熱い。まるで炎を身に纏っているかのような感覚。おそらくは体内にある闘気が自身を覆いつくすほどに膨張しているのが原因だろうが……。


「こんな感覚は、初めてです……。あなたは何か知っているんですか?」

「……武断覚醒。それはタスニタ人が極稀に至る形態。エール連合国のアスクル・アトラティカと同じ力」


 エール連合国のアスクル・アトラティカという名にはビスカも聞き覚えがあった。何せその名は、ビスカがいずれ訪れようと考えていたエール連合国にあるタスニタ人の国を打ち立てた人物の一人のものだからだ。そして、その強さはもはや伝説と言ってもいい。聞くところによると、精霊との契約者ではないのに、現契約者であるランス王国のアサカ王やロムルス帝国のアルベルト一世と互角の力を有していると言われている。

 そのアスクル・アトラティカと同じ力という事は……。


「じゃあこれって、相当強いんですよね?」

「……さあ。いくら闘気が多くても使いこなせなければ、意味がない。己の分を超えた力は、往々にして破滅を導くもの」

「なるほど。でも、感覚的にわかるんですけど、たぶん使いこなせるかどうか以前に、あなたは今のわたしの敵じゃないですよ」


 セシルが青龍刀を構える。それに対してビスカは自然体のままでいた。


「……舐めないで」


 構えないというのならば、一気に距離を詰めて真っ二つにしてやろうと、セシルは一気に加速して、ビスカに接近する。それでも動く気配を見せないビスカに対して、苛立ちながらセシルは青龍刀を振り下ろした。

 刃がビスカに直撃する寸前、ビスカはわずかに身体をずらして紙一重でその一撃を躱すと、青龍刀が地面に叩き付けられるよりも速く、セシルに対して蹴りを放って、弾き飛ばした。


 あまりの速さに何をされたのかわからないまま、セシルは数メートルの距離を飛ばされて地面に転がる。腹部に感じる激痛と、顔を上げた先のビスカの姿を見て自分が蹴り飛ばされたのだと理解した。

 起き上がろうとすると、噎せ返って吐血する。どうやら今の一撃で内臓をやられてしまったらしい。すぐさま治癒魔法をかけてダメージを回復するが、その間、ビスカは何もしてこず、ただ黙ってセシルの回復を待っていた。


「……なぜ、魔法の邪魔をしない?」

「必要ないからですよ。どっちみちあと一撃、本気で攻撃すればあなたは死ぬと思いますから」

「……この、紅い化け物め」


 セシルは目いっぱいまで回復すると、立ち上がる。

 そして、今度は青龍刀を構えず、代わりに詠唱によって空中に無数の火の球を作り出す

 

「今度は魔法ですか」

「……躱せるものなら、躱してみるといい」


 セシルが手を振り下ろすと、無数の火の球が次々とビスカに向かって殺到する。

 それをビスカは移動しながら躱していく。


「魔法もたいしたことないですね」

「……正直私ではお前を殺せるかはわからないけど、せめてそっちは殺しておく」

「え……?」


 ビスカが離れたのを見計らってセシルは残しておいた火の球を、地面にたおれているクロンに向かって放った。


「しまった。先輩――ッ!」


 ビスカは火の球を喰らう事も厭わず、クロンの下へ走った。

 ギリギリ火の球がクロンを焼き尽くす前にビスカは自らの身体を滑り込ませることに成功したが、その代償として、大量の火の球の直撃を受けてしまう。大きな爆発音とともに炎が燃え上がった。


「……さすがにあれだけ喰らえば――え?」


 人を一人、余裕で消し炭にできるだけの業火を浴びせたというのに、火柱の消えた先には怒りの表情は浮かべたビスカの姿があった。


「わたしってバカですね。ちょっと強くなったからって浮かれて、危うく守りたいと願った先輩のことを危険にさらしてしまう所でした」

「……なんで、効いてないの」

「いや、結構熱かったですよ。でも、わたしを燃え上がらせているこの闘気に比べたら、全然たいしたことなかったですけどね」


 ビスカが身に纏っている可視化されるほどの紅の闘気は、セシルの放った無数の火の球の直撃から、ビスカの身体を守っていた。


「……そうか。闘気が障壁になって」


 セシルは自らの魔法がどうして防がれたのかについて思い至った。それと同時に魔法でもビスカを倒すことができないという事に気付いてしまう。


「……私は、どうすれば」

「じゃあ、もう面倒なことは無しで、さっさと終わりにさせてもらいますね。先輩のことも早く応急処置しなければいけないので」


 ビスカが駆け出すと、セシルは慌てて青龍刀を構えた。しかし、そんなものはお構いなしとばかりにビスカはセシルの間合いに飛び込んでくる。事実、青龍刀を振るう間もなく、セシルはビスカの肉薄を許してしまった。もはや青龍刀で振り払う事すらできずに、ビスカの攻撃を喰らいそうになる。

 だが、セシルとて、並みの実力者ではない。身体に染みついた戦闘センスがとっさにセシルの腕を動かし、青龍刀の持ち手でビスカの放った拳を防ぐ。いや、防ごうとしたが、ビスカの拳は青龍刀の持ち手を砕いてそのままセシルの腹にめり込んだ。


「が……っ」


 わずかばかり軽減された拳は、それでも再び内臓に至るまでの損傷を与えるには十分すぎる威力だった。セシルは耐え切れず膝をつく。それを見下ろしながらビスカは口を開いた。


「ここであなたを見逃したら、あなたはどうしますか?」

「……機をみておまえ達を暗殺する」

「じゃあ、しょうがないですね。先輩の旅を邪魔させたくありません」


 ビスカは、戦闘中はしまっていた短剣を取り出して、セシルの首目掛けて振り下ろす。




 ――え?




 振り下ろした腕が、何もない空間を切り裂いた。目の前には誰もいなかった。


「いっ……!?」


 短剣を握っていた手に痛みが走り、視線を向けると、いつの間にか柄と刃を逆にして短剣を握っていた。


「え、どういうこと……?」

「これ以上わたくしの可愛い部下をいじめないでもらえるかしら?」


 ビスカは突然の背後からの声に振り返ると、そこには精霊教の高い位階の者が着るような立派な服を身に纏った中年の女性が立っていた。そして、その手には瀕死状態で気を失ったセシルが抱きかかえられていた。



次話は明日投稿予定です。

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