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第四十六話 外界の魔物

第四十六話です!

よろしくお願いします^^

「さっきのはどういう事なんだ。いい加減説明してくれ。何か知っているんだろ?」


 俺は逃げながらセシルを問い詰める。

 いまだ背後には追いかけてくる亜人種の魔物たちがいる。

 

「……まあ、あとで殺すから言ってもいいかな」


 セシルが物騒なことを呟いて、それから俺たちに説明した。


「……あれは外界の魔物。そしてここはたぶん外界。あるいは外界を再現した空間」

「外界って言うと確か……」


 ハイマンとメルカと共にグリンドル伯爵の屋敷に忍び込んだときに聞いたような。

 思い出そうとしていると、ビスカが教えてくれた。


「外界というのはわたしたちが暮らしている結界に守られた大陸世界の外側の世界のことです」


 そういえばそうだ。確か結界の外には魔人族やら、強力な魔物がいて危険だとか言っていたな。言われてみれば、あの亜人種の魔物は相当強かった。あんなのがうようよいるなら確かに危険だ。


「あれ? じゃあ、さっきやられていた人たちは、魔人族? なんか人間と変わらないように見えましたけど」

「そういえばそうだな。魔人族なんていうもんだから、もっと魔物みたいな感じかと思ったが」

「……魔人族はただの人。もっとも魔法技術が内界よりも圧倒的に進んでいるから、相当強いはずだけど」

「へえ。でもなんで外の世界でわざわざ人が暮らしてるんだ? 結界の中に逃げてくればいいのに」

「……外から結界の中に入るすべはない。だから外にいる人間は内界には来れない」

「え……じゃあ外界の人間たちはあの強い魔物とずっと戦っているのか?」

「……そう。外界の人間たちはこの世界が生み出した最悪の魔物たちと人類の生存をかけて戦っている」

「なんだって……」


 なんだよそれ。それじゃあ、外界の人たちは強力な魔物がいる危険な世界に置き去りにされてるっていうのか。


「外界の人間たちを何とかして結界の中に入れる方法はないのか?」

「……転移魔法なら可能だけど、そんな魔法を使える人間がそもそもいない。それに外界の人間は内界の人間を憎んでいるから、招き入れようとすると戦争になる」

「は……内界の人が憎まれてる?」

「……その先は話すと長くなるから話さない。それに今はそれどころじゃない」


 迫りくる亜人種の魔物たちは一向にペースを衰えさせることなく追いかけてくる。このままではこちらが疲れて追いつかれてしまうだろう。


「どうにか倒す手段はないのか?」

「……内界の人間の力では外界の魔物相手には歯が立たない」

「じゃあ、どうするんだよ」

「……逃げて、次の場所へと続く魔法陣を見つけるしかない」


 本当にそれしか手はないのか。でもこのままじゃ、転移魔法陣を見つける前に――。


 前方で木々が揺れる。そして、次の瞬間には亜人種の魔物が数体、飛び出してきた。慌てて逃げる方向を変えようとするが、すぐに囲まれてしまう。


「どんだけいるんだよ! これじゃ、魔法陣を探すなんて……」

「ひとまず逃げることに専念しましょう! ここをどうにか切り抜けないと」


 俺たちは迫りくる魔物たちの攻撃を躱しまくる。一撃でも喰らったら即アウトだ。敵の攻撃は速いし重い。だが、俺が本気を出せば、躱すくらいなら何とかなる。しかし――。


「うぐっ……」

「ビスカ!?」


 吹き荒れる魔物の剛打を躱し切れずにビスカが一撃を喰らってしまう。弾き飛ばされ、木をなぎ倒して転がったビスカはどうやら気を失ってしまったらしい。ピクリとも動かない。


「クソ……!」


 俺はすぐさまビスカを助けるために向かおうとするが、敵が多すぎて思うように進めない。そうこうしているうちに動けないビスカの所へと魔物たちが集まっていく。


「おい、セシル! ビスカを……なっ!?」


 セシルに助けに向かってもらおうと思い視線を向けると、セシルの方は魔物に捕まり、抵抗虚しく腕を喰いちぎられていたところだった。


「おい……嘘だろ」


 一瞬、事態を飲み込めず動きを止めてしまった瞬間、横合いからとてつもない衝撃を受け、弾き飛ばされた。

 何度も地面に叩き付けられて、ようやく勢いを失って止まったときには全身がズタボロで、痛みを感じるはずの痛覚が麻痺してしまっているようだった。身体は全く動かせない。それどころか体中の感覚というのものが抜け落ちてしまったかのようだった。


 俺は、魔物に殴られたのか。

 

 かろうじて動かせる目だけを、上に向けると、ゆっくりと迫りくる魔物の姿が確認できた。


 俺は、こんなところで死ぬのか?

 

 まだ、記憶を何も見つけられていないのに、こんなところで……。


 魔物に捕まって喰われる前に、限界を迎えた体から、意識がすっと抜け落ちる。

 音も感覚も何もかもが閉ざされて、目の前が真っ白になった。



○○○



「はあ……。今回の侵入者も結局全滅ではないか」


 水晶を見ながら少女の姿をした生命体はため息をつく。


 『塔』の中では、ありとあらゆる事象はそこを守護する精霊の思うがまま。

 その力を用いて精霊たる少女は侵入者たちを、魔物たちにぶつけてみたのだが……。


「入門レベルを突破したのが半分で、現地では持った方でも三十分。討伐数はゼロ。やはり内界の人間は弱すぎじゃ。これでは『塔』がなくなった後にはまた悲劇が待つのみではないか」


 見た目にそぐわぬ老獪な口調でぼやく精霊。


「とはいえ、すでにいくつかの『塔』は攻略されてしまった。これは避けられぬ運命なのかもしれんのう。……さて、こやつらをどうするか」


 水晶がまた別の映像を映し出す。そこには今回『塔』に侵入した者たちが全員、意識を失ったまま横たわっていた。


「ん、そういえばこやつは、やけに存在の力が小さいのう。回復魔法はかけたし、死にかけというわけでもなかろうに……む、これは」


 一人の黒髪の少年を見ていた精霊の目つきが変わる。

 その目は鋭く、何かを読み取らんとするかの如く細められていた。


「これは……何と愚かな。しかもこの陰湿な気配は……あやつの痕跡か」


 精霊は憤りを感じさせるため息を吐き、眺めていた水晶を別の空間にしまい込んだ。


「直接見ないと判断はできぬが……ウェルドめ。いったい何を企んでおる」


 悪態をついた精霊の足元が歪んだかと思うと、波打つ空間に精霊は沈み込んでいった。


次話は明日投稿予定です。

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