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第三十一話 屋敷潜伏中の雑談

ブクマ登録、評価ありがとうございます!


第三十一話です。

今回は設定っぽい話が多めになります。

 後は誰にも見つからないように屋敷を出るだけだ。とはいえさすがに正面の門から出ることはできない。そうなれば塀を越えるしかないのだが……。


「さすがに日も落ちないうちに塀を越えるというのは目立ちすぎるだろうからな」

「なら、夜までは屋敷に潜伏しておくかい?」

「そうだな。目的は達したし、焦る必要はないだろう」

「そうだね」


 結局屋敷の中で夜まで潜伏をすることになった。


「この部屋なら何とか隠れていることもできそうだ」


グリンドル伯爵の私室から離れた位置にある物置のような部屋に陽が落ちるまで隠れていることにした。


「ところで、さっき聞きそびれたことなんだが……精霊騎士団っていうのはなんだ?」

「……精霊教が抱えてる騎士団のことよ」


 俺はメルカに話しかけるが、まだ機嫌が直っていないらしく、そっけなく返される。

 今はそっとしておいた方がよさそうなので、メルカではなくハイマンに尋ねてみる。


「精霊教や精霊騎士団について教えてくれないか?」

「別に構わないけど、君はほんとに何も知らないんだね」


 ハイマンから聞いたところによると、精霊教とはこの大陸中に信者のいる最大規模の宗教のことで、主に『塔』にいるという精霊を崇める宗教らしい。


「何故精霊を崇めているんだ?」

「それはこの大陸を覆う結界を維持しているのが『塔』にいる精霊だからだよ。この結界が維持されているおかげで、外界の強力な魔物や魔人族から人類が守られているわけだからね」

「そうなのか」


 どうやら、人類が暮らしているのは大陸の一部で、結界に守られている範囲だけらしい。全く知らなかった。外界に強力な魔物等がいて危険なら確かに結界に、ひいてはそれを維持している精霊にすがるというのも納得できる。

 そしてその精霊がいる『塔』を守護する役目を担っているのが精霊騎士団らしい。彼らはどの国にも属さず、精霊教が抱えている固有の戦力で、主に『塔』周辺の守護や教会の守りを行っている。


「まあ、『塔』の守りは精霊騎士団だけが担っているわけじゃないけどね」

「どういうことだ?」

「塔の中には外界にいるレベルの強力な魔物が徘徊していて、普通の人間が立ち入ってもすぐに殺されてしまうらしいんだ」

「なるほど。なら、勝手に入って死人が出ないようにするために精霊騎士団とやらは見張りとして立っているんじゃないのか?」

「まあ、その可能性もあるね。ただ、すでに三人ほど塔を攻略している人間がいるから、やっぱり塔への侵入自体もできれば防ぎたいという考えもあるんだろうと僕は思うけどね」

「そうか」

 

 すでにこの世界における七つの『塔』の内三つは攻略されてしまっている。ハイマンはそう言った。


「攻略されるとどうなるんだ?」

「攻略して精霊と契約した者は人知を超えた力を得る。その代りに『塔』すべてが攻略されると大陸を覆う結界が消える」

「それは……マズいだろうな」

「マズいなんてもんじゃないさ。人類は間違いなく滅亡するね」


 どうやら『塔』の攻略というのは想像以上にやばいものらしい。まあ、記憶を取り戻すために必要はなさそうだから今後、世界を巡ることになっても『塔』には近づかないようにしよう。


「しかし、今日行われるという晩餐会とはどれほどの規模なんだろうね。先ほどからひっきりなしに貴族らしき方がやってきているが」


 ハイマンはカーテンの隙間から外を覗いて、そんなことを言う。

 そんなにたくさん人が集まるという事は、つまりグリンドル伯爵とやらはなかなかに影響力のある人物なのだろうと思われる。もしこの作戦が成功すれば、うまく奴隷からは抜け出せるが、グリンドル伯爵を敵に回すことは間違いないだろう。できるだけ早く彼の影響力が及ばない地まで逃げた方がよさそうだ。


「どうしたんだい?」

「いや、奴隷身分から抜け出せたら、すぐに帝国から出ていこうと思ってな」

「それがいいだろうね。僕らは奴隷でありながら主人を欺いて逃げるわけだから、きっと帝国中でお尋ね者になってしまうだろうし。そうなったらもう帝国にはいられないからね」

 

 やっぱりそうなるよな。まあ、記憶を取り戻すためのヒントになりそうなものは幸いこの帝国にはなさそうだからさっさと出ていってしまうに限るな。とりあえず、最初に目指すべきは元ミスリク王国の戦場となった場所や、ハイマンが言っていた俺の剣術のルーツかもしれないランス王国などになるのか。早く記憶を取り戻すためにも奴隷から脱出しなければ。


「あんまり外を見ていると、気付かれるわよ」

「そうだね。そろそろやめておくよ――っと、おお、なんて美しい。彼女はどこの貴族のご令嬢だろう」


 せっかくのメルカの忠告もハイマンには無駄に終わってしまったようだ。あるいは、ハイマンを魅了してしまったその貴族の令嬢が悪いのかもしれない。いったいどんなに美人なのかと思って俺もカーテンの隙間から外を見てみる。玄関口へと続く道を歩いていたのは確かに美人だった。そして俺はそいつのことを知っていた。


「リスタ……!? なんであいつが」

「おや、クロン。君の知り合いかい?」

「知り合いなんてもんじゃないが、知ってはいる」


 俺のことをさんざん殺そうとしてきた女だ。見間違えるはずもない。俺がこの世界で唯一憎んでいるといっても過言ではない人物だ。


「どうやら訳ありみたいだね。でもここであまり感情を乱さない方がいい。気取られるかもしれないからね」

「……そうだな。スマン」


 今はあいつのことは忘れよう。いずれ復讐はするつもりだが、そんなことは今考えるべきことではない。記憶が戻ってからで十分だ。今はとにかくビスカの危機を救って奴隷身分から解放されることが先決だ。


 それから陽が落ちるまで同じ部屋に潜伏をつづけたあと、俺たちは晩餐会で盛り上がる東側とは正反対に閑散とした西側の塀を越えてグリンドル伯爵の屋敷を後にした。


次話の投稿予定は明後日です。

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