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第二話 気が付けば檻の中

第一話(という名の導入)があまりにも短かったので第二話も投稿します。

よろしくお願いします。

今後は毎回2000字目標に書いていこうと思っています。

 冷たくて暗い。

 俺はどうなったんだ。

 徐々に意識が覚醒していき、周囲の状況がぼんやりと視界に映し出されていく。

 薄暗い鉄格子の中には俺と同じように人が捕まっていた。手には錠がはめられ、身ぐるみを剥がされている。


「ここは、どこだ?」

「捕虜の収容所だよ」


 すぐ傍にいた男が答えてくれた。


「どうしてそんなところにいるんだ?」

「あん? おまえさんは戦場ではトランス状態になって意識が飛ぶ性質なのかい?」


 戦場というのは……意識を失う前にいたあの場所のことか。そういえば戦いが始まってからの記憶がないな。


「まあいいさ。教えてやるよ。俺たちの祖国、今じゃ亡国となっちまったが、ミスリク王国は先の戦争に負けた。それで兵士だった俺たちはめでたく敵さんの捕虜になっちまったわけだ」

「俺はミスリク王国とやらの人間ではないんだが」

「おや、おまえさんは傭兵だったのかい? だったらつく方を間違えちまったな。お気の毒に」


 男は同情に似た視線を向けてきた。

 別に傭兵というわけでもない。しかし、自分が何者だったのかを思い出そうとすると何故か頭が痛くなる。

 そんな中でもなんとか思い出せた単語を訪ねてみる。


「日本……という場所、あるいは国を知っているか?」

「二ホン……? 聞かない国名だな。それともどこかの土地を指してるのか? どこら辺にあるんだい?」

「わからない」

「なんだそりゃ」


 男は呆れたような顔をしている。

 そんな顔をされても、俺だって思い出せたのが日本という単語だけなのだから仕方がない。

 

「ところでこれから俺はどうなる?」

「さあな。奴隷にされて帝国人に飼われるか、帝国の強制労働施設にぶち込まれるかだろうな」

「そんなことは国際法で許されないだろう」

「コクサイホウ? なんだそりゃ?」

「え……と、なんだったか」


 つい反射的に出た言葉の意味が自分でもわからなかった。本当にどうなっているんだ。


「おい、お前。そう、お前だ。今すぐここから出ろ」


 急に兵士がやってきて俺を指差し、命令してきた。


「おや、おまえさんが先に呼ばれることになったな。せいぜいまともな帝国人に飼われるように祈っときな。それ以外は地獄だからな」


 男が吐き捨てると同時に俺は兵士に連行されていった。通路を進んでいくといくつもの檻があり、その中には俺と同じような素っ裸の捕虜が収まっていた。

 誰もこちらに視線をよこさない。これから先の絶望に頭を抱え、震えている者や、放心状態の者さえいる。

 いよいよ俺は、現状がとてつもなくやばい状況であることを実感し始めていた。


 檻があった建物を出ると眩しい日差しに目が眩む。

 徐々に視界を取り戻していくと、そこには信じられない光景が広がっていた。

 中央の台を半円状に囲う人々。彼らは一様に高級感のある身なりをしていた。対照的に台の上に晒された男は素っ裸に手と足に鉄の錠をはめられ、一人の兵士に跪かされている。

 ここでは、まるでオークションの様に人が、人に買われていた。

 そして待機列に並ばされた俺も、おそらくここで品物として買われることになるのだろう。

 強制労働か、帝国人に飼われるか。

 どうやら俺は帝国人に飼われる方になるらしい。 


 やがて俺の番がやってきて、待機場所から見てきたのと同じように、衆人環視の中で跪かされて、競りが始まる。幾人かが札をあげていたが、さして盛り上がることもなく、俺は一人の派手な衣装に身を包んだ肥満男の下に飼われることになった。


次話の投稿予定は2016年11月29日(火)です。



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