表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時にはダイブ-photraveler-  作者: 沢岸ユイト
13/24

第二章 侵入、月詠堂。

2016年6月10 夕月 2nd



10台ほど駐車出来るガレージ。今、駐車してあるのは搬出用のトラックと黒井さんと忍さんの車だけだ。

まずは、ポラロイドカメラを取り出して月詠堂の裏口を写真に収める。よし、これで第1ミッションはクリア。失くさないように写真を手帳に挿む。

そして裏口を鍵で開けて、俺は気付く。しまった!裏口から5階住居スペースへの鍵はあるが、店舗に続く鍵は持っていない。まさか、不用心に鍵が開いているはずもないが試してみる。開くわけない。

そうだ!車庫だ。店舗の搬入出を兼ねる車庫は広い。車が6ほど台止められるスペースには社有車のベルファイア、爺ちゃんのプリウス、そして俺のバイクが置いてあるだけだ。車庫に続く鍵は持っている、そして車庫から店舗を繋ぐ搬入出用シャッターがある。生憎シャッターの鍵は持ち合わせていないが、扉を破るよりはなんとかなりそうだ。車庫内の物置に工具入れがある。そこにバールが入っていたはずだ。

物置を開けようとするが、鍵が掛かっている。こんなものにまで誰が!…とその相手に思い当たる。きっと几帳面な忍さんだろう。日向にもらったマルチツールで物置の鍵をこじ開ける。開いた!バールもある。これで今度は店舗に続くシャッターをこじ開ける。よし!ここまで10分かかってない。まるで不法侵入者のように店舗に入り込み、1階ギャラリー奥のモノリスに触れて、秘密の階段を出現さす。そして、聞き耳を立てながらそっと降りていく…。



あ~、7年前の話を母と俺がしている。確か、懐中時計の話をして母が号泣するとこで登場だったはずだ。

さて、そろそろかな。うん、沈黙で気まずい空気が流れているのを確認し、俺は階段をさらに降りていく。そしてあのセリフを言う。


「暫く話続けるんは無理やし、ここからは俺が説明するわ。」


お~、皆、驚いたように俺に注目して……黒井さんの手がスーツのポケット?ちょっと何を取り出そうとしてんのかな…?隣の綾瀬さんも同じくホルダーから銃のようなものを取り出そうとしている…俺は慌てて叫ぶ!


「ちょ、ちょっとそんな驚かんといて。黒井さん、怖いわ~。忍さんも落ち着いて。俺も初めての経験なんやから。今でもちょっとびっくりしてんねん。まだ10日しか経ってないから。」


旅人たびと君?ダイブしてきたのか?」


黒井さんが胸元に隠したものを出さずに言った。


「そう、初ダイブ。10日後から来ました。」


泣き崩れる母以外がその一言を聞いて、落ち着きを取り戻す中、俺を見てアホそうな顔で驚いたままの自分がいた。おいおい、もうちょっと、しゃんとしてくれよ、そのマヌケ面。


「俺が説明するんはフォトラベルの基本条件やねん。」


少し自慢気な口調になったが待っていると、キター!!!俺からの質問。


「はい。その質問待ってました~!」


なんか、自分の思う通りに事が運ぶ気がして気持ちいい。優越感に浸りながらも俺はダイブに関する説明を始めた。足りない箇所は途中から落ち着いてきた母も補足してくれた。時空跳躍ダイブの9条件を話している頃には、少し自分に酔っていたかもと思うくらいスラスラと話せた。特にこの9条件は俺がダイブする上でも必須のものだから頭に入っている。


「そして最後に9番目の条件がタイムパラドックスという事象は確認されていないということ!これ9つの条件が基本条件ねん。」


母、忍さん、黒井さんも頷いている。説明を言い終えた俺に黒井さんが労いの言葉をかけてくれた。そんな言ってもらわないでも…。


「かまへんよ。俺も19日まで世話にならなアカンから。」


俺が答えると、10日前に思ったことと全く同じことを目前の俺が言ってて、自然と声に出してしまう。


「そやねん。俺も同じこと言うた…ってオマエ俺やんけ!」


そして黒井さんがタイムパラドックスの補足説明をし終えたのは日付もかわるかという時間であった。


「あと、爺ちゃん。ごめん、ここ入る時に搬出入用のシャッターと物置の鍵を壊してしもた。これからこんなこともあると思うから、店の合鍵を俺にももらえへんかな…壊してごめんなさい。」


とりあえず、誤ったその言葉で時間も遅いので今日の会議はお開きとなった。

みんなが裏口から帰った後、爺ちゃん、母、そして2人の俺は5階の居住スペースに上がった。幸い、店の鍵はスペアがあったらしく、直ぐに頂戴した。表玄関、裏口、搬出入用シャッターの鍵を俺はキーホルダーにつけた。鍵ゲットだぜ!

一瞬、この鍵をもう一人の俺に渡したら、シャッターは壊さなくて良くなるんじゃないか……などの考えも及んだが、ややかしいことになったら嫌なので止めておこう。

俺は父の書斎で寝ることにした。ダイブ初日、なんとかこれで無事終了だ。





2016年6月11日 弓張月 2nd



 朝、起きてリビングに向かう。母がキッチンで朝食の用意をしていた。


「おはよう♪え~、貴方はどっちの旅人?ほら、偉そうに母親ぶるつもりは無いけど、さすがに10日間の差は見分けつかないでしょ…。」


「ああ、おはよう。未来の方。爺ちゃんは?」


「お義父さんはもう1階に降りられたわ。きっと貴方が壊したシャッターを見て修理の依頼でもされてるんだと思う。それと既に知ってるかもしれないけれど、貴方は11時から黒井さん、忍ちゃん、そしてわたくしと4階でミーティングね♪OK?」


俺は頷き、そう言えばそんなこと言っていたなと思い出す。そこへこの時点俺が起きて来た

「おはよう。」…あ、かぶった。


 朝食を摂っていると、今日の予定を聞かれたので答える。


「あ~どうしよかな…と言いたいとこなんやけど。」


と言いながらミーテウィングの件を伝え、日向からの電話があることを教えてやる。それが既定事象デフォイベや。オマエは今日、日向とのデートを楽しんで来い。なのに、コイツは何故か俺を睨んでやがる。ん?この時、俺は何を思って自分を睨んだんだ?…覚えがないな。


ま、いいか…「ほら、日向から電話やで。」


そう言うと、タイミングよく電話が鳴る。そうそう、ええ天気やねんから今日は楽しんで来たらええねん。日向と会えば、クールダウンさせてくれるわ。俺は微笑ましく電話をしている自分を見ていた。すると、電話を終えた俺は今日、自分はどう行動したらええかと聞いてくる。こいつ、アホか…そんなこと自分で考えろよ。好きなようにしろと呆れ顔で答えてやった。でも、これだけは素直に頼んでおこう。


「悪いけど、暫く服貸してな……。」だって、着替えは持ってきていないし、それに俺の服でもあるんやから構わへんやろ。


朝食を終えると、この時点の俺はバイクで出かけて行った。俺は部屋で服を借りてから母と4階に降りると、既に黒井さんと忍さんが月詠写真研究所のテーブルに座っていた。

2人と挨拶を交わし、テーブルにつくなり、忍さんが淡々と言う。


「鍵、渡しておく。入口と奥にある写真ログ保管庫の鍵。保管庫の指紋認証登録は既に済ませておいた。今後は自由に出入り可能。但し、ダイブする時は必ず、我々NIIIの誰かに報告すること。勝手なダイブは基本認めない。そして、高校卒業後、NIIIに入所してもらう。」


勝手に俺の進路が決まってしまっているではないか…爺ちゃんが言ってた「旅をしろ!」ってのは時間跳躍ダイブのことかよ。そりゃ、とてつもない旅だわ。


「それと、君には明日から19日まで研修を兼ねて、車で綾瀬と東京のNIII本部に行ってもらう。車での移動は万一、君が知人に出くわすことを避けるためだ。向こうで他の時対課メンバーも紹介する。室長との面談も予定されている。それと、既に知っていると思うが車の免許も取得してもらう。幸い、本部にはテストドライブコースもある。1週間あれば大丈夫だろ。」


「そうですね。車に乗って帰って来てましたから…。」


「そうだった。結果は君も知っているんだったな。良ければ、20日までの出来事を聞いてもいいかい?もちろんプライベートなことまでは言わなくていい。関係すると思うことがけで構わない。」


黒井さんはそう聞いてきたが、大して何も起きていない。俺がレクサスRXを運転して帰ってきたこと。速水雷太さんと豊川由美子さんが着任したこと。母が、日向にダイブ能力をバラしたことを告げた。

それを聞いて母は未来の自分の行動とは言え、すまなさそうにした。


「そう?由美子がここに来るんだ?」


「養成所で一緒やったって聞いた。」


「そうよ。わたくしに初めて出来た友人よ♪」そして軽くウインク。



俺は以外に機関が未来に起きたことを無理に詮索しないことを不思議に思っていた。


「NIIIってダイブ能力を活かして巧く未来を動かすみたいなことをしないんですね?」


「旅人、そうじゃないのよ。機関は未来を変えることが単純で簡単なことではないとを知っているだけなの。未来を変えようとすると、その作業が大きければ大きいほど世界の辻褄合わせの振り幅が大きくなるのよ。そっちの方が恐ろしいの。わたくし達、人間にできることなんてちっぽけなことなのよ。Default Eventを無かったことに出来ない。それは例え、その事象を誰も目撃していなかったとしてもよ。覚えておきなさい、そう歴史は簡単に覆えさせてくれないのよ。」


母は諭すようにそう言った。


「未来に起きる出来事を知れば知るほど、それに干渉したくなるのが人間の本性。それでもキャシーさんが言ったように結果的に未来を変えることは出来ない。だから機関は無理やり詮索して知ろうとはしない。それが最善だと信じるから。」


忍さんも思うことがあるのだろうか、その言葉は凄く重かった。


 その後、黒井さん、忍さんからNIII(国立情報調査研究所)の組織説明があった。基本的な話は母と父の出逢いで少し聞いてはいたのでスムーズに話は進んだ。


「黒井さん、政府にとって時間跳躍はトップシークレットな扱いですよね。何故、政府直轄や警察庁の組織化じゃないんですか?」


「うん、そうだね。政府機関の中でもプライオリティのかなり高い秘匿情報に入る。一番重要視されたのが研究予算なんだ。様々な研究と今後ダイバーをサポートする体制を維持していくとなると莫大な費用がかかる。そこに目を付けたのが元々は科技庁と文部省が推進していたNIIIなんだ。現在は文科省の数ある研究所の中でも、比較的隠れ蓑としては好都合だったんだよ。政府直轄とか警察庁の研究所だとあからさまだろ。カモフラージュとして文科省は悪くない選択だったんだよ。」


講義は昼食を挿んで、夕方まで続いた。

18時過ぎにこの時点の俺が帰って来た。憑き物が落ちたかのように晴れやかだ。


「楽しかったやろ?俺もそうやったし。今日は日向に感謝せなアカンな。プレゼント、何かと便利やぞ。」


日向からのプレゼントが無ければ、物置を開けれなかったかもしれないからな…。


俺が不思議そうな顔をしている。コイツも何かと不安なのだろう。伝えたいこと、話し合いたいこともあるが、全ては自分で経験するのが一番だ。結局はその時がやってくる。やることは同じだ。明日から東京に行くことを伝え、そんな心配することはないと励ましておいた。今朝と違い睨まずに、笑顔を返してくれた。



この作品はフィクションです。現世界線における実在の人物や団体、事件などとは一切関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ