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「お前には、これから俺と一緒に鬼ヶ島へ行ってもらう。嫌だと言っても連れていく。引き摺ってでも連れていく。そしてそれまでの道中、金銭を稼いでもらう。店から小銭をちょろまかそうが、歩いている人の懐から財布を抜き取ろうが、死にそうなヤツを踏み倒し財布を奪って来ようが、手段は選ばん。但し、犯罪チックな事をすれば、俺は赤の他人になる。素知らぬ人だ。見知らぬ猿だ。わかったか? わかったな?」

『こ、この人、最悪だぁ! 提案された稼ぎ方が全部犯罪じゃないか! 犯罪チックなんて可愛い言い方をしたけど、チックなんて生易しいものじゃないじゃないか!? しかも鬼ヶ島に行くだって!? そんなの死にに行くようなものじゃないかぁ!』


 猿にとっては悪夢の連続であった。ただ少し、ノロマな蟹をからかってやろうと、青い柿を投げ付けただけなのに、蜂以外は生き物でもない物に襲われて、命の九割を置いてきたのだ。そんな猿に金がある訳でもなく、偶々通り掛かった道で、一人の怪しい赤子を見付けたのである。暫く観察し、早々に立ち去ろうとしたら捕まり、脅され、下僕にされ、リードで繋がれ、犯罪を強要され、鬼ヶ島迄行かなくてはならなくなったのである。これを悪夢と言わずして、何と言えば良いのだろう。これを不幸と言わずして、何と言えば良いのだろう。そんな胸中の猿であった。


「あ、お前はさっきの猿!!」

「え? え?」

「ほぉ……。既に知り合いであったか」

「知り合いなんかじゃありません! 桃太郎さん!! コイツは僕の目の前から金を奪って行ったんですよ!!」

「え? えぇぇぇ!!」

「ほぉ……。なれば盗人ぬすっとか……。俺の下僕に成り済まし、果ては命まで奪うつもりでいたのだな? 鬼の手先の者か!?」

「えぇぇ!! どんな飛躍? どんな想像力? 何をどう捉えたらそんな解釈が出来るようになるんですか?」

「ええ、きっとそうですよ桃太郎さん。鬼の刺客ですよ。桃太郎さんが鬼ヶ島に向かっていると聞いて、鬼が刺客とわからないように猿を送り込んできたんですよ!」

「成る程。だからあんなにあっさりと捕まったのか。成る程成る程。俺に侍の話など持ち掛け、更に自分から下僕になろうと言うのだ、おかしいと思ぉておったわ!」

「え!! おかしい! おかしいですよ。その話! オイラいつ、あっさりと捕まりました? お侍さんですか? って聞いただけですよね? 下僕にしたのもあんたですよね? さっきオイラを鬼ヶ島迄連れていくって言ってましたよね? 引き摺ってでも連れていくって言ってましたよね?」

「それも全て含めてお前の罠だったんだろ?」

「猿ですからね! 伊達に猿知恵なんて言われませんからね!」

「と言うよりも何なんだ君は! オイラを盗人呼ばわりして、この人の言葉を追従して! 君はオイラに何か恨みでもあるのか!?」

「ある!! 金の恨みだ!! そして猿だ!」


 桃太郎と猿、そして、犬が待ち合わせ場所にて落ち合った際、いきなり猿と犬が言い争いをし始めたのである。桃太郎も暇潰しにと少し参加してみたのだが、どうも犬と猿は本能的に仲が悪いようである。が、仲裁するのも面倒なので、事の成り行きを見守る事にした。但し、冷やかしは忘れない。


「え!! 猿は関係ないよね!?」

「いや、猿は重要だ!」

「どうして?」

「そりゃぁお前、お前らが犬と猿だからだろ」

「って、何であんたはさっきから、話に油を注ぐような事ばかり言うんですか!?」

「おい! 鬼の刺客!」

「違うって!!」


 無意味に腹を空かせる行動は、飽きる事なく続いていく。そして桃太郎はそんな喧騒を子守唄にして眠りに就いたのであった。


 犬猿の仲……。仲良くは無いのか……。七月最後ですね。

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