表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

「ちょっ……って、待ってくださ――」

「何を待つ?」

「桃太郎さん……。今、とんでもない事をさらっと言いませんでしたか?」

「何か言ったか?」

「え? 鬼ヶ島がどうとか……」

「ああ、鬼ヶ島ね。そうだぞ。鬼ヶ島に行くんだぞ。もう拒否権は無い。決定事項だ。俺が叩き付けられたこの抗いようのない現実と一緒で、お前の鬼ヶ島行きも決定だ!」


 当然とばかりに捲し立てる桃太郎に驚愕の視線を送りながら、犬は、決定なの? と自分に叩き付けられた現実から目を背けたくなったが、いつの間にか付けられた目に見えないリードによって、完全なる桃太郎の支配下におかれる事になってしまっている。確か、意地悪なお爺さんに宝のある場所で鳴けと言われ、そんなものわかる筈もなく、適当な所で鳴くと、蟲が沢山出てきて殺されたのだ。そんな僕を可哀想だと言って火葬してくれたお爺さんの役に立とうと、季節外れの桜を僕の身体で満開にすると、また意地悪なお爺さんがきて、真似をしようとするから、僕は桜なんて咲かせずに灰のまま漂っていた筈だったのだ。それなのに、気が付けば、目の前には見知らぬ赤子。しかも言葉を話す。己を桃太郎だと名乗り、これから鬼ヶ島へ行くと言う。勝手に行けば良いじゃないか! とは思うのだが、いつの間にやら付けられた目に見えないリードで、桃太郎から離れる事が出来ない。そしてあの言葉。【俺が叩き付けられたこの抗いようのない現実と一緒で――】この赤子は、どのような運命の下に生まれてきたのだろう? と、少し興味も出たのだったが、やはり鬼ヶ島である。鬼が住む島鬼ヶ島。鬼の本拠地、鬼ヶ島。桃太郎が何故鬼ヶ島に行かなければならないのか? それは知りたいような気もする。然しだ。


「どうして僕まで一緒に!!」

「つべこべ言うな! もうこうなったら運命共同体だ!! 欲しかったんだろ? 用」


 反論など聞いてはもらえず、自分が用を求めた事を逆手に取り、半ば強制に? 否、完璧強制に鬼ヶ島攻略の仲間にされたのだった。ただ、僕みたいな犬を連れて行くより、人間の戦闘屋さんを連れて行った方が絶対役に立つと思うんだけどな……。と言いたくなったが、ぐっと堪えた。何故なら、もしそんな意見をすれば、戦闘屋のスカウトの為に、自分も連れて行かれる事が目に見えて明白だったからである。


 こうしてオトモーを連れる事に成功した桃太郎は、犬に鬼ヶ島の場所を聞きながら、鬼ヶ島を目指すのであった。もし犬が鬼ヶ島へ行きたくないが為に嘘を言っている可能性もあるのに。もしかしたら、犬も鬼ヶ島の場所を知らないかもしれないのに。そんな事に疑問を抱かずに、桃太郎は犬と鬼ヶ島を目指す。因みに、この犬、名をポチと言うのだが、それは生前の名だろう。と、桃太郎はポチの事を犬としか呼ばなかった。それにはポチも少しばかり桃太郎の事を好意に思ってしまったのだった。


 生前の名。死後の名。同じであっても当然であろう。然し乍、生前の名はお爺さんが名付けてくれた大事な名前だった。だからこそ、その神聖な領域に土足で踏み込んでこない桃太郎に好感度を上げたのだ。


『うん。わかったよ。これからは桃太郎さんの犬だ!!』


 一週間……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ