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蘇生

 ジジイの投げ付けた刀が月光という最強の刀だった。そんな事実も知らずに持っていた桃太郎は、もしかして既に自分はチート街道を歩いているのでは? と錯覚し始めていたのだが、そんな桃太郎の前に、刀が月光であると断言した親父が……まだそこにいた。


「で? 何の用?」

「え? 何かいきなり強気になっていないかい?」

「俺、鬼ヶ島に行かないといけないから」

「あ、そう。って言うと思った!? 月光だぞそれ! 子供の玩具じゃないんだぞ!」

「これはジジイの形見なんだ……。手渡す訳にはいかない」


 さらっと息をするように嘘をつく桃太郎。そんな桃太郎に食い下がる親父。然しこの親父、悪人でもないらしい。ただの悪人なら、赤子である桃太郎から月光を取り上げて逃げれば良いだけなのだから。それをしないだけでも、悪人ではないと言えるだろう。そして親父と桃太郎の禅問答が続き、苛立ちを感じた桃太郎が、月光の鞘で親父の蟀谷こめかみを打ち抜いた事でそれに終止符を打った。ただ、これでは桃太郎がただの悪人になってしまうのだが。


 森の中という事もあり、人目の無い所だった為に、桃太郎は親父にごめんなさいをしてから、その場から静かに立ち去った。もうそろそろ日も暮れる。だから、桃太郎は宿を探そうとして、金を持っていない事に気付き落ち込み、武装禁止令がある事で刀を携えている自分を恨み、仕方なく、夜営(野宿)をする事にした。


 次の日、顔にかかる粉の様な物を不快に思いながら目を覚ました。灰色をしたその粉の様な物。……、否、灰である。何故、顔に灰がかかるのか? 疑問に思いながら起き上がると、その灰の中に一つの意思のようなものを見つけ出した。それは桃太郎の能力なのか、月光の能力なのかは不明だったが、その意思のようなものを具現化させると、一匹の犬に変化した。


「お爺さん!!」

「誰がジジイだ!!」

「……」

「……」

「って、あなた誰ですか!?」

「桃太郎だ」


 姿を現した犬が人語を話す事には少し驚いたが、赤子の自分が話をしているのもあり、それは明後日の方へ投げ飛ばし、自分の名前を誇らしげに胸を張って答える。


「それで、その桃太郎さんが僕に何の用ですか?」

「うん? 用? うん? 無いな」

「え?」

「どうして驚く?」

「用、無いの?」

「無い」

「……」

「どうして黙り込む?」

「用も無いのに……」

「うん?」

「どうして……、僕を生き返らせたりしたんですか!?」


 犬は死んでいたのだった。死して尚、意思を宿していたのだった。それを桃太郎が具現化したのだ。怒るのも当然である。用も無いのに呼び出された方としては、堪ったものではない。それは安易に桃太郎にも納得出来た。そして、納得出来てしまったが故に、犬に無謀な要求をしたのだった。


「俺と一緒に来い。俺と一緒に鬼ヶ島へ行くぞ!!」


 と。



 やっと、仲間①を獲得。でも、桃太郎、なんか性格変化してませんか?

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