ペチュニアの咲くころに①
人に心を開かないカル、人に興味を持たないリリ。
そんな二人が出会い、新しい感情を知っていく。そんな物語。
「今回は、数名の部隊分かれてもらう。お前たちが担う仕事は、狙撃兵の発見、および殲滅。目立たず、ネズミのように動け。一時間後、軍隊が迎えに来る。それまで各自準備し、二、三人に分かれてろ。」
指示者であるロニー・ノーマンは、淡々と機械的に言い終えた。
外へ連れ出され、軍服に身を包んだ数名の少年少女たちは、突っ立ったまま、なんの疑問も抱くことなく、その言葉を受け入れる。
まじめな顔をして話を聞く子、つまらなそううに話を聞く子、手遊びをしている子、ぼーっと空を見ている子。その聞き方には個性があった。
「いいか、リリ。くれぐれも、目立たないことだ。」
名指しで注意してくるノーマンに、腹を立てたリリは、そっぽを向き、ふらふらと歩き出した。
「・・・・・・はやくたたかいたい。」と呟いて。
そのまま集団と離れ、一人歩いたリリは、軍服をまとった数人の兵士を見つけた。今回共に戦うとノーマン教えられた軍服に身を包んでいたが、こそこそとした動き、リリは彼らを敵軍と判断した。
リリは知能数こそ低いが、こういうことには敏感だ。口角を上げながら、敵軍の死角に入り、息をひそめる。ナイフを両手に持つと、最高に興奮した。敵はおそらく8人。どの兵士もいかつい体格に、重厚な装備を身に着けていた。
リリの身長は129cmと、幼いころより投与された薬のせいか、周りと比べてかなり背が低い。八対一ではさすがに、厳しい。そう考えたリリは、不意打ちにすべてを掛けることにした。
息を殺し、少しずつ獲物に近づく小さな姿は、まるで猫のように無駄がない。
心の中でカウントし、敵軍のすきを見つけたリリは、一気にナイフを振り上げ、駆け出した。
ぐわっと驚いたように声を上げるも、その言葉すら言い終わることができず、頸動脈から血を流し、倒れこむ。返り血がリリを汚した。
「いーち・・・・・・」その声に気づき、振り向く男も、また振り向く前に、血を流す。
「にー・・・・・・。」笑顔で返り血を浴びる小さな姿は、もはや、人の子には見えなかった。
「さーん・・・・・・。」
三人目を倒したとき、リリは殺気に気づいた。慌てて振り向くも、敵はすでに発砲していた。
「うわっ。」
腕をかすり、若干血が出ている。その音に反応した敵軍は、ぞろぞろと集まりだした。
「むー。けっこういるなあ。」すねたような言葉とは裏腹に、その表情は楽しそうだった。
しばらく一人で応戦するも、その数から、リリは少なからず疲弊していく。自分の血なのか、返り血なのか判断がつかなくなったころ、突然銃声がなった。リリは一瞬、自分が撃たれたのだと覚悟したが、倒れたのは敵兵だ。
「!?」
リリが弾の飛んできた方を振り返ると、そこには、銃を構えたままのカルが立っていた。カルがきてもうひと月ほどになるが、結局リリは一度も声を掛けていなかった。
赤く、大きな目で銃を構え、もう一発撃ちこんだ。またしても敵の眉間を直撃し、一撃で倒す。その距離は目算で25mほど。とてもただのハンドガンで眉間を二度も狙える距離ではなかった。
その実状にリリの気持ちは大きく高ぶった。