昔々あるところに_013
昔々あるところにモグさんという貧しい青年がおりました。
あるとき、モグさんは黒猫堂という骨董品屋の店先で、神社の模型をみました。
「お金がどんどん降ってくる。金運の神社『金降り神社』1/30スケールモデル。(本物)」とありました。参道や鳥居、賽銭箱、拝殿の隅々まで実に精巧にできています。腕のいい職人が、手間暇を掛けて作ったモノに違いありません。モグさんはそれを見るとほしくてたまらなくなりました。
カウンターに持って行って
「お金がどんどん降ってくる。金運の神社『金降り神社』1/30スケールモデル。(本物)というのは本当ですか?」
と聞きました。
「本当ダニャ」カウンターに座っていたのは黒猫でした。
「このお金がどんどん降ってくるというのは、嘘偽りない事実なんでしょうか?」
「嘘偽りない事実ダニャ」猫は言いました。
「売ってください。買います」
「にじゅうまんえんだニャ」
そうしてモグさんは大枚二十万円をはたいて、その『金降り神社』1/30スケールモデルを購入しました。
------------------------------
マンションに戻り、さっそく棚の上に設置しました。
モグさんは右手で柄杓を取って、水を汲み、それをかけて左手を清めました。
次に、左手に柄杓を持ちかえて、右手を清めました。
再びひしゃくを右手に持ちかえて、左の手のひらに水を受け、その水を口にいれてすすぎました。
すすぎ終わったら、水をもう一度左手にかけて清めました。
そのようにして作法に則って手と口を清め
神社の模型に向かって、二回深くおじぎをしました。
背中を平らにして、腰を90度折ったのです。
次に「二拍手」 両手をのばして手のひらを合わせてから、右手を少し後ろへ下げます。肩幅ほどに両手を開いて、柏手を2回打ちます。
パン、パン
再び、両手をあわせ、揃えて祈念をこめてから手を下ろしました。
最後に「一礼」 再び深くおじぎをします。
「どうかどうか、天からお金が降ってきますように、降ってきますように……」
もう一度祈りました
「どうかどうか、天からお金が降ってきますように、降ってきますように……」
するとどうでしょう。
天上から
ぱらぱらぱらぱら、ちゃりんちゃりん、ちゃりんちゃりん
ぱらぱらぱらぱら、ちゃりんちゃりん、ちゃりんちゃりん
とお金が雪のようにあられのように降ってくるではありませんか。
モグさんは足下に貯まったそのお札を一枚つまみ上げてみました。
それは紛れもなく日本銀行発行の、福沢諭吉先生の肖像の一万円札でした。
ただし、すべて30分の1のスケールでした。
あああああああああああああああああああああああああああああ