第1話【全てが終わる日始まる日Ⅰ】
SIDE[W]
とある教会、
孤児院を併設しているこの場所で、太陽が照りつける中、子供たちが元気に遊んでいる。
そのなかに1人の少女、
子供たちの保護者的立場なのか、孤児院の広場全体を見渡せる位置に椅子を置いて本を読んでいる。
緑色の長い髪、整った顔つき、スラッと背の高いスタイルのいい身体、
「美少女」と言っても過言ではない容姿である。
しかし、表情は寂しげであった。
「クレアお姉ちゃん、どうしたの?」
1人の女の子がその少女に話しかける。
「えっ?」
完全に不意をつかれ、少女は少し驚く。
「クレアお姉ちゃん、いつも元気なのに今日はどうしたの?
神父様もいつもは遊んでくれるのに、今日はお祈りしてばっかりだし。」
女の子が泣きそうな声で聞いてきたので、少女は女の子の頭を撫でながらそれに答える。
「今日は、1つの魂が神様のもとへ向かうの。
だから神父はお祈りしてるんだよ。」
「ふーん、そうなんだ。」
よく解らなかったのか、女の子はまた遊びの輪のなかへ戻っていった。
雲ひとつなかった青空が、淀み始める。
城下町
市場が並んでいるここでは常に多くの人でにぎわっている。
今日はあるイベントが行われるため、いつもより多くの人がいる。
「あら、ルクルーシャちゃん。久しぶりねぇ。」
市場での買い物帰りの主婦たちが、店番してる少女に声をかける。
ルクルーシャと呼ばれた少女はとても小柄な身体で、子供と言われてもおかしくない姿だった。
しかし短い白髪と氷のような表情がそれを否定する。
「こんにちは」
ルクルーシャは静かな声で、表情を全く変えず機械のように会釈をする。
「御両親が亡くなってから毎日仕事頑張ってるわね。
困ったことがあったらいつでも言ってね。」
主婦たちはそう言って彼女の前から去っていった。
ルクルーシャの耳に、主婦らの小さな話し合いがはいってくる。
「ルクルーシャちゃん、昔はかわいい子だったのに・・・。」
「やっぱり、両親をあの悪魔に殺されたから・・・・・。」
「でももう大丈夫よ。あの悪魔は今日で死ぬんですから・・・。」
空に淀み始めた雲は、照りつけていた太陽を覆い尽くす。