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序章
あるところに、2人の天才がいた。
1人の天才は、
幼い頃から自分の力を過信することなく、王国の騎士としてその名を広めた。
人々から「英雄」と呼ばれ絶大な信頼を得た。
もう1人の天才は、
その才能を人々から、ましてや自分自身も知ることはなかった。
名家に生まれたその天才は優秀な姉と比べられ、親からは度々暴力を受ける日々をおくる。
その天才は、親からの罵声や暴力に対して、憎しみや悲しみを表すことなく、ただただ無表情だった。
国の人々はその様子を気味悪がり、
「悪魔」と呼んだ。
それから数年後のある日、
「悪魔」と呼ばれた天才は自分の両親を殺した。
四肢を1つずつ斬り、苦しみ悶える2人に満足してから、その頭を潰した。
王国の騎士が到着したときその家の中は酷い惨状だった。
部屋中に飛び散った血、
隅で泣きながら震える姉、
そして、今までどんなときでも表情を変えることがなかった「悪魔」が、楽しそうに笑いながら両親の頭の残骸を踏みつぶしていた。
「悪魔」は捕らえられ、王国の牢獄で死刑を待つ身となった。