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第20話:魔法省襲撃Ⅳ



◆ ◆ ◆



 会議場を出た九名の『将校分隊』は、結子が結界を再構築するまでの僅かな空白を突き、魔法省本庁ビル七五階の非常脱出窓から飛び出した。


 航空魔法師である紫崎たちはそのまま空の領域まで高度を上げると、一足先に目的地である、『茶山機器・第一MAD工場』へと加速。


 千華たちは、着地の間際、重力転換魔法による斥力を用いて、落下エネルギーを打ち消した。地面へ緩やかに足をつけたと同時に、猛烈な速度で駆け出した。



 日常であれば往来盛んな主要道路は現在、警官たちによる避難誘導が完了し、中央管制システムによってエアカーも全車が退避を済ませていた。工場周辺のエリア一帯も閉鎖されたことで、完全に無人となった殺風景な道路を、地上組の六人は目にも留まらぬ速さで疾走する。


――上方に小さく見える三名をナビ代わりに、道路を駆け抜けてからほどなく、工場の正面ゲート前へと辿り着く。


「ご苦労」とひと声かけ、厳戒態勢でシールドを構える機動隊員の包囲を超えた先、開け放たれたゲートを通過し、深緑色の本棟からやや距離を取った位置に陣取った千華は、空へと視線を向けた。



 緊急通報システムにより展開中のドローンたちが飛び交う中、悠々と宙に立つ紫崎たち三名が千華たちの姿を確認すると、標準携行装備のハンドガンを屋上へと向け、一瞬の迷いもなく引き金を引いた。


 現象系統・三級攻撃魔法『音響爆発』を付与された弾丸が、屋上全体を覆い隠す遮蔽結界のヴェールをいとも容易く砕き割る。それを確認した歩兵組六人は、三階建ての工場の屋上へ、ひと飛びで到達。前方へ障壁を展開しながら着地した。



 敵は報告の通り、十名。しかしその内の二名はどういうわけか、すでに倒れ伏している――。残ったメンバーたちは一瞬の出来事に「何事だ!?」とばかりに、上空へ視線を投げた。


 遮蔽結界を担当していたであろう男二人が、ソニックランチャー(音速射出機)を構える男を守るように立ち塞がると、紫崎へと両のてのひらを向け障壁を展開。無情に放たれる銃弾にヒビを入れられながらも、必死の形相で修復し持ちこたえる。


その後方、焦燥に駆られた男が、《《手慣れた手際》》でそのソニックランチャーを紫崎、千華――でもなく、その遥か上空へと向けた。


弾頭が発射される直前、男が発動した加速魔法の幾何学模様エフェクトが重なり、爆発的な初速とともに残弾すべてを連射し吐き切った。


 断続的に降り注ぐ射撃により、ついに障壁が砕け散ると、二人の魔法師も力尽きたように膝をつき、上空を睨みつける。残りの五名は半ば自棄になったように、古風なハンドガンを千華たちへ向けるも、即座にその銃器の悉くが、上空からの射撃により叩き落とされた。


「日本語が通じるか知らんが、投降しろ。命までは取らん」


 千華が、なお抗戦の構えを崩さない《《白人種》》たちへと言い放った。


千華の言葉に、冗談や、欺瞞の色は窺えない。たとえテロリストとはいえ、抵抗を解くのであれば、それ以上の危害は与えない――それは彼女の揺るぎない自身の在り方であった。


 しかし、その言葉を受けた彼らの顔には、まるで死を前にしたかのような悲壮感が浮かぶ。


「間違いなく、身の安全は保証する」


敵が言葉を「上辺だけ」と受け取ったと察した千華は、軍事に少しでも精通していれば一目で理解できる、肩口に飾られた中将の証――金の三ツ星階級章を示しながら、最後通告を告げた。



「わ、分かった。投降する」


長い沈黙を破ったのは、彼らの最後方、守られるように立っていた立派な体躯の男であった。彼はソニックランチャーを敵意がないことを示すように慎重に手放し、手のひらを大きく広げ、流暢な日本語で降伏の意を述べた。


 すると、残る面々もどうすべきか迷ったように振り返るが、苦渋を滲ませた彼の力強い頷きを見るや、諦めたようにゆったりと手を上げていった。


「懸命な判断だ。姿勢をそのままに後ろを向け。立てないものはそこへ蹲れ」



――全員の武装解除を見届けると、千華は胸ポケットから携帯端末を取り出す。


『こちら、京都府警機動隊本部』


「当方、陸軍中将 赤崎千華だ。テロリスト十名を鎮圧。移送行動に移るため、SMATの派遣を要請する。座標は茶山機器、第一MAD工場本棟。繰り返す……」


『了解しました。即時、SMAT小隊を派遣します。警戒態勢のまま待機して下さい』



 この鎮圧には、上補家とその側近たちが出向いたのだ。無傷での制圧は当然だが、それにしても手応えがなさすぎる。捕縛した彼らの静かな態度も、諦めて大人しく捕まったというより、悲痛や絶望の色を帯びているように見える。


 まだ何か裏があると踏んだ千華は、警察組織の最高峰『SMAT(Special Magic Assault Team)』を護衛として使う、徹底的な態勢を選択していた。




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