第3章 議員連盟
議員会館で「超党派 選挙とソーシャルメディアのあり方を考える議員連盟」が正式に立ち上がった。呼びかけたのは自公の若手議員。立憲、改革保守、国民協和、革新、さらには令和や保守新党、チームきぼうの一部議員まで名を連ね、「オール党派」での船出を演出した。
記者会見でマイクを握った自民の若手は、こう強調した。
「インターネット上での誹謗中傷、フェイクニュース、そして陰謀論の拡散。これらは民主主義を歪める深刻な課題です。党派を超えて取り組む必要があります」
会場のカメラは各党の代表者を順に映し出す。立憲の海老原は静かに頷き、国民協和の加納はやや硬い表情を浮かべていた。テレビは「珍しい超党派の合意」と持ち上げ、翌日の新聞各紙も一面にはならずとも政治面に小さく「SNS議連、超党派で発足」と見出しを載せた。また、未来創生党は、自党抜きでの議連設立に抗議する声明を出したが、あまり取り上げられることはなかった。
議員たちは満足げに散会し、廊下では「とりあえず形にはなったな」と小声で交わす姿もあった。
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一方その頃、霞が関のとある庁舎。検察・警察・公安の担当者が、関係者限定の会合で机を囲んでいた。壁に掲げられたホワイトボードには、赤字でこう記されている。
- SNSアーカイブ化
- 戸別訪問の証言収集
- 秘書給与台帳の照会
“合せ技”のロジックを裏付けるための具体的手順である。まだ確定的な証拠は何一つない。だが、未来創生党の活動に的を絞る方針は既に共有されていた。検察の副部長が資料をめくりながら言った。
「まずは外形的な証拠を積む。事前運動として立件できれば、秘書給与は連座制に直結する」
静まり返った室内に、ボールペンを走らせる音だけが響いた。それは表の「勉強会」とは別の時を刻み始めていた。