井戸の世界で、悪を引き受けた彼女と“減らす正義”の彼

舞台は「井戸宇宙（ウェル・コスモス）」という地上の真ん中に穿たれた巨大な水竪穴の内部。ここで暮らす主人公マルヴィオル・ノクト（通称マル）は、表向きは水理士、裏では「災主の器」として世界の水を増減させる役割を持つ“悪役用の心臓”である。

彼の恋人は光正零（みつまさ れい）という「減らす正義」を担う水理士。零は過剰な水を奪い足りない水を呼び寄せる役割で、マルの胸の誓環（リング・ヴォウ）を回すことで水の調整を行う。

物語は、マルと零の間で進む正義と悪の境界、そしてそれぞれが背負う役割と感情の葛藤を描く。監視官ジャスティや救難潜水のエキスパート淵野戒も絡み、世界の水位を巡る緊迫した事件や未練の存在が表現される。

やがて「悪の仮面」が別世界へ流出し、マルは新たな役割や未来への決断を迫られる。二人の関係は、正義と悪の複雑な味を互いに味わいながら続いていく。


【主な登場人物】

マルヴィオル・ノクト（マル）
主人公。災主の器。水理士の表の顔を持つが、世界の水を増減させる役割を持つ。恋人は零。悪役としての自覚と葛藤を抱える。

光正 零（みつまさ れい）
マルの恋人。井戸の縁を守る水理士で「減らす正義」を担う。マルの誓環と連動し、過剰な水を減らす役割。几帳面で冷静。

ジャスティ・フォリオ
遠海の監視官。浸り過ぎた恋人たちの救出を使命とし、マルと零を監視する。軽口を叩きつつも重要な助言をする。

淵野 戒（ふちの かい）
救難潜水のエキスパート。水位の上昇を警戒し、緊急事態に対応する役割。マルの裏の事情は知らず、冷静で頼れる存在。

鏡 渚（かがみ なぎさ）
後編に登場。輪の内に現れる人物。零と過去の関係が示唆され、未練の存在としてマルと零の関係に影響を与える。