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ハッピー・テロリスト  作者: ウィザード・T
アナザーターゲット サレンダー・リーズン
28/36

パワード・スーツ

 ガシャン。ガシャン。


 そんな金属音が鳴ると共に、少年から青さが消えて行く。

 ついでに、重さもなくなって行く。そのはずだ。


 だが私やもっと若い兵士でも持てるほどには、個々のパーツが軽い。

 8歳前後の少年の上腕部、肩部などを覆うパーツの大きさは知れているとは言え金属を持ったにしては重量感がない。

 試しに右上腕部のパーツの重量を計らせてみた所、5キロどころか2キロもない。「ジェットエンジン込みで50キロにもならないかもしれないですね」

 指に内包されていた銃弾—————戦車の装甲を撃ち抜いた弾—————でさえも3グラム程度しかないと来ている。これは警察官が使う銃弾の半分以下だ。数そのものは多いがほとんど豆鉄砲の様な破壊力しかないはずであり、実際戯れに自分の手の甲にぶつけてみたがちっとも痛くない。手袋と言うか手甲部分から発射されていたようだが、となると実際極めて小型の発射口の出力はあの超小型ジェットエンジンのそれ以上にとんでもない可能性もある。解析して利用するなんて暇はない。


「敵軍の攻撃は」

「ありませんと言いたいのですが、こちらの軍勢が我々の敗報を知らずに攻撃をかけておりまして」

「攻撃されれば反撃するか…」


 私は総司令官などではない。あくまでも方面軍司令官に過ぎず、全軍を把握し動かす権限などない。いやあったとしても此度の大失敗で権限など雲散霧消しており、私の言う事など聞きはしないだろう。私のために時間稼ぎとかやるような首相を通り越した酔狂な連中はいないだろうし、いても数は知れているだろう。


 とにかくその間にも少年兵を少年兵たらしめていた装甲は次々と剥がされ、ついに体から青味が消えた。


 このちっとも厚みも重みもない金属装甲の下にあったのは、灰色のボディースーツ。


 少し触れてみた所こっちは厚みがあり、その上体に密着している。首の部分から手を突っ込んでみるが隙間が全くなく、首元から足の指の先まですっぽりと覆われている。皮膚呼吸できなさそうに思えるほどであり材質も何かわからない。

「これがあの装甲を支えていた代物なのでしょうか」

 ボディースーツはどこも濡れていない。あれほどの動きであれば発汗の一つや二つあっても良さそうに思えるが、少なくとも表面にはにじみ出ていない。

 首元に入れた手で何となくつまみ上げようとしてみるが、やはり強く密着しており剥がす事はおろかつまむ事さえもできない。

 つい先ほどCTスキャンに突っ込んだ際にも金属装甲の妨害により調べられなかった、その手触りからして布であるはずの代物が何なのか。濡れどころか焼け焦げもないその布。やはりと言うべきか錆びかけた粗末なカッターナイフを跳ね除け、虫も殺さぬ顔で人殺しを守っている。

 あちこち隙間を探してみるが、どこにもない。唯一ごくわずかに存在する首元のそれから調べてみると言う事になり、レーザーカッターにより灰色のボディースーツに挑む事となった。


「言っておくが肉体を傷つけないでくれよ」

「このボディースーツが傷つかないかもしれませんがね」


 金属でも斬れるほどのレーザーカッター、ある意味で我が国の技術の粋みたいな存在。

 これで勝てないならもう諦めると言わんばかりの研究員たちの物言いに、ないはずの良心をぶつけてみる。


 あの青色の金属とジェットエンジンと、このパワードスーツ。


 おそらくその三つだけで大量破壊兵器になってしまった少年兵の最後の砦、最後の兵器たる要素。



 その最後の砦に向けて振り下ろされると言うか投射される、レーザーカッター。


 だがその持ち運びには不向きな兵器の力は意外とすさまじく、簡単に最後の砦を破った。

 と言うか、陥落の仕方があまりにも特別すぎた。


「どうやらたまたまパーツの部分に当たったようです」

「あるいは元々外す時も装甲のようにその部分を狙って…とかあるのかもしれんがな」


 ちょうど手首の所を狙った結果最初は全く打撃を受けている様子がなかったのにいきなり緩み出し、そのまま手袋状に剥けて取れた。

 その後も上腕部、足首、ひざ上などをレーザーカッターでやって行くとパーツ状に脱げて行き、その部分以外には全く傷も何もない。要するに関節部分ごとになっているようであり弱点と言えば弱点かもしれないが、あの金属をまず破れないし破ったとしてもレーザーカッターを戦場に持ち込めない。

 とりあえず各部分を確保しパワードスーツの成分の解析を行う事となるだろうが、あれほどの負荷に耐えうる以上我々の知る繊維でない事は間違いない。と言うかもしこうしてレーザーカッターと言う攻撃を受けてもなお母体だけは守ろうとする事自体生半な話でははなく、技術力の差を思い知るには十分すぎた。

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