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ハッピー・テロリスト  作者: ウィザード・T
ターゲット4 リビング・ジェイル
20/36

ロッテン・ウッド

 石田光江の親は、父母共に中流家庭そのものである。

 彼女が関原高校に入ったのは、全く彼女の才能と努力の賜物である。

 

 そんな彼女が本田勝弘と出会ったのは、全くの偶然でしかない。


 それも、早川秋絵でもどうしようもない偶然だった。



(なぜ私は本田様と同じ場所に…!)



 本田と同じマンションの、同じ階の、たった二部屋しか離れていない所に、わずか三時間だけ遅く生まれた。



 それが、石田光江である。 



 そのまま幼稚園も小学校も中学校も同じ場所に通い、そして高校もと言う次第だ。

 ただ関原高校は公立ではなく私立でありスポーツも強く偏差値60越えの名門校で秋絵のような人間が通う程度には金持ち校であり、二人が通えたのは勝弘も光江も学費免除を許される特待生であったからだ。


 なればこそ、成績を下げると言うかそもそも学校に来なくさせる。

 それが本田勝弘のためであり、果ては石田光江のためでさえあると本気で秋絵は信じていた。


 

 早川秋絵は決して甘やかされている訳でもない。それこそ、次期社長候補として一日数時間単位の勉強をやって来ているような存在であり既に父親のビジネスにも関わっている。今はまだ雑用がメインだが、高卒後は海外の大学へと飛びそこで言語学とビジネスをさらに学ぶ事になっている。場合によってはそのまま海外支社を任されるまであるとも、だが逆に駄目なら政略結婚の手駒か一生下働きまであるとも言う程度にはこれからの人生が安定している訳でもなかった。


 ましてや、石田光江など。




 もし彼女が学園を去り二度と本田勝弘に関わらないと約束するなら、これまでの損害を全て穴埋めするほどに補助するぐらいには優しいつもりだった。

 光江の父親は一応大企業と言われる程度の会社に勤めてはいるが秋絵の会社と比べるとかなり小さくそれに噂によればパワハラを受けているらしい。そんな場所から救い出すのもまた自分の役目のはずだ。





「本田様に連絡は取れませんの?もう試合は終わったはずでしょう?」

「終わりましたが今は試合後のミーティング及び移動中でスマホの電源は入っていないと思われます」

「さっき見ましたわ、まったくまだ2回戦なのにコールド勝ちも出来ないとは…どうもいけませんわね……」


 帰宅した秋絵はメイドに言葉をかけながら不機嫌を隠そうとしなかった。

 初戦は5回コールド勝ちが当たり前と言われるのが関原高校であり、本田勝弘は4打数4安打。それなのに5回終了時点で10-0どころか、9-2。結果的に7回コールドで終わったものの秋絵にとっては予想外も予想外であり、その不機嫌の行き場は既に決まっていた。


「少し休ませてください」


 そう言いながら自室に入り茶褐色のスマホを握り、すぐに手放して緑色のスマホを握る。

 四つものスマホが、彼女しか知らない隠し場所に置かれ、いつでもスタンバイを待っている。




「あなたは徹底的にデータを集め本田様に渡しなさい」




 メールの送り先は、同じ関原高校の枯山綱子。


 今は亡き脇山安子の友人だ。

 その彼女の父親は、今秋絵の父の会社で働いている。


 それも、安子と同じだった。


(その上で部室を徹底的に綺麗にする…そして本田様を含む部員全員の好みを徹底的に分析し、あの女の立場を奪う……そのはずなのに…!全く、直子も康江も使えないんですから!)


 石田光江と同じ野球部のマネージャーである枯山綱子は、秋絵からもらったデータを武器に「敏腕マネージャー」と呼ばれるまでになっていた。敏腕なだけでなく、心遣いも出来るはず。


 そうして部内のみならず校内でも人気になれば、石田光江の立場などなくなる。本田勝弘もまた光江を捨て自分に…いやあるいは綱子に向くかもしれないがそれでも良し。

 

 だがそうやって徹底させているはずなのに、未だに石田光江は野球部のマネージャーをやっている。綱子からの伝言ではあまり元気はないし手持ち無沙汰になる事が増えているのだが、辞める気は毛頭ないらしい。

 直にそんな事を言えば綱子が嫌われるのは目に見えているし、最悪秋絵のことまで露見しかねない。秋絵自身も必死に勉強してはいるが、秋絵は三年生で光江は二年生。成績の面で光江を叩き落とす事は出来ない。


 その事を思うとイライラするが、それでも本田勝弘様のためにも何とかしてせねばと思うと気分も落ち着けることが出来た。



 何とかして、石田光江を本田勝弘から離さねばならない。それこそ勝弘でなければ考え得る限り最高の男子をあてがう予定であり、今度その候補を探すべきではないかと考えてはみる。

 とりあえず校内からその手の男子を選び、光江に接触するようにうながしてみるか。




 そう決めながら茶色のスマホのデータを完全にデリートしたその矢先に、秋絵の本物のスマホが鳴った。


「お父様」

「ニュースを見ろ!」


 それだけの言葉と共に切られた電話に従い並のマンションの一部屋ぐらいの大きさのあるリビングの50インチのテレビを点けるとほぼ同時に、マスコミを一通のメールが支配した。




「本日17時10分、我々は枯山綱子を殺害しました。

 全ては枯山綱子の幸福のためであり、ひいてはこの国、否この世界に住まう全ての人類のためにです。我々はこれよりもまた、皆様の幸福と正義のために動き続けます。

 ハッピー・テロリスト」

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