第四章: 炎上から輝きへ
ライブハウスに漂う異様な雰囲気。客席の後方に、見覚えのある金髪集団が固まっていた。
「来やがったな…」
紅蓮華組のミカを中心に、昔の仲間が十数人。彼女たちの冷たい視線が刺さる。
楽屋では志村さんが慌てていた。「SNSで『元ヤンキー詐欺アイドル』がトレンド入り…どうしよう」
美咲が私の肩に手を置いた。「亜紀、大丈夫?」
「ああ…昔の借りは返さなきゃな」
ステージが始まり、最初の曲「ハートを撃ち抜け!」を歌い始めた瞬間、後方から罵声が飛んだ。
「偽物!」「裏切り者!」
客席が騒然となる中、私は歌い続けた。しかし二曲目の途中、ミカたちが前に詰め寄り、ついに舞台に上がってきた。
「長島、お前には借りがある。総長の座を投げ出して、こんなことやってんじゃねえよ!」
会場が凍りついた。警備員が駆けつけようとするが、私は手で制した。
「借りなら返す。でも、ここじゃない」
マイクを置いて舞台袖へ。メンバーが心配そうに見つめる中、私はミカたちを屋上へ案内した。
「何がしたい?」
「決着をつけに来た。お前が抜けてから、俺たちバラバラになったんだぞ!」
彼女の目に涙が浮かんでいた。そこには憎しみだけじゃない、寂しさがあった。
「ごめん…でも、このままじゃ先がないって思ったんだ」
「じゃあ私たちはどうすればいいの?」
その言葉で気づいた。彼女たちも、未来に迷っていたのだ。
「一緒に来いよ。お前らの居場所も、きっとあるから」
そのとき、ドアが開き、メンバーと志村さんが現れた。美咲が前に出た。
「亜紀を応援してる人、待ってるよ。特にあの子」
小さな少女—前回手紙をくれた少女が、震えながらも勇気を出して立っていた。
「私…長島さんの歌で勇気をもらったんです!」
その一言が、紅蓮華組の女たちの表情を変えた。
舞台に戻った私たち。観客が固唾を飲んで見守る中、私はマイクを握った。
「今日はスペシャルゲストを紹介する。元・紅蓮華組の仲間たち!」
驚きの声が上がる中、ミカたちを舞台に招き入れた。
「次の曲は新曲『拳で語れ!乙女心』。彼女たちと一緒に踊るぜ!」
即席で教えた振り付けながら、昔の仲間たちと共に踊る。ぎこちないけど、真剣な表情。客席からは徐々に歓声が。
その光景をSNS生配信していた志村さん。「#真のヤンキーアイドル」のハッシュタグが瞬く間に広がった。
ライブ終了後、志村さんが興奮気味に駆け寄ってきた。
「大手レーベルからオファーだ!このサプライズ展開に食いついてきた!」
ミカは照れくさそうに言った。「あたしたちも…何かできることある?」
そして三ヶ月後—
私たちはメジャーデビュー。紅蓮華組の元メンバーは「暴走エンジェルズ」の姉妹グループ「紅蓮エンジェルス」として活動を始めていた。
あの日撮影された写真をきっかけに私をファンになった少女は、今では公式ファンクラブの中心メンバー。
山では猿と呼ばれ、東京では異端と思われた私。でも今は、自分らしさを武器に輝ける場所を見つけた。
「アイドルってなんだろ?」
最初の疑問への答えが見つかった気がする。それは自分らしく輝きながら、誰かに希望を与えること。
山で見た星空のように、一人一人が違う輝き方をしている。私の輝き方は、武闘派アイドル。それでいい。
私、長島亜紀、22歳。元ヤン。現役アイドル。
これからも全力疾走、ケンカ上等!
<終わり>