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第四十一話 湊斗、重大事項に気付く

 琴葉の父親と母親はそれぞれスゲェ数学者と科学者らしい。

 二人とも世界中を飛び回って、世界の産業の発展に貢献してるって話だ。


 んで、琴葉はそんなスゲェ父親と母親の一人娘で、将来を超絶期待されてるらしい。


「本当なら、お嬢様は高校に行かず、飛び級で大学へ進学。そしてすぐさま旦那様や奥様のように世界の未来を背負って立つべきだったのです」

「……」


 淡々と告げる黒鉄に、琴葉は無言。


「しかし、お嬢様は強い意思でそれを跳ね除けられた。その意思を尊重し、旦那様と奥様は一年の猶予を与えました」

「で、その期限がきたってことか?」

「はい。本来であれば、あと二週間ほどでお迎えに上がる予定でしたが、旦那様と奥様のスケジュールに空きができまして。こうして護衛である私が今日来た次第でございます」

「ほーん。あ、すんませーん。このいちごたっぷり練乳パフェ追加で」


 喫茶店に場所を移し、食事をしながら俺は話を聞く。

 黒鉄がおごってくれるとのことなので、俺は存分に好きな物を注文していた。


「なるほどぁ。とりあえず今までのことに合点がいったぜ」

  

 あんな高級タワマンで一人暮らししていた理由、超絶良い頭。

 そんでもって、最近のコイツの変な様子。


 全部の点が、線で繋がった。


「話は終わりだ。さ、お嬢様。行きましょう」


 黒鉄は立ち上がると、そう言って琴葉に立ち上がるよう促した。


「……うん」


 琴葉は従うように、ゆっくりと立ち上がる。


「待てよ」


 その様子に、俺は無性に憤慨イラついた。


「なぁ琴葉。お前、さっき俺に『これからも千聖と仲良くして』とか言ってたよな? てことは今日ソイツが来るまで、俺に黙って消えるつもりだったってことだよな?」

「……うん」

「気にすんな。別に俺のことはいーんだよ。ただ……」


 少しだけ、間を置いて、俺は再度口を開いた、


「お前、千聖になにも言わずに行く気かよ」

「……っ」


 一瞬、琴葉の身体が震えた気がした。

 

「お前が千聖を大事な友達ダチって思ってんのは、この前のことでよーく知ってるぜ」

「……元々、千聖にも、黙って行くつもりだった」

「なんでだよ」

「それは……」

「おい貴様、お嬢様を困らせるな」

「うるせぇな。俺はコイツの言葉待ってんだ。いーから黙っとけ」

「なんだと? 会った時から無礼で野蛮だと思ってはいたが、まさかここまでとは……」


 黒鉄と睨み合う。その直後、琴葉は小さく、呟くみてーに言った。


「ヤ、だった……から」

「なにが?」

「……千聖に、大事な、大切な友達に……さよならするのが、ヤだったから……」

「……」


 ーー……。


「ひゃはははは!! おもしろ!? ンだそれぇ!」

「な、なんで笑うの!?」

「い、いやぁワリィワリィ! まさかお前がそんなこと言うなんて思わなくてよぉ」


 言いながら、俺も立ち上がる。


「はぁーあ、怒りが引っ込んだぜ。ま、そんなら話は早ぇよなぁ。おいアンタ、琴葉は連れてかせね……」


 ん? いや、ちょっと待てよ。


 その時だった。俺の脳に、電流走る。


 よくよーく、考えろ俺!! ただカッケェだけの戯言ほざく前に!!

 

 これってよぉ、メチャクチャチャンスじゃねぇか?


 俺の脳内でガ◯レオの勝ち確BGMが流れ始める。


 だって俺をパシリとしてコキ使ってる琴葉コイツが消えるんだぞ? 単純に俺の負担が半分になんだぞ?


 それに俺が千聖のパシリをしてんのは、千聖のOPPAIを揉めるからだ。


 ーーけど、琴葉ってOPPAIないやん!! NO OPPAIやん!!


 今更ながら衝撃的な事実に気付いてしまった。

 俺は胸が無い琴葉のパシリをしていたのだ。

 胸が揉めないのにパシリだと!? そんなのタダ働きもいいトコじゃねぇか!!


「……」

「湊斗?」

「はっ!?」


 視界に入ってきた琴葉の顔で、俺は現実に引き戻された。


「いやぁすまんすまん。ちょっと考え事をな」


 ふぅー、と俺は息を吐く。

 うん。考えはまとまった。あとは言葉を口にするだけだ。

 よし、ビシッと言ってやろう。

 

 意を決して、俺は口を開いた。


「黒鉄さん! どーぞ琴葉を持って帰ってくださぁい!」

「え」

「はい?」



「ってことがあったワケよ」

「すごいね! 最初の流れから最後そーなるのって湊斗くらいだよ♪」


 その日の夜。

 俺は突発的に陽那の家……というか住処すみかに遊びに来ていた。


 なんで住処と言うのかと言えば、陽那が住んでいるこの場所は家でもアパートの一室でもなく、コンテナだからだ。

 3月に起こったある騒動によって、陽那の住んでいたアパートが全焼した。住んでたヤツらが誰も死ななかったのは奇跡だ。


 で、身を隠すためにこのコンテナに住み始めたんだが、陽那いわく「思ったより住みやすい」ってことで、そのままここに住み続けている。


 今ではネット完備、機材完備、ソファにベットもあるという充実っぷり。

 正直かなり秘密基地っぽさがあって好きだ。

 俺の部屋も家の地下にあってまぁまぁ秘密基地要素はあるが、ここにはなんか負けた気がする。


 と、まぁンなことはどーでもいい。


「これで俺のパシリとしての負担が軽減される!! 最ッ高だぁ!! はーはっはっはっはっは!!」


 コンテナの中で、俺は高らかに笑った。


「ふぅーん。でもいいんだ?」

「あぁ? なにがだよ」

「今の話聞いた感じ、根上にもっとギャンブルさせて金稼ぎたいんじゃなかったの?」

「……」


 ——……。


「陽那」

「うん?」

「なにボサッとしてんだ!! さっさと琴葉を助けに行くぞ!!」

「手の平返し過ぎて手首ちぎれない?」

ここまで読んでいただきありがとうございます!

少しでも

「面白そう!」

「続きが気になる!」

と思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです!

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