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第四十話 賭博黙示録コトハ

今更ですが、未成年のギャンブルは犯罪なのでやらないようにしましょう!

 な、なんだコレ……。

 なにが起こってやがるんだぁ!?


「湊斗、今。この角度で打って」

「おう」


 今、俺は琴葉から指示されたタイミングと力加減、そして狙う角度で玉を発射している。

 するとどうしたことだろうか。さっきまで弾かれまくっていた玉は上手く釘に反射して、役物まで到達。加えて役物が開いているタイミングジャストに玉はそこを通過し、ヘソに入った。


 そして始まる抽選。結果は大当たり。

 ビガガガガガ!! とパチンコやスロット特有のASMRより気持ちいい大当たり音が鳴り響く。


「こ、琴葉。お前どうやって!?」

「この一時間で、玉の軌道きどーと下の役物アレが開くタイミング、全部計算した。発射速度と角度、タイミング間違えなければ、全部入る」

「……」


 トンデモないことを当たり前のように言う琴葉に、俺は開いた口が塞がらなかった。


 俺たちが今打っている台は良台と言って、いわゆるパチスロのように当たりやすい設定がされている台だ。

 通常、パチンコの当たり台と言えば台に傾斜があったり、釘の打ちが甘かったりという『物理的』な意味での設定の甘さだ。

 今回のように、『電子的』な意味での設定が甘い台は一部しかない。


 もちろん一部しかないと言っても、この台にはデメリットも当然ある。

 それは当たりやすいが、出玉……つまりもらえる玉が少ない傾向にあるということ。

 勝っても大して儲けが出ず、さらには投資した玉と相殺されて下手すればマイナスで終わる可能性もある。


 が、今この状況であれば話は全く変わってくる。

 パチンコの無駄玉は無くなり、打った玉全てがヘソに入り、大当たりの抽選に掛かる。

 これならばいくら大当たりでの出玉が少なかろうと、必ずプラスになる。加えて、出玉は『少ない傾向にある』だけで、運が良ければ当たり方次第で多くの出玉を得る可能性も十分にある。


 つまり、今は圧倒的確変状態。

(確変:確率変動の略。大雑把に言うと大当たり直後、さらに大当たりが出やすくなっている状態のこと)


 あまりにも非現実的だが、実際今目の前で起きている、打てば打っただけ当たり、プラスになる状況、


 俺はゴクリと唾を飲み込み、そして……。


「さいっこうだぜぇ!!」


 琴葉のラジコンに徹することを決意した。



「いやぁ勝った勝った!」


 今日の成果、超大勝ち。

 大当たりの連発、鳴り響くBGM、脳汁が止まらなかった。

 これだからギャンブルはやめられねぇ。


「サンキューなぁ琴葉!」

「ん、役に立てて良かった」

「役に立ったなんてレベルじゃねぇぜ! 最ッ高だった!! ほれ、受け取れ受け取れ!」


 そう言って、俺は交換所で交換した景品である菓子の袋を渡した。

 金は……うん、要求してきたら渡そう。

 そして要求してこないようにこれも渡そう。


「あとコレ」

「ん、人形?」

「おう。なんのキャラか知らねぇけど、女子ってこーいうの好きだろ? ほら、『ち◯かわ』とか『お◯んちゅうさぎ』とか」

「嫌いじゃないけど好きでもない。琴葉はもっとバチバチした色がビビッドなのが好き」

「そ、そうか……」

「でも、ありがと。もらっとく」


 そう言って、琴葉は俺が出した人形を受け取った。


「ちなみにこの子名前は?」

「ミラジョボジョボビッチだ」

「名前はバチバチしてる」



「にしてもまさか琴葉があんな頭良いとはなぁ。実際にヤベェトコ見せられるとマジでヤベェんだなってなるぜ」

「ふっふっふー。すごいでしょ。琴葉天才だから」


 得意げに胸を張る琴葉。

 前までだったら、なにバカなことをと思っていたが、今となってはバカにできん。


 コイツはすげぇ。俺は今日それを分からされた。


 そして俺は思った。

 琴葉を利用すれば、もっと金が稼げるんじゃないかと!


 競馬や競輪は不確定要素が多すぎるからムリだと思うが、賭け麻雀やカジノのポーカーなら……へっへっへぇ!!

 そうと決まれば早速勧誘を……!!


「なぁ琴葉さんや?」

「湊斗。今日はありがと。琴葉にお礼させてくれて」

「へ? ンだよ急に」

「言いたいことって、自分がいなくなったら言えなくなっちゃうから、言った」

「お、おう?」


 なんだ琴葉のヤツ。今日は変だな。いやいつも変だけど、今日はそれとは違うっつーか……。


「湊斗。これからも千聖と仲良くして」

「……」


 なんだ、その言い方。

 それじゃあまるで……。


 一つの可能が頭に浮かぶ。それを口にしようとした瞬間、答えは現れた。


「お嬢様」


 黒いサングラスに、黒いスーツを着た女。

 ソイツが俺の……いや、琴葉の前に現れた。


雅也まさや。なんでいるの? まだ時間じゃない」

「早まりました。お迎えの時間です」

「……」


 雅也と、まるで男みたいな名前で呼ばれた女の言葉に、琴葉は押し黙る。

 

 なんだこれ……。


 ひょっとするとパチ屋の時よりも異質なこの状況に、俺は頭が追いつかなかった。

 

「おい、お前」

「あん?」


 突然雅也とかいう野郎に声を掛けられる俺。思わず不機嫌そうに返しちまった。


「お嬢様から離れろ。今すぐに」

「……あのなぁ。いきなり目の前出てきてなんなんだよお前。しかも琴葉をお嬢様って言ったり意味分かんねぇよ」

「……お嬢様。一体誰ですかこの男は?」

「琴葉の、クラスメイト」

「そうですか。先ほどからの無礼な態度には苛立ちを覚えましたが、お嬢様の知り合いであればこちらも相応の対応をさせていただきましょう。改めまして、初めましてお嬢様のクラスメイト殿。私の名前は黒鉄雅也くろがねまさや。そちらにいる琴葉お嬢様のボディガードをさせていただいております」

「ボディガードだぁ? なんでコイツにボディガードなんてつくんだよ?」

「……では、場所を変えましょう」


 そうして、俺は知ることになる。

 根上琴葉という少女の境遇について。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも

「面白そう!」

「続きが気になる!」


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです!

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