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第二十七話 不良高校潜入

「よし、ではHRを始める。星名と根上は欠席だな。そして……あのバカ三人はどこに行った? さっきまでいたはずだが」


 朝のHR、教壇に立った一花はクラスの生徒に問い掛けた。


「なんか三人とも急病で早退するって言ってましたー!」


 対し、クラスを代表するように茜が大声で答える。


「なるほど。仮病で早退ということか」


 だがまぁ、連絡の無い星名と根上の欠席。そして湊斗たちがこのタイミングで早退ということは……大方そういうことだろう。


 詳細と経緯いきさつは分からない。だが状況から一花は概要を理解した。

 不安はある。教師である自身では解決できないことを理解した上での無力感もある。

 だがそれ以上に、()()がある。

 

 バカで不純で、時にゲス。大体ワケの分からない方向に、意味の分からない回り道をする。

 ―—だがどこまでも真っすぐで、やる時はやる。

 

 大学の後輩の弟として、そして今は自分が受け持つクラスの生徒として……数年間見てきた一花。

 彼女は湊斗をそう評価していた。

 

 そして彼の元に集まった二人のバカの存在が、その信頼をより強固なものにした。


 だがそれはそれとして、帰ってきたら指導だぞ。お前ら。


 一花は心の中でそう呟きながら、出席簿を教卓の上に置いた。



「ここが藍坂創あいさかはじめが通ってる阿久高校あくこうこうだね」

「いやぁ、いるわいるわガラわりぃのが」

「なんつー時代遅れな雰囲気だ。ここだけ時止まってんのか?」


 陽那の案内で目的地に着いた俺たちは、少し離れた所から校舎と明らかに遅刻にも関わらず堂々と登校している生徒を眺めていた。


「さて、と。いいか? まずは情報収集だ。無策で突っ込んだって死ぬだけだからな。慎重に動いて、星名を助け出すための算段をつける」

「……」

「おいどうした湊斗」

「いや、よくよく考えてみたら俺たち滅茶苦茶ムリゲーなことしようとしてねぇか……?」

「その通りだ。ようやく気付いたかこのバカ。やめるか? 今ならまだ引き返せるぞ」

「やめるワケねぇだろ! こっちには引き下がれねぇ理由があるんだよ……!」

「なぁ。今更だが、なんで星名を助け出すことにしたんだ?」

「ふっ、時期が来たら話すさ……。とりあえずは情報収集だな。通ってる奴に聞くのが手っ取り早ぇか。陽那、目立たなくて不良が1~2人くらいしかいないポイントはあるか?」

「ど~するつもり~?」

「ははは、決まってんだろ。不良1~2人なら俺と司で余裕で制圧できる。そんでそいつらから情報を引き出す。多少手荒なことしても目立たなければ問題ねぇからなぁ」

「あはは! 良い感じにクズで最高~! ちょっと待ってねぇ、今ドローンで敷地内を探してるから……お、校舎裏の少し離れた所に林があるよ。ここなら目立たなそ~、あとは不良がいるかどうかだけど~……あは、いたいた。って、アレ?」

「ん、どうした?」

「え~と、これ見て」

 

 陽那はそう言ってタブレットの画面を俺と司に見せてきた。

 画面を見るとそこには……。


「「え……?」」


 信じられない光景が広がっていた。



「へっへっへ。まさかこんな可愛い女が一人で俺たちの高校に来るなんてなぁ」

「いや~、マジでついてるな俺たち」


 二人の不良はひそひそと言葉を交わす。


「ねぇ、言われた通りここまでついてきた。千聖はどこ?」

「マジでバカだなこの女」

「あぁ。話合わせたらひょいひょいついてきやがった。ま、俺たちが知らない野郎についていっちゃ駄目だって指導してやるかぁ」

「へへ、そうだな」


 二人の不良は振り返ると、小柄な少女に言った。


「はははぁ! ここまで来たら誰も邪魔なんざ入らねぇ!」

「馬鹿正直についてきたのが運の尽きだぁ! 大人しく俺たちに襲われやがれぇ!!」


 そう言って、二人の不良は小柄な少女に襲い掛かろうとする。

 ——が、


「おらぁ!」

「よっと」


 頭に突如として衝撃が走り、二人の不良はそのまま地面に倒れた。



「んぅ……てて」

「な、なんだぁ……?」

「よぉ起きたか」


 約一分ほどの気絶から目を醒ました不良共に対し、俺は声を掛ける。


「って動けねぇ!?」 

「どーなってんだ!」

「暴れられっとメンド―だからよぉ。縛らせてもらったぜ」


 ロープで木に縛り付けて身動きを取れないようにした。これで話ができる。


「よし。じゃあ聞かせてもらおうか。この高校にいる藍坂創とその周辺についてよぉ」

「は、はぁ!?」

「ざけんな! ンなもん言うワケねぇだろ……!」


 当然のように拒否する不良たち。


「おっけおっけ。んじゃやるぞお前ら―」

「仕方ねぇなぁ……」

了解りょ~」


 対して、俺たち三人は不良に近づいた。


「お、おい待て!! こっち来んなてめぇら!」

「い、言っとくけどなぁ! 何されたって俺たちは口割らねぇぞぉ!」

「ははは、面白いこと言うなぁてめぇら」

「その減らず口がいつまでもつか見ものだなぁ」

「僕たち完全に悪役~。とりあえず大声上げないように口にタオル巻こうね~」


 そして数十秒後、


『ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??』


 響き渡らない不良たちの断末魔が、俺たちの耳に入ってきた。



「なるほどな。もう他に知ってることはねぇだろなぁ?」

「な、無いデス。だからもう止めて下さいぃ……」

「これなら普通に殴ったり蹴られたりした方がマシですぅ……」


 俺たち三人の精神的拷問に精神を削られた不良たちはそんな声を上げる。

 もう吐けるようなことは無さそうだ。


「あ、気絶した~」


 そう思った矢先、タイミングよく不良たちは意識を飛ばした。


「ふぅ。にしてもまさか一人でここに来てるとは思わなかったぞ根上。そこまでバカじゃないと思っていたが、そこまでバカだったか」

「でも友だち助けたいって気持ちは分かるな~。大切なら、動いちゃうよね」

「二人とも、なんで来てくれたの……?」

「俺たちはそこのバカに付いてきただけだ」

「そそ」


 根上が俺の方を見る。


「湊斗。なんで?」

「あぁ? そんなの星名を助けるために決まってんだろうが」

「だって、昨日は嫌がってた」

「事情があんだよ事情が」

「そうなんだ」

「ん? なんだよ」

「うん。やっぱり湊斗だなって」


 相変わらず意味の分からんことを言うなコイツ……。

 まぁそんなことはどうでもいい。今は優先すべきことがある。


「んじゃあ情報を集めたことだし、考えるぜ。星名救出作戦をよぉ」


ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも

「面白そう!」

「続きが気になる!」


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです!

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