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第二十四話 パシリ解放? 前編

「ってててて……」

「ほいほい、ちょっと染みるからね~」

「ってぇ!? おい陽那!! もっとゆっくり!! 優しく!!」

「うるさいなぁ~。手当してあげてるんだから文句言わない! 司、湊斗が暴れるから抑えて~」

「あいよ」

「うおぉい!? やめろ離せ司ぁ!!」

「子供じゃねぇんだから大人しく治療を受けましょーねー(棒)」

「キッショ!? その言い方止めろ!! 鳥肌ブワってきた!!」

「んじゃいくよ~」

「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!」


 俺の断末魔は室内中に響き渡った。



「はぁ……死ぬかと思ったぜ」

「いつもそれ以上の目に遭ってるんだからこんなのなんともないでしょ?」

「うるせぇ!! 痛いモンは痛いんだよ!!」

「根上はどっかケガしたトコある~?」

「ううん。ない」

「なら良かった~」

「無視やめてぇ!?」


 あまりにも辛辣な陽那の対応に、俺は堪らず叫んだ。


「おーい、開店前だからってあんま店ン中で騒ぐなよー」

「ワリィ亮士りょうじ。あと助かった。店使わせてくれてサンキュな」


 如月亮士きさらぎりょうじ。俺がホールスタッフとしてバイトしてるガールズバー『SPIRAL QUEENスパイラルクイーン』の店長。

 俺がボコされたのが店にそこそこ近かったから使わせてもらったってワケだ。

 ちなみに司と陽那に関しては結構近くにいたみたいで、連絡したらすぐに来た。


「気にすんな。開店前の店の使用料はお前の給料から減らしとく」

「鬼過ぎんだろ!?」

「貸し借りはキチッとする。それが大人ってモンだ」

「じゃあ、この前麻雀で俺に負けた分払えよ」

「さ、話は終わりだ。開店まではここ好きに使っていいぞ」

「うぉい!?」


 都合の悪いことは聞かなかったことにする、これが大人ってヤツか……!


「んで、なにがあったんだよ湊斗?」

「あー実は……」


 近くの椅子に座った司がそう聞いてきたので、俺はさっきあったことを話すことにした。


 ――……。


「へぇー、星名と昔っからの知り合いの男がねー。にしても意外だな」

「なにが?」

「いや、だって星名の性格考えたらそんな野郎ぶっ飛ばしそうじゃないか?」

「……たしかに」


 司の言う通りだ。

 あんな奴、いつもの星名なら絶対手が出てたはず。

 少なくともただの知り合いってワケじゃなさそうだ。


「根上はなにか知ってるのか?」


 と、そこで司が根上に話を振る。

 俺たちよりも星名と圧倒的に仲がいい根上だ。なにか知ってるかもしれない。


「知らない。千聖はあんまり自分の昔話しないから」

「そうか」

「でも、さっきの千聖……私と初めて会った時と、少し似てた」


 根上のそんな一言を最後に、店内が静かになる。

 ――が、その時。


「ふっふっふ~! 皆、ひょっとして星名の過去が気になったりする~?」


 得意げに笑いながら、陽那がそんなことを言い出した。


「んー、まぁ気になるかって言われたら」

「そ~言うと思ってたよ湊斗! じゃあ出番だね。この僕の!」


 えっへんと胸に手を当てる陽那。

 コイツの言ってることがどういう意味か、俺と司だけは理解していた。


「よっと」


 どこからともなくノートPCを取り出し、スマホと接続した陽那。そしてキーボードを高速で叩くと、その動きは10秒くらいで止まった。


「はい出た〜」

「相変わらずはえーな」


 陽那の特技はネット系全般。情報収集力に非常に長けており、どう見てもハッキングもしてるが本人曰くハッキングじゃないらしい。(俺たちは全く信用していない)

 ちなみにこの前翔真たちと遊んだ時に使ったインチキルーレットも陽那が作ったものだ。


 まぁそんなことは些細なこと。俺たちは陽那の言葉を待った。


「えとね〜。本名は藍坂創あいさかはじめ、生年月日は7月9日、身長は172cm、生まれも育ちも足立区。星名とは同小同中で、いつも大体一緒にいたっぽいね。どの写真も大体一緒に写ってる。仲のいい幼馴染って感じかな」

「幼馴染……」


 なるほど。やっぱタダの知り合いじゃなかったワケか。

 殴らなかったのは幼馴染のよしみって感じか?


「あはは。星名は当時『足立区の狂戦士バーサーカー』って呼ばれてたんだって~。みんな星名のこと怖がって中学卒業くらいにはもう誰も逆らわなくなってたみいたいだよ」

「……」


 それに関しては、この前星名から聞いたのと大体同じだった。

阿久

「そのあと星名は僕たちと同じ歩和高校、藍坂の方は都内でも名高い不良高校の阿久高校あくこうこうに入学。仲のいい幼馴染の二人が別々の高校に進んだってのはよくあることだとは思うけど、この二人の場合はなにかありそうだね~」


 情報をつらつらと読みながら、陽那は面白そうに呟いた。

 

「んで、ど~するの二人は?」


 一通り話し終えた陽那は、俺と根上の方を見る。

 ったく、どうするだと? ンなもん決まってんだろ。


「どーもしねぇ」

「千聖に会いに行く」


 ーー……。


「……え?」


 根上の答えに、俺は呆気に取られた。


「ちょ、な、なに言ってんすか根上さん!?」

「千聖、自分に嘘ついてる。だからちゃんと聞きたい。ホントの千聖の気持ち」

「き、聞いてどーすんすか?」

「千聖がアイツらのトコにいたくないっていうなら、連れ戻す」

「Oh……」


 俺は天井を見上げた。

 

 や、ヤベェ。コイツ今がどーゆう状況か、なんにも分かってねぇ。

 なんとか説得しねぇと……。


「あ、あのですね? 星名さんの気持ちどうこうはひとまず置いとくとして、アイツらから星名さんを連れ戻そうなんてのは100無理ゲーです!」

「たしかに、琴葉だけじゃムリ。でも……」


 そこまで言って、琴葉は俺を指さした。


「湊斗がいる」

「……」


 ――ま、マジでなに言ってんだコイツゥ!?


 その言葉をなんとか飲み込んで、俺は平静を保ちながら言葉を返す。


「あはは、そ、そう言っていただけるのは嬉しいですけどね? 俺がいたところでどうにもならないですよ? 実際こんなボロボロにやられましたし……」

「でもこの前の不良は軽くボコしてた」

「あんな雑魚と一緒にしないで下さい!? アイツがシルバーランクなら、今回の奴はもうマスターランク!! 逆にボコされて分からされますよ!! ていうかもう分からされましたよ!!」

「大丈夫。湊斗ならやれる。琴葉信じてる」

「無理です!! だって次いったらこれ以上に痛めつけられるの確定ですやん!! 俺今度こそ死んじゃいますやん!!」

「お願い湊斗」

「流石にこればっかりは無理です!! 本当に無理です!!」

「お願いお願い」

「無理です無理です!!」


 ――ポン


 俺が断固拒否の姿勢を続けていると、根上は俺の肩に手を置いて、顔を近づけてきた。

 

 おいおい今度は色仕掛けか? あいにくお前みたいな顔が可愛いだけのペチャパイで揺れる俺じゃないぜ?


「千聖の胸揉んだこと……」

「やります!! やらせていただきます!!」

「やったー」

「はっ!?」


 し、しまった……!! 無意識に脅迫に屈しちまった!!

 なんて無力なんだ……俺。


「じゃあ早速、千聖の所にいこー」

「おー……」


 根上につられるように、力無く拳を上げる俺。

 ——その時。


「ちょっと待てよ」


 そう言って待ったを掛けたのは司だった。


「あぁ? どーしたんだよ司」


 問いかける俺。だが、それを無視して、司は根上の方を見る。


「なぁ根上。もし星名を助けるっていうなら、お前一人でいってくれねぇか?」

「え?」


 突然の司の言葉に、根上はきょとんと首を傾げた。

 もちろん、俺も理解不能の混乱に陥った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも

「面白そう!」

「続きが気になる!」


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです!

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