第一話 束橋湊斗はギャルのパシリ
新連載です!
とりあえず10万字ありますのでキリの良いところまで毎日投稿します!
こんにちは。俺の名前は束橋湊斗。
ごく普通の高校生!
「湊斗ー。カフェオレ買ってきて。ダッシュなー」
「私ファンタ」
「はい、分かりましたぁ!」
「遅れたら罰ゲームだかんなー」
「が、頑張りまぁす!」
今日も今日とて、俺は元気にギャルたちの奴隷をする毎日を送っている。
「大変だなぁ束橋の奴」
「まぁ目を付けられたのが運の尽きだろ。耐えるしかねぇよ」
教室を出る間際、クラスメイトのそんな言葉を耳にするが、立ち止まることなく俺は教室を出た。
くっそ! 星名の奴、なんで一階の自販機にしかない飲み物指定すんだよ! 遠いっつーの!!
星名千聖。
カフェオレが飲みたいといった方であり、キレーな金髪と物怖じしない活発な性格が特徴のヤンキー味があるギャルだ。
あととても面が良い。
俺は一階までの自販機までの道をショートカットすべく、見つからないように校舎の壁に這っている配水管を伝い、三階から一階まで一気に落下した。
「っと」
華麗な着地を決めた直後、俺は視界に映る自販機へ向け、一気に駆け出す。
根上も根上だ! ファンタってウチの自販機無駄に種類あんだぞ! どれ買えばいいんだよ! 聞いたらどうせ罰ゲームだなんだと難癖つけられるから聞けないし……!!
根上琴葉。
ファンタが飲みたいと言った方。ハーフツインテにところどころ紫のメッシュが入った艶やかな黒髪と常に気怠そうな雰囲気を放っているのが特徴のギャルだ。
あととても面が良い。
学年のカーストトップクラスにいながら、色々と黒い噂がささやかれ周囲から距離を置かれているアイツらはさしずめ『アウトロー陽キャ』とでも言うべきか。
そんな二人のギャルに、俺は逆らうことができない。
だから今日も今日とて奴隷を続けているのである。
◇
「は、はい! カフェオレとファンタ買ってきました!」
約一分後。
俺は帰り道も配水管を伝いショートカットをし、過去最高のタイムで星名と根上がいる机の上に二本の飲み物を置いた。
「おー早かったじゃねぇか」
「超高速」
感心したように星名と根上は言う。
よ、良かった……。これで罰ゲームは……。
「じゃー罰ゲーム!」
「ドンドンパフパフ」
「え?」
理解不能の流れに、思わず俺は間抜けな声を出した。
「「え?」じゃねぇよ湊斗。ウチ時間以内に買って来いって言ったろ。三十秒オーバーだっての」
「それに私が飲みたかったのオレンジ。グレープじゃない」
にやにやと笑う星名と不満そうに顔を膨らませる根上。
「いや、あのぉ……はは」
俺は顔を引きつらせて笑うことしかできなかった。
◇
「あははー! どうだ琴葉?」
「すごいラクチン」
そう言って、根上は俺の背中に全体重を預けた。
星名たちから言い渡された罰ゲーム、それは『今日一日移動は全部俺のおんぶで行う』というものだった。
なので俺は今、根上をおんぶしながら校内の廊下を歩いている。
正直とても居たたまれないし恥ずかしい。周りの視線が痛い。本当に痛い。
「んじゃ次ウチなー!」
「あ、ちょい千聖」
根上を俺の背中から引き離し、今度は星名が俺の背中に勢いよく飛び乗って来た。
――むにゅ。
「……」
瞬間、俺の背中に衝撃が走る。
デ、デカい……!!
背中の衝撃の正体が星名の胸によるものであることは即座に合点がいった。
推定カップA +の根上と違い、星名の胸は推定Gカップ以上。勢いよく背中に飛びつかれたことで、俺は一心にその柔らかさと大きさを実感する。
気持ち悪いと言われるかもしれないが怒らないでほしい。男だもの。
「……」
「……あの、根上さん?」
しかしどうしたのだろうか。根上が急に俺の頬をつねり出した。
「湊斗。変な顔してる」
「うぇマジ!? ちょっと見せろし……うわマジじゃんウケる! どしたどしたー?」
「な、なんでもないです!!」
多くの人が歩いている学校の廊下で大変不本意な事実を追及されそうになった俺は堪らず叫ぶ。
体を走る羞恥心は数秒前とは比較にならない。
「えい」
「痛いれふ根上はん。止めへくらはい……」
そして同時に襲い掛かるのは、なぜか先程よりも強さを増した根上の頬つねりだ。しかも両頬。
クソ……どうしてこんなことに……!!
羞恥心と痛みを感じながら、俺はコイツらのパシリになる原因となった事件のことを思い出した。
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