シミュラクラ現象
誰かに見られている気がする、なんて経験はないだろうか?
実は思ったよりも人間の視野は広く、今自分が見ていると思っているところの外縁部も視野見できてしまうのだ。
ではそんな視野見のどこかに「3つの点」があれば、自分の脳はそれをどう思うだろうか。
そう、シミュラクラ現象で、顔に見えてしまうのだ!
ある朝、男はどこかからか視線を感じて目を覚ました。
彼は普通のアパートにすむ普通のサラリーマンで、彼の部屋には誰もいないはずだった。
周りを見渡しても誰もいない。
いつの間にか視線は感じなくなっていた。
「気のせいか」
そう思って彼は出勤する準備を始めた。
寝巻きを脱ごうと袖から腕を抜くと、また視線を感じた。
今度は先程とは比べ物にならないほど強烈な視線だ。
思わず動きを止めると、視界の左隅にぼんやりと顔が見えた。
バッと左を見ても、そこには誰もいない。
彼は怖くなって急いで着替え、朝食もそこそこに通勤電車に飛び乗った。
同僚に似たような経験があるか聞いてみた。
「あぁ、シミュラクラ現象ね!君、そんなの誰にでも経験あるよ。シミュラクラ現象ってのは、三つの点があったらそれが顔に見えてくるっていう現象のことだよ。大丈夫大丈夫、そのうち気にならなくなるって!」
同僚の言葉を信じて、その後一週間いつも通り生活してみた。
しかし、視界の左隅に写る顔は度々主張してきて、その恐怖から彼はついに体調を崩した。
長袖の服を着て発汗を促し横になっていると、顔は出てこなかった。
しかしトイレに行くために布団から出たとき、視界の左隅に顔が出てきた。
漏らしそうになりながらもトイレへ行くと、その間にも顔はどんどん大きくなっていく。
左を見ても誰もいない。
同僚から教えてもらった「シミュラクラ現象」という言葉が思い出された。
もしかしたら……そう思って自分の手の甲を見ると、そこには幼い頃からからかわれ続けた三つの黒子があった。
「またお前か!惑わしやがって!そんなに俺を苦しめたいなら、こうしてやる!」
トイレから出て彼は黒色のマーカーを取り出し、三つの黒子を全て塗りつぶした。
それからパタッと顔の出現はなくなった。
彼も体調が回復し、普通に出勤できるようになった。
しかし、顔と出会う前となにも変わらないように見える彼の生活に、一つの大きな変化があった。
「君、もう二度とシミュラクラ現象に煩わされたくないからって全身真っ黒に塗りつぶす必要はないだろうよ!」
読んでくださりありがとうございました
m(_ _)m
※サブタイトルを「シヤミ 続」から「シミュラクラ現象」に変更しました。




