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人鬼〜JINKI〜 時空の守護者たち  作者: 志摩
4、物語の始まりー異世界の生き物の集結
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隔離された異世界の静かな鬼


都会の喧騒が遠くに聞こえる深夜。

新宿御苑の門扉を抜けた4人は、地下へと続く隠された通路を進んでいた。


湿った土とカビの匂いが混じり合う中、姫はなぜか大きな風呂敷夏積んだものを大事そうに抱えている。


中には、特製弁当。出発前に作ったおにぎりと卵焼きが丁寧に詰められていた。






「にしても、都庁の地下にこんな場所があるなんてねぇ」


姫が小声で言った。


「そうですね。なんでかとんとん拍子に話が進みましたよ」


黒井が呆れたように呟いた。


「教えてもらってびっくり、あれからまだ1週間しか経ってないのに」


黒井がキョロキョロしながら、道でない方へ進んでいく。他のメンバーは何も知らないのでついていくだけ。


「つい最近知ったばかりで、ちょっと迷ってますが、怒らないでくださいね。あとちゃんと着いてきてくださいよ。そんで口外するなよ、としっかり脅されてますから、そこんとこよろしく」


黒井がちょっとふざけて話している。


鉄は無言のまま、ただ前だけを見据えていた。彼の胸には、兄である鈿に再会できることへの嫌な感じと、長年の別離が生んだ不安が渦巻いていることだろう。



姫と曼はとりあえず着いていく。



薄暗い道を抜けると、茂みの中に不自然な地面の開けた場所がある。

その真ん中近くに人が立っていた。


「遅いですよ」

「すみません、迷いました」


黒井が謝ると、そこにいた男がにゅっと近づいてきた。

「姫様、曼様、鉄様、そして黒井の4名で間違いありませんね?」


みんな返事はしない。


「では開けます」



男は地面に屈み、何かに手をかざすと地面から音がした。


地面にあった何かが動いた。

人ひとりが倒れそうな程度の小さな扉が開いたようだ。そこから地下に入る穴があるようだ。


「足をいれると自動で入り口に下がります。足をついたら動かないでください。入り口に着いたら、その場で待機です。念の為黒井から入って、私が最後です。指示通りにお願いします」


何やら緊張した空気で、我々は指示通りに動いた。

まずは黒井、そして曼ちゃん、そして鉄、次は私の番。


少し低くなった地面の穴に両足をついた。

20秒ほど動かずにいたらガクンと下がり、そのあとはエレベーターのように一気に動いた。


暗い中、そんなに早くないだろうスピードで下がった先で自動ドアが開き、その先で3人が待っていた。


清潔な白い壁に囲まれた空間に出た。

ここから先が研究施設だろう。

研究員の男がきついて、奥に進む。


厳重なセキュリティゲートの先に、長い廊下が続いた。

左右にロックされた扉が並んでいる。

その一つにたどり着いた時、その部屋から眼鏡をかけた研究員がまた姿を現した。


「ご苦労、変わります」

「ご苦労、よろしくお願いいたします」


そんな会話をして、連れてきた研究員がどこかへ行き、新しく出てきた眼鏡の男が口を開く。


「いやどうも、葉加瀬です。こちらの対策室の研究員代表です。この部屋の管理責任者です」



ネームプレートを見せながら葉加瀬と名乗るその男は、私たち4人を見ると軽く頭を下げた。


部屋の中に入ると思ったら、また狭い通路だった。また奥に部屋がある為、とりあえずこの中の通路で待って、最初の扉の鍵をかけるようだ。


「扉が後2枚、その間にいろんなセンサーや感知器がありますので。それぞれ3分ずつ待機してください。出る時にも同じです」



黒井はなんだかソワソワ、ワクワクしているが、一応声に出さず控えている。


曼ちゃんはわからないので黙っているような様子。鉄もそうだろう。


「姫様の荷物は私が預かります」


姫の方に手を出したので、姫は言われた通り弁当を預けた。




「さて、中に着くまでにお時間あるので少しお話しをしましょう。

改めまして、皆さんのことを首を長くしてお待ちしていました。弟さんの鉄さん、そして新しい異世界の皆さん。改めて私は葉加瀬と申します。鈿さんの担当研究員です」



そう言って話し始めた。


「鈿様は元々、非常に高いエネルギー値を持っており、制御が不可能でした。初めてここに収容された時は、我々の研究員を何人も傷つけ、破壊の限りを尽くしました。異世界のこともわかっていない状況でしたので、色々混乱がありました。


初めの頃は色々話を聞くこともあったのですが、こちらの問いに答えるというよりは、彼の質問に答えることくらいでしょうか。


しかし、ある時期から急に大人しくなりましてね。この一年間、彼は一度も立ち上がっていません。




しばらく経って弟の鉄さんが現れて、2度、こちらで対面の時間をとりました。


1度目は2人で会話する時間が5分、その後喧嘩のようになってしまい、強制終了。

その時は室内に麻酔散布しましたが、おふたりとも効果なしで。壁を殴る等で部屋が壊れそうになったのでやむなく室内の酸素を抜きました。


おふたりとも意識を失うまで人間の倍以上の時間がかかりました。非常に興味深い身体の強さですね。


おっと、次のスペースに行きましょうか」


ひとつ目の検査終了とのことで、次の扉が開いた。

その先は椅子とテーブルの備えつけた小さなミーティングルームだった。



「ではみなさんこちらにかけてください。私は立ったまま失礼します」


次の扉の横に立ったまま待機している。

4人は言われた通りソファーに腰掛けた。



「2回目の対談の時は、2人とも手にちょっと小道具をつけました。

身体の色々を測定する機械ですね。何かあったらの保険でしたが、ついでに検査もできたらということでつけました。


そのまま話してもらいましたが、鉄様の声かけを鈿様が一切聞かず、まあ無視ですね。それでまた喧嘩のようになりかけ、機械から電気信号、えっとまあ感電ですね。ですが一向に気絶してもらえず、痛いと騒ぐ程度でして、また酸素を抜くという状況になりました。


その際の電子機器はなぜなのか不具合なのか、おふたりは測定不能でしたので、わかったことは電気では怪我の一つもないくらいでしょうか」


「痛かったよ」


鉄がぼそっと言った。


「それはありがとうございます。痛いけど平気ということで記録しておきます。


今回は3度目ですので、どうかと思っていますが、とりあえず皆さんガラス越しでの対面ということで話がついてますので、お願いいたします。


姫様だけは対面の許可がありますので、中に入りたければ可能です」


「私だけね。まあそれが無難でしょう」


姫は鉄と曼を見て軽く笑った。


「ははは。また喧嘩になると困りますので」

話しながら葉加瀬はゆっくりとした動作で腕時計を見た。


「では大丈夫そうなので、ようやく中に入れますね」


葉加瀬は一行を、頑丈なガラスで仕切られた隔離スペースの前に案内した。


ガラスの向こうには、広い空間に一人、静かに座り込む人影が見える。壁に背を預けたまま微動だにしない、それが鈿だった。




葉加瀬は冷静に状況を説明する。


「声をかけると、視線を向ける程度の反応はあります。でも、それだけです。食事も最低限しか口にせず、監視カメラで24時間体制で監視していますが、彼が何かをしようとする気配は全くありません。まるで、世界に興味を失ってしまったかのように……


我々は、おそらくですが体力の温存、冬眠のようなものと考えています。何かを待っているのか。それが何かわかりませんが、今回あなた方が来るということで、もしやと思ってすぐに話を進めさせていただきました。

このまま死んでしまうのではと思っているところもありますので……」



鉄は、ガラス越しに兄の姿を食い入るように見つめた。荒々しいほどに力強かった兄の姿はそこにはない。ただ、虚ろな目をした男が、まるで彫像のように座っているだけだ。


姫も近づく、その気配の弱さにため息が出たようだ。

「だいぶ弱っているわね」


「そうですね。それでお弁当をお願いしました。あなたのお食事はおいしいそうではないですか。

医療的には6年間ものを食べずに生きている状況はあり得ません。すぐに食事を食べたら胃が受け付けないでしょうが、その辺も普通ではないのでよくはかわかりません。食べたらいいなというところでしょうか」


「まあ無理でしょう。普通ならね」


姫が葉加瀬を見た。ニコニコとずっと笑顔のまま話すその様子に、姫は少し機嫌を悪くした。


「起きたぞ……」


鉄がガラスに手を当てて呟く。


3人の力の気配を感じたのか、鈿は顔を上げてこちらを見ていた。


「いつも見ていた鈿とは別人のようだな」

曼が言った。

その姿はやつれて覇気がなく、死を目前にした病人だ。


その時、姫もガラスに近づにきガラスに手を当て軽く叩くいた。


「久しぶりね、鈿兄様」


そう言って、姫は優しく微笑みかけた。

その瞬間、静止していた鈿の視線が、初めて姫に向けられた。その瞳には、一瞬だけ、微かな光が宿ったようにも見えた。


「ようやくきたか、花」


鈿が口を開いた。




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