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人鬼〜JINKI〜 時空の守護者たち  作者: 志摩
3、目覚める異世界の力

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22/27

山頂にある異界の落とし物とは、




「曼ちゃんどうだった? 大百足との戦いは」

「雑魚だな。曼龍があれば、なんともねえ」

「そうなの、体が大きかっただけか」


 それにしたって、今の私たちでは結構厳しい戦いだったように思える。

 大百足は雷に打たれたばかりのようで、少し煙が立っている。

 広場にあるドラム缶の光と、広場自体にも燃えている箇所があり、それなりに明るい。そして思ったより煙が上がっていて、火事のように見えなくもない。


 とりあえず広場の片隅へと黒井をそっと落とし、私も地面に着地した。

 

 大百足はほぼ炭のようになっている。砕いたら割れそうな感じだろう。

 曼ちゃんがこちらに歩いてやってきて、手刀を振る。その通りに雷の刃が飛んでいった。

 十数回それを繰り返すと、大百足の体を切り刻んでいき、転がっている体は小さな塊になっていった。

 切られても声を上げることもなければ、足が動くこともない。きっと体の中まで雷にやられて完全に死んでいる。


「もうこれで動くことはねえだろ」

 曼ちゃんも疲れたのか溜め息をついた。

 どすんと地面にに腰をおろした。おそらく単純に気力が足りない。そのせいで体力の消耗が激しい。

 私も大した速さではないのに、少し飛んだだけでかなり疲弊している感じだ。黒井を連れて飛んだせいもあるのだろうが、やはりこちらで力を使うと思っているより消耗するようだ。


 黒井はいつまで経っても地面に転がっていて、立ち上がらない。少し顔色が悪いようだ。 


「黒井、大丈夫?」

「気持ち悪いよ、姫様。この飛ぶやつ」


 どうやら空を飛んで運ばれたことで酔ったようだ。地面に丸まって静かにしている。

 黒井には慣れない経験だろう。自身で空を飛び、駆け回るなんて。暗い中で飛んだせいで、突然見えた木にぶつからないようにと、何度も急に方向を変えたりした。それもあって余計に酔いやすかったのかもしれない。


「ごめんね、黒井。私も人を運ぶことあんまりないのよ。次は気をつける」

「次は頑張って走らせて……」

 黒井が弱っている中、鉄が全く話に入ってこない。

 まだ衣服の中に虫があるのか何度かもぞもぞ動いている。服をめくってお腹を出したり、背中を出したり、ばさばさと衣服を動かしている。


「鉄はどうだったの?」

 鉄はすぐには答えない。

 まずフードと帽子を脱いだ。そして服の中に入っていた長い白髪の髪を出して頭を振った。どうやらそこに最後の1匹の虫がいたようだ。

 その虫を払ってから踏みつけると、ようやく質問に答えた。


「俺には何も、」


 悔しそうに言った。ただの一言だった。

 曼ちゃんにはある刀が、自分にはない。

 2人でよく稽古をしていたから、余計に辛いのかもしれない。

 曼ちゃんよりこちらで過ごすことが長い鉄は、何度もこんな状況を経験したのだろうか。苦労しながらもなんとか頑張っているのか。


「まあ、私たちも玉石様のおかげね。鉄がこちらにいて引き付けていてくれて助かったわ」

 鉄の方へと歩み寄っていき、肩をとんと叩いた。

「そっちは何とかなったようだな」

 鉄は頭をかりかりかいた。なんだか面白くないという顔をしている。

「ええ、でもやるべきことはあと1つ残っているの。山の上に何かがあるらしいから、それを見てこないといけない。まぁでも今日はこの片付けをしないといけないでしょうね」

 このあたりは虫の残骸が大量にある。広場だけではない、山の中にもあるし、もしかするとそれ以外にもあるかもしれない。

 虫とはいっても大きいもの小さいもの。明らかに普通のものではないものも混じっている。これを何もなかったところまで片付けないといけないだろう。

 大きな溜め息をついた音が聞こえた。黒井は丸まりながら、こちらの話を聞いていたようだ。


「これはどうやって説明するんですかねー。俺も困っちゃいますよ。雷に関しては絶対ご近所さんにも見えてるでしょうし。これだけ森も荒らされてしまったら、何かがあったって事は隠しきれません……どうしましょう。まぁやれるだけやるしかないでしょうね……」

 黒井は体調不良も重なり、思考がかなり後ろ向きななっていた。

「黒井、この煙とかも、思ったよりやばいかもよ。雷が落ちて山火事って思われてるかも……」

「まじすか……」

 黒井は黙ってしまう。その時タイミングよく端末から着信音がなり、黒井は何か覚悟を決めた顔をして、その着信を聞かなかったことにした。


「とりあえず、黒井は怪我はしてないの?」

「俺は大丈夫っす、吐き気だけ」

 なんとか上半身を起こし、地面に座った。

 端末を取り出して、画面を見て、がっくり肩を落とした。

 

 曼ちゃんがゆっくりこちらへ歩いてきた。

「片付けるったって、な。この数は多すぎだろ。人手は借りれるのか?」

「それはどうでしょうね。まぁここにいる4人でなんとかしなきゃいけないと思います!」

 黒井が明るく言った。

 無理にでもいつもの調子が戻って、なんとか頑張ろうとしているようだ。


「じゃあまずは虫を焼いてここをきれいにしないと。……朝までに?」

「それが無難ですね。人が来たら誤魔化せないんで」

「朝までって、もうすぐだろ?」

「そう、それがやばいっす。ああ4時過ぎですね、あと2時間。これどうにかなります?」


 幸い今日は火が焚いているから、虫たちを燃やすのは難しくない。運ぶのが大変なだけだろう。


「まぁやり方次第よね」

「2時間ってどのくらいだ? 俺はもう無理だ、寝るぞ」

「疲れたもんね」


 曼ちゃんは流石に疲れたのかそう言った。

 もしかしたら痩せ我慢をしているだけで結構辛いのかもしれない。なんだかんだで鉄と張り合うから、格好悪いところを隠したいのかもしれない。


「じゃあさっさとやりましょう!」



 曼ちゃんは部屋に戻し、とりあえず寝かせた。

 私と鉄の2人で、まずは箒で履き虫の死骸を集めて、あとはわたしの風の力を使って運ぶ。せっかくつけたドラム缶の火に入れて焼却していく。これでとりあえずは虫の大量死のような怪しい事件にはならないかな。

 虫の処理はできても、森の方はどうしようもない。

 雷によって焦げた木や、大百足の通った跡などはどうしようもない。この森周辺で雷の災害が起きた跡が残っていると説明するしかないだろう。


 力が万全なら木も草も同じように生え替わるまで戻せるのだが。雷の被害が酷かったと状況を見てもらって説明するしかないだろう、その辺は黒井がうまくやるだろうから後は任せるしかない。


 その黒井は部屋にはいって何度も電話をかけてはきりを繰り返しており、私たちと話すどころではない。何やら書類がたくさんあるようで、大急ぎで作りながらさらに通話。かなり慌てている様子だ。


 何とか朝日が昇る頃には虫の残骸入りは片付いた。

 部屋に戻る途中、職員室の様子を見るが、黒井がいない。どこかへ行ったのだろうか。

 私たちも疲れが酷く、とりあえずは眠ることにした。後は黒井が自分でやらなきゃいけないことだけなので、なんとかしてくれることを待つよう眠った。





 ▪︎ ▪︎ ▪︎




 私が気がついたのはお昼過ぎだった。

 単純にお腹がすいたこともある。

 空腹すぎると眠れないで起きてしまうらしい。

 

 曼ちゃんはまだ眠っていた。慣れない環境で疲れたこともあるだろう。ここでの戦いは回復が酷く遅い。まだまだ力が行き渡っていない世界の中で戦う事は難しいのだろう。

 ただあの大百足や、連れてきていた虫妖怪たちを倒したおかげで、この辺には少し妖気が散らばっている。少しずつなら土地の力で浄化されるかもしれないが、ここまでのもので、かつ瘴気を孕んでいるものはなかなか難しいだろう。

 それにきれいに浄化できればこの土地に良い養分となるだろう。それは私の仕事になるだろうから、しばらくはここへ残って浄化作業をしなければ。

 昨日は夜でも無理をしたが、陽のあるうちに山頂へ行きたい。暗いとその分疲労も増える。できるだけ早く確認に行きたいのと、疲れた辛いのとで気持ちは半分半分だ。


 この大百足が、今回の虫騒動の引き金となっていたのなら、これ以上のこの虫騒ぎが起きる事はなさそうだ。

 山頂を探索に行くときには、一応曼ちゃんと鉄も一緒に行ってもらったほうがいいだろう。

 黒井はどうしようか、仕事が一段落していたら連れて行ってやるのもいいかもしれない。


 でもとりあえずはご飯を作って食べよう。ここでは誰も食事を作らないから。


 私が1人で食事の用意を始めると、しばらく経って鉄が覗きに来た。

「腹が減った」

 それだけ行って、火の側へ来た。米の炊ける匂いがしたようだ。やはり鉄もお腹がすいたようだ。


「黒井は見かけた? どこに行ったか知ってる?」

「知らん。仕事でもしてるんじゃねーのか?」


 それもそうだろうが、姿が見えない。あれだけ大きな騒ぎを起こしたのだから、色々手続きやら何やらあるのかもしれない。

 ここに確認に来る人もいなかったし、消防や警察の調査も来ていない。

 火事としても事件としても無かったことになってあるのだろうか。



 それにしてもここには米と野菜しかないので、またおにぎりと味噌汁だ。何かおいしいものが食べたい気がするんだけど、それも難しいのかと諦める。


 とりあえずみんなが食べられるように多めのおにぎりを握る。



 ようやく食事の準備ができた頃、曼ちゃんがやっと起きてきた。

「腹が減った」

 やはりみんなお腹が空く。回復しきれない力を体でなんとかしようとしているのだろうか。ご飯から少しでも体力、気力が回復できたらいいのだけれど。


 それにしても黒井は一体どこに行ったのだろう。朝の片付けの時からしばらく姿を見ていない。

 ここから勝手に出るわけにもいかないし、山頂に行くのはどうしようか。声をかけてから行きたいのだが、私たちも会ったばかりで、連絡先さえも知らない。


 とりあえず食べようと職員室で3人、食事を始める。






「お前らは結局どうやって力を手にしたんだ?」


 おにぎりを3個ほど食べ終えた鉄がきいてきた。


「土地神様の玉石様が力を分けてくれたの。鉄の言っていた湧水のある近くだろうね。そこに大きな岩がある。それがご神体だった。あの辺は神域になっていて、おそらく水も浄化されるようになっていたんじゃないかな。

 今はもう、玉石様も、私たちに力を渡しために動けないだろうから、あの辺もこれから荒れてしまうかもしれない。

 昨日の大百足の体から出た力を浄化して、土地に馴染ませれば、玉石様も早めに回復するかもしれない。

 それまでは私はここにいるようだと思う。ここを代わりに守るって約束もあるし。


 でもそれよりもわまず一度は山頂に行かないと。私たちのところから何か落ちてきたって言っていた。それを確認しないといけない気がする。

 いいものか悪いものか、その話もしていないし、確認だけでも行かないと。

 何が落ちているんだろう。私にまつわるものと言っていたから、悪いものではないと思うんだけれどそればっかりはわからないから」


「でもあれだろ。この辺が神域って事は悪いものじゃあねーってことだろ。悪いものがあるまま神域にはならなねえ。

 むしろ浄化の手助けをしているとかじゃねーの?」


「それならいいんだけどね。私の力が何かの役に立っているならいいな」

「まあ誰かに使われてるってことはないだろう。こっちにはいないんだろ?」

「ああ、俺はしばらくこっちにいるが見たことねえよ」

「……全く、黒井は早く帰ってこないかな? どこにも行けないじゃない」


「ーーはい! ここにいます!」


 どこからか黒井の声がした。


「どこにいるの? 黒井」


 黒井の声はすごく近くから聞こえた。

 ーードカン、と何かがぶつかる音がした。


「痛い!」


 何かと思うと、職員室のテーブルの下で、うねうねしている黒井がいた。

「そこにいたのか」

「鉄匂いでわかんなかったの?」

「いや、黒井の匂いはそこら中にある。ただ飯に集中して、ちゃんと探してはなかった」


「ーーここで仮眠のつもりが……だいぶ寝てしまったようで。なんか今、話し声が聞こえて、寝るのか起きるのか、うとうと? していたのかな。急に気がついて、頭を起こしたんで、ぶつけてしまいました」


「じゃあ黒井がいるなら、ご飯食べてすぐに山頂に行きましょう。それで何があそこにあるのかはっきりするし。黒井がいれば何かあっても収集つくし。それでいいでしょう?」


「いや俺もう今日は働きたくない……みんな先にご飯食ってたんすね。ずるいなぁ」


「いや何も言わずに見えないところにいるのが悪いでしょう」


 黒井は疲れた顔で穏やかに笑っていた。








 とりあえず、黒井におにぎりを食べさせて、すぐに向かう準備をした。

 もうすぐ5時になってしまう、このままではすぐに日が暮れてしまう。この雲の感じだと夕立になるかもしれない。早く行って帰らないと。

私たちはすぐに山頂へ向かった。



 玉石様の所まではまっすぐ迎えた。明るい時間なら頑張って30分、そこから山頂まではなんとなく歩いて行くしかない。

 黒井が端末を持ってきていて、そのGPSを使っておおよその場所へ向かう。

 調べてみると、玉石様がいるところはもうほぼ山頂だった。そこから歩いて10分もかからないところに開けた場所があった。


 この一帯だけ木が一切生えていない。草も生えていない。なんだか少し怪しげな場所だった。

 周囲100メートルくらいはひらけているだろうか。



「山なのに、どうして草も木もないんだ」


 珍しく曼ちゃんがまともなことを言った。


「そうね。ここは山なのに、焼け野原のようだわ。こんなに近いのに、昨日はよく分からなかったのね」

 

 この中心に何かあるかもしれないと、私たちはそこまで歩いてみる。

 草も木もない場所はほぼ円状に広がっていたので、おおよその中心へ向かってみた。


「ぱっと見、ここには何もないっすね」

 

 中心に行っても、ただの地面が続くばかりで変化は見られない。


「なんとなく何かあるとはわかるんだけど。一体どこ?」


 みんなどう思うのだろうか。鉄と曼ちゃんと、顔を見てみる。


「なんだろうなぁ。何かはある気がするんだが」


 曼ちゃんにも何か感じられるようだ。

 鉄は首を振っている。特に何かの気配は感じないらしい。


「まぁでも、俺の目でも、何も見えないっすよー」

「いやね、本当に、誰の目にも何も見えてないのよ」


 黒井がボケたつもりで言ったのだろうが、私の目にも見えていない。

 曼ちゃんも鉄も、何も見えていない。

「なるほどー。4人とも、見えているものは同じってことですね! 了解です」


 そう、ここには何もない、目に見える限り。どこかに何かが隠されているのか。目を凝らしてみても、隠された形跡や封印の跡は見つけられない。


 鉄がくんくんと嗅ぎ回っている。もしかすると匂いで何かがわかるかもしれない。

 私と曼ちゃんもぐるっと回ってみるが、特に何も見つけられなかつた。


 鉄を見てみたが、やはり首を振った。


「特に変わった匂いはねえ。土の匂いだ」


 どうしようかと、みんなでまた中央に集まってみる。

 すると黒井が口を開いた。


「うーん。ここはただの土があるだけっす、かね? それとも掘ってみます? 昔、何か落ちてきた系だと、埋まってるかもしれないっすよ?」


 確かに、見えないだけである、というのは地中の可能性もある。しかし、

「確かにそれはあるかも。でも誰が掘るの?」

 穴掘りは想定していない、掘るための装備はない。これからは難しいのではないか、それとも明日再度来てみるか。

「あぁ掘るものが何もないっすね。……ここほれワンワン?」


「それ犬か? じゃぁ鉄だな」

「俺かよ、お前が曼龍でぶっぱせばいいじゃねーか」


「いや曼ちゃんがやったら、この辺全部、吹っ飛ばすかもしれないよ」

 

 曼龍は大きな雷を使う技が多い、あんまり使ってこの辺の地盤に大きくひびを入れてしまったら取り返しがつかない。

「あの、ここはもう自然災害多すぎてますんで。できれば控えめにお願いしたい」

 黒井からのお願いもあった。

 曼ちゃんの方を見ると、少し考えるような仕草をした。


「じゃあ力も足りねえことだし、控えめにやってみるか」


 左手を握り、体の前に構える。右手のひらをその拳の少し下に添えて、瞼を閉じ、集中し始めた。

 拳に少しずつパチパチという音が鳴り始め、それが大きくなって小さな雷が無数に出始めた。


「じゃあまず一発」


 そう言って、自分の足元に向かって拳を振りかぶった。地面を殴ると、ばりばりという音がして、小さな亀裂が入り、細かい土が弾け飛んだ。

 曼ちゃんはその拳を5回ほど周囲に落とし、あたりは少しだけ地面がめくれたようになった。

 4人で手分けしてはじから中心に向かって進むように、少しだけ割れた土の塊を動かし、何かないと探し回る。


 最後の中心部、そこに土ではない固まった何かがあった。

 少しだけ割れて削れた土の隙間、棒のような何かが顔を出していた。少しだけ露出したことによって探しやすくなった。とりあえずとその周りの土を避け、再度曼ちゃんが握り拳で雷を放つ。

 また少しひび割れた土を避け、鉄がその周りを掘ると、違う場所にもで棒のようなものが出てきた。もしこの2か所の棒が繋がっているとしたら3メートルくらいはあるだろうか。


 棒の近くだけを攻めるように掘ってみると、ようやく20センチほど先が出てきた。棒自体を握りやすくなったので、曼ちゃんと鉄が、その棒のようなものをひとつずつ掴み、とりあえずお互い反対の方向へ引っ張ってみた。


 すると、どうやらその棒は別々のものが2本あったようで、2人とも抜けた衝撃によって後ろに飛び、尻餅をついて転んだ。


「これがあったんすね、なんですか? 土にまみれてよくわかりませんね」

 

 私ははっとして、鉄の持っているものを渡してもらった。丁寧に固まっている土を剥がしとっていくと、それは刀のようなものだった。

 私はより丁寧に土をとり、曼ちゃんの持つものも同じように土を払ってもらう。


 出てきたのはおそらく日本刀。それが2刀、この鍔の形、そして手に馴染む感じ。


「いやこれは……多分、紅蓮だわ」


 これは知っている。こちらの私も夢でちゃんと見たから。


「紅蓮っていうのは、誰でしたっけ?」

「こいつ式神だ」

 曼ちゃんが私に刀を渡した。


「でも中身がない……力があまり感じられない」

 

 刀は硬く閉じていて、抜くことはできない。ここでは状態を確かめることは難しい。

 そして日が暮れてきている、明かりも不充分だ。


「これは姫の刀だろ。お前の火の式神が依代にしている。いつも持ってたやつだろう」

「確かに、これは紅蓮の刀よ。でも不思議なの、紅蓮の力を感じない。どうしてだろう」


「お前らも力が足りないんだから、同じじゃねーの?」


 鉄が言った。確かにそうかもしれない。私たちでさえうまく力を使えない。私から力をもらう式神はもっと力が足りないのかもしれない。


「そうね……。もう暗くなるし、一旦帰りましょ」


 それにいつからここにいたのだろうか、こんな地中に埋まっていて、地表からは何も見えない状態だった。

 私はぎゅっと2本の刀を抱きしめた。


「まぁ探し物も見つかったことですね。とりあえず帰りましょう。記録を遡ってみたら、隕石的なのが降ったような記録があるかもしれないし。それをさかのぼってみるのもありっすよね。まあ詳しく調べてみましょう」


 陽が山の向こうへ沈みかけて、辺りが橙色に染まった。

 私は刀を抱きしめたまま歩いた。


 4人はそのまま山を降りた。

 



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