決着、大百足戦
「黒井、あなたは私と行くわよ」
姫が黒井の体を浮かせ、くるっと体を回した。バランスが取れず、空中でころんと転がった。
「え! なにこれ!」
慌てる黒井はそっちのけで、姫は玉石様へ向かって深く礼をとって頭を下げた。合わせて曼も頭を下げる。
2人は頭を上げると、百足の気配を探り、その方向を確かめる。そして、視線を通ってきた道の方へと向けた。
「鉄の方へ行った感じだな」
「ええ、こうなったら一番狙いやすいのは鉄でしょ。先に行ってていいよ。黒井は連れていくから」
姫と黒井はささっと木の間を抜けて飛んでいった。
曼は曼龍を空へと掲げ、しっかりと両手で握った。
「疾雷」
曼が唱えると、曼龍が激しく輝き、そのまま空に浮かぶ。そして素早い稲妻となって、右往左往しながら宙を飛んでいく。曼も一緒に稲妻となって瞬く間に飛び去っていった。
「あれだ!」
あっという間に校舎の上空まで戻ってくると、曼の眼下にはもう大量の虫たちが群がっている山のようなものが見えていた。
曼龍は後者の近くの広場に落ち、ぐさっと地面につき刺さった。
曼はうまく着地をして、そのまま曼龍を握りしめ地面に向かって叫んだ。
「狐の松明」
曼を中心にして、地面に這うように赤っぽい雷が無数に伸びていく。それは少しずつ空に逃げていき、あたりにいる虫たちを攻撃していく。曼を中心に大きな赤い花が咲いたようだ。
大方の虫たちが雷に焼かれ灰になっていったが、広場の中心の方にまだ虫の群がる山があった。
「あれだな」
曼はにやりと笑うと右手で手刀を作り、その虫の山へと向けた。
「行けっ!」
指先から細い稲妻が飛んだ。虫の山に当たり、大量の虫が弾け飛んだ。
「痛え!」
虫の下から鉄が出てきた。
まだ体には虫がいくつもついていて、払っても体を埋め尽くそうと這い上がってくる。
「くそっ! 曼、もう一発やれ!」
鉄が暴れながら叫ぶ、その最中にも体を虫が埋め尽くしていく。
「おうよ!」
再度稲妻が放たれた、先ほどより少し大きな稲妻が飛んだ。
ばちばちと、虫の弾ける音がした。
鉄はまた虫がつく前にと両腕をぶんぶん振り回して、その場から動こうとするが、足についている虫が離さない。
「ダメだ! 足が動かねえ!」
上体を振りすぎたのか、そのまま後ろに倒れていく。
地面ではなく、群がる虫の上に倒れた鉄は、また虫たちに飲み込まれていく。
「あほだな」
曼が呆れて再度稲妻を放とうとすると、急に虫たちが動きを変え、曼のところにも集まり出した。
慌てて自分の足元に稲妻を放ち、近づいてくる虫たちを弾き飛ばしていく。
「くそ! しつこい!」
苛ついてきた曼は曼龍を抜くと、大きく振った。
「雷龍翔!」
大きな雷の龍が出てくると、曼のまわりをぐるぐる回って虫を弾き飛ばし、焼いて灰にしていく。
「あっちもだ!」
曼が叫ぶと、鉄の方にも飛んでいく。
すると鉄の後ろには雷によって照らされた大百足の姿が見えた。
『犬神! 食ってやる!』
大百足は足をじたばたさせて鉄に飛びかかる。その時ちょうど雷龍翔とぶつかった。
『ーーーー』
うまく聞きとれない、何かを叫びながら、大百足は弾き飛ばされ、回転しながら森のも方の木へぶつかった。
「もう一発だ! 雷鳥-滑空」
鳥が大きく翼を広げて飛んでいく。
大百足は体勢を立て直してまた逃げようとするが、大きな羽で逃げるのも間に合わず、そのまま雷鳥に打たれた。
雷が落ちたような大きな音が響く、地鳴り、地震も併発した大きな衝撃が走った。
大百足は沈黙したようだ。
鉄に群がっていた虫たちは少しずつ飛び去っていき、わずかに残ったものは鉄が叩き落とした。
「丸こげね」
黒井を飛ばしながら、ふわふわと飛びながら2人は帰ってきた。大百足の倒れたところの後ろの方から帰ってきたので、ほぼ焼けて炭になっている状態だった大百足がよく見えた。
曼は曼龍をしまって一息ついたところで、鉄はまだ少し体にくっついて離れない虫を叩き落とし続けていた。




