赤い花と少女
五百文字制限企画に参加予定の物語です。
深い森の先に、赤い花が咲き乱れる草原が広がっている。金属製のレールの様な物が何本も縦断し、遥か遠くの古代遺跡まで伸びている。
このレールや遺跡が、いつ、何の為に作られたのかは誰も知らない。
先程から激しい雨が降り続いていた。
赤い花たちの中央で、全裸の少女が瞬きもせずに立っている。
そこへ腹を減らした雄の熊がやって来た。少女を見付け近付いていく。
少女は目の前。熊はヨダレを垂らしているが、少女はずぶ濡れのまま、微動だにしない。
熊は鼻をヒクヒクと動かした。すぐに己の過ちに気付き、森に帰って行った。
しばらくすると、今度は男がやって来た。盗人。
遺跡に金目の物があると踏んでいる。
全裸の少女を見付け驚く。
美しい顔、身体を水が伝い続けている。強烈な色欲に襲われ、走り寄る。
「なあ、あんた……」
その声を聞いた少女は笑った。男が恐怖を感じた瞬間、地面から生えた巨大な蔓に引きずり込まれた。
悲鳴さえ上げられなかった。
新たな赤い花が、正確には赤い雄しべが一本生えてきて、やはり赤い花粉を空に向かい噴き出した。空中で雨と混ざり、少女に降り注ぐ。少女は血まみれに見える。
この植物の雨の日にしか出来ない、狂った受粉が終わった。
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