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始まりは友より送られる

更新費度はかなり遅めです。


 

――¨エボリューション・グロウワールド¨



 あるゲーム会社と研究機関が手を取り合い、人類の新たな幕を開ける為に作られたVRMMORPG。つまりは、ゲームだ。

 一度はプレイしたいゲームランキング、一位。現在最も熱い神ゲーランキング、一位。世界が望むゲームランキング、一位。今最も入手困難なゲームランキング、一位。

 一年前に発売されたこのゲームは、あらゆるランキングで堂々の首位を飾る。


 プレイするにあたって、そのプレイヤーの遺伝子情報や現実の個人情報に関する契約を結ばないといけないといった特殊性もあり、入手難易度は絶望的。特別なサーバーに関するあれこれもあり、世界同時で一度に販売される本数は僅か十万本。発売から一年経った今でも再販開始0.5秒でそく完売と言った、最高品質の回線環境を整えている豪富も無理だろと匙を投げる程だ。……だからこそ、このゲームを手に入れる事が出来た人はゲームの神様に愛されている神運の持ち主と言ってもいいだろう。




「――その神運の持ち主さんがなんの用事でぇ?自慢とかなら外道な手段も厭わない。」


 耳にかけるタイプの現実拡張機器、通称¨ARフォン¨が瞳に映すホログラムを通じて話しかけてくる相手、神運によってエボグロを手に入れている友人を妬み多め怒り固め怨みマシマシで睨みつける。


『いやいやまさかそんなハハハエボグロ最高っ!』


「よし分かった。貴様には新しく知り合ったソッチ系オネイのフレンドを紹介してヤロウ。おっと勿論遠慮はいらないぞ?あの人は貴様のファンらしいからな。」


『すみませんでした。』


「……で、実際の所マジでどうしたんだよ?いつもはメッセージで済ますお前が、いきなりホロ通で掛けてくるなんて珍しいじゃないか」


 ホロ通とは、呼んで文字の如くホログラムで相手の姿を認識しながら通話する機能の事だ。この友人はリアルの事情もあり、普段はメッセージでやり取りをしている。


『―貴様に神の恵みを与えよう……って、言ったらどうする?』


「はっ。」


『一秒のラグ無く鼻で笑いやがったな……まあいいや。本題に入ろう。――ヒアト、¨エボグロ¨をやりたくはないか?』



「…………は?」



 衝撃の言葉と共に友人から送られてきたのは、エボグロ、正式名称¨エボリューション・グロウワールド¨のソフトデータだった。

 何故もう一つ持っているのか、どうやって少し面倒な契約関係を俺なしでクリアしたのか等色々と言いたい事は有るが、疑問の濁流を飲み込んで一言。


「貴方が神か?」


『言ったろ?神の恵みを与えようって。滝の如く感涙しながら我に感謝するがいいぞ』


「はっ!この恩は決して忘れませぬ。何なりとお申し付けください、神よ!」


『うむ、良きに計らえ。……と、茶番はこのぐらいで。』


 ゴホンと仕切り直す為に咳を吐く友人、岩崎海を見て、俺、光愛糸も¨エボグロ¨のソフトが手元にある事による興奮を何とか押さえてイスの上に正座して姿勢を正す。


『今お前に送った¨エボグロ¨はある大会の優勝景品でな。俺は半年前に運よくゲットしてもうやってるし、どうせならヒアトに送り付けて大恩を押し付け……んんっ、一緒に遊ぼうと思ってな?お前の妹である愛華ちゃん協力の元、この¨エボグロ¨を譲ると言う訳だ。』


「ああ、だから契約関係を突破できたのか」


『愛華ちゃんに感謝しとけよ?おにぃに早くプレイして欲しいからって、運営会社まで足を運んでたんだからな。………健気で可愛い妹を持つ兄は爆発すればいいと思う』


「ハハハっ妹最高!後で好物の俺特性オムライスを作ってやらねばなぁ!知ってる?内の天使、学校で出たこの世で一番好きな料理はなに?って言う質問に、「おにぃが作るオムライス」って答えてたんだぜ?……可愛い過ぎかよ」


『知っとるわ!何度お前に妹自慢を聞かされたと思ってんだ、このシスコンゲーマー!』


 一つ、¨エボグロ¨関係における面倒な契約を抜ける裏技みたいなものがある。それは、家族が代わりに買う事だ。

 

 契約は、購入者又は購入希望者の親族にのみ代行を許可されている。これは¨エボグロ¨をサプライズで家族にプレゼントしたいと言う人向けのサービスで、実際にプレイをする者の遺伝子情報や個人情報を契約時に会社へと届け、自身が対象の家族であると言う証拠を示す事で受ける事が出来る。

 

 システム敵犯罪やハッキングと言った者が撃滅されている今の時代、基本的に大事な契約でもネットを通じて行う事が出来る。しかし、重要度が高いヤツ程完了までに時間が掛かってしまう。その為、直ぐに契約を行いたい時は現実で契約相手の元まで向かうのが一般的な営業と成っている。

……今の季節は日差しが燦々と照らされる暑き夏。一歩踏み出すだけで汗が噴き出す暑さの中を進み、運営会社まで足を運んでくれた天使には感謝しかない。


『確かそっちは夏休みに入ったばっかなんだろ?お前なら、それくらいあればすぐに最前線まで来れるだろ。だから今¨エボグロ¨を送ったんだ。』


 十七までの人生の八割をゲームに注ぎ込んで過ごして来たんだ。準廃人ゲーマーとしての経験を活かし、夏休みの間一日中ログインすれば一年の遅れを取り戻す事も出来るだろう。


『この夏はエボグロ三昧ってな!一緒に遊ぼうぜ?』


「なら、この¨エボグロ¨は有難くもらおう。……待っていろ、直ぐに追いつく。」


『―ああ。お前たちがどんな成長を遂げるか楽しみに待ってる』






 データ譲歩のあれこれを手早く済ませ、海とのホロ通を終える。¨エボグロ¨のソフトデータをチェアタイプのVR機器に読み込ませる間に、仕事で外へ出ている妹へ感謝、俺以上にゲーマーである母には自慢のメッセージを送って完了まで待つ。勿論、VRにインするにあたって必要である水分+栄養補給とトイレの事前行動も済ませてある。


「……トイレよし。水分よし。もしもの為の安全装置、よし。」


 一人用ソファの様な身体に出来るだけ負荷を掛けないふわふわのチェア型VR機器に座り、機器の本体とも呼ばれるバイクのヘルメットみたいなVRドライブヘットを被る。


「世界ランキング一位を飾るゲーム、¨エボリューション・グロウワールド¨……楽しませてもらうぜ!――<アナザーリンク>!」


 世界で一番楽しいと呼ばれる神ゲーをプレイできる喜びと感激を胸に、現実からVRへと意識を飛ばす魔法の言葉を放つ。そして、意識は現実から仮想へと移っていく。



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