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夜になると  作者: 壱
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第2ラウンド

僕は昨夜の敗北のあと、考えた。

まぁ、単純に木製の椅子がダメならもっと硬くて頑丈な物でガードするしかない。


家の中を一通り見たが、それに適した物はうちには無さそうだ。

調達するしかない。コンビニバイトのフリーターの僕にとってはあまり余計な出費はしたくないところだが、あいつとのドアノブ攻防戦に勝利して、安眠を取り戻す事ができるならと自分に言い聞かせる。


とりあえずホームセンターに足を運んだわけだが、木材より硬いもの。

石か?鉄か?


あの幽霊はなぜうちのドアノブを?

借りる時に事故物件なんて聞いてないぞ。

事故物件って表示義務はあるけど、一度でも誰かが住んでしまえばその後は表示義務は無くなるってどこかで聞いた事あるような。


いや、そもそも、うちだけなのか?

他の部屋には被害はないのか?

無いのなら、やはり僕が住んでる部屋が原因という事になるわけだが、不動産屋に聞いたら何か教えてくれるだろか。


色々と考えながら、ホームセンターを歩きまわっていると、あるものに目が止まる。


確か、玄関の床からドアノブの下までおよそ80センチ。

こんな事もあろうかと、一応計測してきたのだ。

これなら縦に2つ積めば、ちょうどいい高さになる。


いや、縦だと少し不安定だ。

横に置いて積むなら、4つ必要か。

その方が安定するし、確実性は高い。


僕はコンクリート製のブロックを4つ専用の台車にのせ、レジで会計を済ませた。


購入したコンクリートブロックは

40センチ×20センチ×15センチの大きさで作られており、一般的にブロック塀として積むように並べると、20センチの部分が高さとなるので、4つ積み上げれば床からドアノブまでの高さにちょうど良い具合になる。


僕は一応車は持っているので、家に持ち帰るのは苦労しなかったが、車から3階にある僕の部屋に運ぶのが一苦労だった。


うちのマンションはエレベーターが設置されていない。ひとつの重さが15キロ近くあるコンクリートブロックを運ぶのは普段あまり運動しない僕にとっては、かなりの重労働だった。


これから、バイトに行かなければならないのでブロックの設置は帰ってきてから行うことにした。


連日のドアノブの音のせいで、寝不足が続いているので、バイト中もついボーッとしてしまう。


バイトが終わった。

今日は22時あがり。

これから、家に帰ってすぐに奴との闘いに備えなければ。


家に着くと、バイト先のコンビニで買った弁当と栄養ドリンクでエネルギーを補給した。


よし、さっそくコンクリートブロックの設置に取り掛かろう!


目論見通り、コンクリートブロックはドアノブと床の間にキッチリ収まり、完全にドアノブを固定した。


これはまるで敵の侵入を防ぐために完璧な城壁を築き上げだ戦国大名の気分だ。


「よし、これで完璧だ!今日は戦況を見守る事にしよう」


戦闘開始まで、あと1時間。



夜中の1時を少し過ぎた頃、微かだがドアノブの動かす音が聞こえた。


「戦闘開始の合図だ」


それにしても、ほぼ毎日同じくらいの時間にヤツはやってくる。時間に律儀なやつだ。


コンクリートブロックの効果は絶大だった。

ドアノブはビクともしない。

僅かに動いてるのは見えるが、音はない。


「勝った!この戦、もらった」


しかし、勝ちを確信するには早かった。


バキッ!メキメキッ!ガキンッ!


激しい音が鳴り響いたあと、いつも通りの聞き慣れた音が鳴り響く。


ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!


「何が起きた?なぜドアノブが動いているんだ?コンクリートブロックは割れていないし、動いてもいない。僕が築き上げたブロックによる城壁は完璧だったはず」


ドアに近づき、確認する。


「そうか、わかった。確かにコンクリートブロックは完璧に城壁の役割を果たした。しかし、ドアノブが耐えられなかったのだ。ドアノブが上を向いて曲がっている。ヤツの力に耐えきれずドアノブが負けたのだ」


僕は上に曲がってしまったドアノブをただ眺める事しか出来なかった。


ガチャガチャ、ガチャ、ガチャ!


やがて、ドアノブの動きは止まりヤツは去って行ったようだ。

ヤツの姿を見たわけではないが、勝ち誇った顔をして去って行く姿を想像した。


やはり、凄まじいパワーだ。某少年マンガの主人公の最大の敵、妖怪兄弟の弟の姿を想像する。それ程の圧倒的パワー。力こそが全てだと打ちのめされる結果になった。


内側のドアノブが曲がってしまったので、外側のドアノブがどのような状態なのか気になった。


コンクリートブロックの城壁を撤去し、ドアを開けようとした。


「あれ、開かない!」


ドアノブは完全に破壊され、いかれている!


まさか、外に出られない?


これは、まさか中に閉じ込めて食料が尽きるのを待って餓死させるという兵糧攻め?!


ここは3階。ベランダから逃げることも不可能だ!


ヤツめ!まさかそんな姑息な手段を取るとは!


水道があるから水は確保できる。

しかし、食料は買い置きするタイプではない。むしろ、コンビニの弁当ばかりを食べている。これだと、もって3日か!


「くそっ!なんてことだ!一体どうすれば!考えろ!考えるんだ」








翌朝、不動産屋に連絡して、外から助けてもらい、ドアノブを交換してもらった。


「一体、どうやったらこんな壊れ方するんですか?」


「いや、ちょっと力込め過ぎちゃって、はい、ご迷惑をおかけしました」頭を下げながら思う。

幽霊に兵糧攻めにあったなんて、言えない。


「あなた、相当な力ですね。こんなにドアノブが捻じ曲がるなんて」


「あの、ちょっとお聞きしたいんですが、このマンションって何か妙な事が起こるとか、そんな噂って聞いたことないですか?」

恐る恐る僕は聞いてみた。


「んー、今までそんな噂は聞いたことはないけど。何か妙な事があったんですか?」


「いえ、何にもないです。大丈夫です」

今はまだ言わない方が良いだろう。


「それじゃ、気をつけてくださいね。力込め過ぎないように」

そう言って不動産屋は帰っていった。




ドアノブ交換費用約4万円。

一般体型なのに、ドアノブを破壊するほどの力持ちバカだと不動産屋に認識させてしまった恥辱。

僕へのダメージは相当なものだった。


今回も完敗だ。


第2ラウンド後の戦績

0勝2敗。


まだまだ、僕と幽霊のドアノブ攻防戦は続く。





















読んでいただきありがとうございます!


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