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救世/献身/酷薄

 えぇ、いきなり超有名ラノベシリーズのテクニカルタームで例えられても困るんですけど。

 ニュアンス的に理解できるけれど、そういう層の知識に疎い人に言ったところで首を傾げられて終わるだろうし。

 そう言うと、

「いいのよ、分かる人にさえ分かれば」

 開き直っていらっしゃる華恋さん。

 あ、そうですか。

 別に、どうでもいいですけれどね。

 世間はあなたと同じ趣味の方ばかりじゃないということを理解して発言されたほうがよろしいと存じますがあなたがそれでいいのであれば、まあよろしいのではないでしょうか。

 あんたの中ではな!

 ふう、深呼吸。

「それで、世界の敵っていうことはこの世を破滅に導く活動に彼は日々邁進されている、ということですか?」

「……なんか、切れちゃってない、この娘。まあ、いいけど。あいつはね、存在するだけでこの世を滅ぼしてしまう危険な存在なのよ」

 うん、なんの説得力もない。

 確かに、あたしが経験してきた一連の非日常的な異能は驚くべき事象だし、実際に驚いてきた訳だけれども、それを以てしても言いがかりに聞こえるというか……。

 一個人が為しうる所業を遥かに超えていると思う。

 まあ、あたしにしたことは許せないけれど。

 そう言うと、

「うん、信じられないっていう気持ちもわかるから私としても強く言えないわね。それじゃあ、私が経験してきた記憶を見れば信じられるかもね」

 香月、お願い、の一言で再び行われる能力の行使。

 華恋さんと香月さんの周りにスクリーンが表示された。


☆ ☆ ☆


 どうも、名も知らない君へ誰でもない俺がお届けするキボウチャンネルの時間だよ。

 さて、今回はね、この世界の危機が迫っていることを報せるためにこうして君の夢にお訪ねしたって訳さ。

 え、所詮は夢の話だろう、って?

 だが、事実なんだよなぁ、これが。

 だから、これから、君にこれから訪れる終末ってやつを疑似体験してもらおうと思うんだ。

 君にだけ特別だよ。

 ん、遠慮はいらないよ。

 それじゃあ、終末の世界に逝ってらしゃい!































































 お帰り。どうだった、終末の世界は?

 死ぬかと思った?

 いや、あそこでは死ぬなんて贅沢は許されないよ。

 だって、存在自体を完膚なきまでに消されちゃうんだからさ。

 そしてこれを引き起こすトリガーとなる存在が彼。

 うん、容姿的には僕とそっくりだね。イケメン君だ。

 白Tシャツにジーパンなんて無個性なファッションを好むみたいだけどそこまたいいよね。

 あ、いま濡れちゃったでしょ。

 いいな、ってちょっと思っちゃったでしょ。

 お薦めはしないけどね。

 だって、世界を()()()()()()のなら彼とは関わらない方が良い。

 だけど、僕はそれを強制したりしない。

 なんだったら彼と付き合うなりして世界が終わるその日まで幸福な日々を送ってもいい。

 その日まで彼とヤリまくって自堕落に終末を迎えたっていいんだ。

 どちらを選ぶかは君次第。

 それじゃあ、ばいばい。


☆ ☆ ☆


「最っ低! 何、この男! マジで死ねばいいのに!」

 記憶の上映が終わった後にあたしの口から自然と出た言葉がこれだった。

 見た目はすごくいいけれど、喋ってる内容が最悪すぎる。

 生理的に受け付けなくてとにかく無理。

 ああ、未だに鳥肌が立って堪らない。

「うん、すっごい気持ちはわかるよ。気持ち悪いよね、あいつ」

 香月さんはうんうん、と頷き、

「だけど、いま体験した終末ってやつは本当にヤバかったでしょ」

 確かに、あれはヤバかった。

 体全体が一瞬のうちに溶けて消えていく。

 何もない白、すべての存在を上書きする圧倒的白。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 一切の存在を許さない完膚なきまでの漂白。

 そして、何より恐ろしいのはスクリーンを見ているだけのあたしにも強制的に終末を体験させてしまうあの規格外の存在だ。

 あいつがラスボスって言われてもなにも驚かないけれど、きっと違うのだろう。

 あれは、この世界から逸脱した存在だ。

 陳腐な言い方をすれば、神。

 故にこんな形でしか干渉しないし、できない。

 そう、あたしの意識の奥底(ゴースト)が囁くのだ。

「だから、あいつだけは絶対に私の手で殺さなきゃいけない。あいつが生き返らなくなるまで何度だって殺して――」

 きっと、この世界を救ってみせる。

 華恋さんは誰に言うでもなく――いや、きっと自分に言いきかせるように、そう宣言した。

 そう、なんだ。

 だけど、こんなどうしようもないことを2人の少女に背負わせる世界ならいっそのこと――


 滅んでしまっても然るべきなんじゃないだろうか。


 自分でも驚くぐらい冷めた考えだと思うけれど、本心からそう思った。


 

 

 

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