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清掃/推測/留守番

 という訳で、霧島家清掃大作戦が開始されたのだった。

 隊員、一名。

 つまり、あたし一人。

 なかなかの鬼畜な所業だった。

 そこらへんに投げてある衣服は一旦、洗濯し、整理整頓していく。

 半日ほど掛けた大作戦により、殆ど綺麗に片付けることができた。

「へえ、意外とやるじゃない。メアリちゃんは使える女の子だ」

 あたしの背中をバシバシ叩きながら一応の労いをするご主人様。

 いつの間にか着替えたのかネグリジェにハーフパンツというあたしから見てもエロい恰好をしていた。

 ていうか、ちょっとは手伝え、クソ女。

「お風呂、沸かしてるから入っちゃいなさい。もう、私は入ったから寝るわ。……それと、明日になったら私たちの事情を話してあげる。もう、あんたも当事者だしね。それじゃあ、おやすみ」

 そそくさと自分の部屋に戻る華恋さん。

 当事者。

 あたしの身に起こったこの記憶喪失は、あの彼が原因なのだとしたら。

 確かに、あたしは立派に当事者、というか、被害者だ。

 ふう、傍観者を気取っていたらとんでもないことになってしまった。

 自業自得、といえばそれまでだけれど、これは、流石にあんまりだ。

 これから、どうなるかはわからないけれど、お風呂に入って今日は寝ましょう。

 という訳で、一日の汚れを落とし、ゆっくり湯船に浸かって、暖かい布団に包まった。

 あたしに宛がわれたリビングに設置されているソファはふかふかでとても寝心地がいい。

 あとは、寝るだけ。

「眠る」

 一人、宣言して眠りに落ちた。

 あたしはこのとき自らの身に降りかかったこの事態が記憶喪失なんて生易しいものではなかったと露ほど思っていなかった。


☆ ☆ ☆


 ところで、突然だけれどクエスチョン。

 一般的に世界の終焉とはどんなイメージでしょうか?

 きっと、生物の一切合切が絶滅しきった無限に広がる荒野を想像されることだろう。ある人は人類の滅び去った後の緑豊かに生い茂るある種楽園染みた風景を想像するかもしれない。

 あたし?

 あたしは、単純に白。

 まるで、絵画の上から白の絵の具で真っ白に塗り潰したような、そんな、息の詰まるような白。

 そこでは、真っ暗な深淵の奈落に堕ちるなんて贅沢は許されない。

 すべてが綺麗に、漂白されてしまう。

 誰も彼もが存在を漂白されて後には何も残らない。

 そんな残酷な白。

 何を隠そうあたしが見る夢もそんな感じだった。

 なんで、あたしの見る夢の内容が世界の終焉そのものだと断言できるかって?

 さあ、あたしにもそれはわからない。

 だけれど、不思議と断言できる。

 あれが、きっと世界が終わるときに訪れる『終焉』そのものなのだと。


☆ ☆ ☆


 スマートフォンのアラームが鳴り響きあたしを眠りという仮初の死から蘇生を施す。

 寝呆け眼なあたしは毛布をたたみ、忙しなく動く。

 洗面所へ赴き寝ぼけ顔を洗って、歯を――、

 そうだった。歯ブラシを買ってなかった。

 けれど、この部屋の主は用意周到で未開封の歯ブラシと歯磨き粉のセットに可愛らしい文字で、メアリの分、と書かれたメモ用紙が添えてある。

 それを、ありがたく使わせてもらい歯を磨く。

 さて、朝早くから華恋さんは出かけているようだし、あたしは冷蔵庫の中身をチェックして今日の献立を考える。

 といっても、殆ど空で冷凍食品が気持ち程度にあるだけだった。

 昨日、掃除は終わらせていたので、やることがない。

 なにか小説でも持ってれば時間を潰せるのにな。

 仕方がないのでソファに腰かけジッとしているうちに寝落ちしておりましたとさ。

 

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